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[改稿版] 白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
1章 勇者召喚とフーライナ
16/93

16話 メリトヨン

 何事もなく『メリトヨン』に到着。迷ったけど、道中で紙を一度も使ってない『回復』以外を全部使い切っちゃっておいてよかった。



 これで変なことを頼まれても、一日時間をくれればだいたい対応できるだろう。



「第一騎士団長!ようこそ『メリトヨン』へ!」

「あぁ、ありがとう。ここで一番高い宿への道を教えてくれるかい?」

「どうぞ!こちらです!」


 案内されてついていくアレムさんとフランソーネさん。あの、俺らは?



「門番さん。俺らはあの二人に「聞きたいことがあるのでついてきて」って言われたんですが、」

「どうしたらいいですか?」

「またですか…」


 眉間に手を当てながら上を仰ぎ見る門番さん。きっと今回みたいなこと、何回もしてるんだろうなぁ…。



「軽くお聞かせ願いたい」

「了解です。昼間に魔物の蜂と交戦いたしまして、そこの蜂の首魁であろう蜂を殺しました」

「証拠がこれです」


 アイリがとってくれた魔石。それを渡す。



「分析に回しても?」

「もちろんです。で、そいつらの巣もたぶん叩けたはずです」

「私たち、アレムさん。そして騎士団の皆さん…が三回にわたって殴っていますので。しばらくすれば報告に誰か来るかと」


 いつの間にか取り出した紙にさらさらメモる門番さん。



「俺らが聞き取りを二人から受ける意味はあるのだろうか」

「同感です。が、お願いします」


 頭を下げる門番さん。なんだかんだで慕われているのは間違いないのだろう。



「ご協力に感謝します。案内つけますので、どうぞお通りください」


 ん?



「ちゃんと身元確認しなくていいのです?」

「案内つけますから。お二人と合流してから嘘か否か判断つくでしょう?…ほら。嘘なら今の段階で逃げようとするか、同行者の目を欺いて逃げてやろう…みたいな顔をするものなのですが、皆様はされませんでしたし。では、お気をつけて」


 はい、ありがとうございます。街に入ると詰め所みたいなところから若いお兄さんが来てくれた。でも、お二人まだ見えてるんですよね。おかしいな。宿に行くって言ったくせにあそこは屋台では?



「お気持ちはわかります。が、案内させてください。どうせ来るまで時間かかりますので」


 やはり屋台。買い食いか。ダイナミック仕事放棄。これでうまくまわ…るんだろうな。折衝はリベールさんができる。だから、あの二人は武力担当とかそういう住みわけがあるんだろう。



 あのなりで脳筋キャラかぁ。でもま、そういうこともあるか。



「ここですね」


 え?近くない?



「おっしゃることはわかります。が、街の中ですとあちこちふらふらされてしまうので…」

「迷うと?」


 うなずく門番さん。本気で大丈夫か、フーライナ第一騎士団。



「おそらく、お三方とお馬さんの申請も忘れると思うので、先に申請しておきます。お金はフーライナの経費で落ちるのでご心配なく」

「いいのですか?」

「はい。団長が「最高級の宿」とおっしゃった時点で、ここに案内しろということでしょうし」


 なるほど。では、ありがたく。



「処理を済ませてきます」


 宿の前にいる警備員さんみたいな人に話しかける門番さん。警備員さんは中に入って紙とペンをとってきて、そこに書き込む。



「はい、終わりです。部屋は最上階の右側の部屋、600をお使いください。お馬さんは馬小屋がありますので、そこに。よろしければお馬さんは馬小屋に連れて行きましょうか?」

「いえ、自分でやるのでいいです」

「では、お荷物はいかがいたしましょう?」

「も、自分でやります」

「かしこまりました。では!」


 門へ戻っていく門番さん。そういえば、俺らが嘘ついてないかの確認は二人にしてもらえばいいっておっしゃってたはずなのだけど。

 

 

 いいの?



「…いいと思う。門に行ったのに二人と同じく、騎乗したままだったから」


 貴族認定されたと?でも、貴族認定されても悪いことをすれば地位なんて関係なく、情状酌量の余地もなく、等しく吊るすのがフーライナなんじゃないの?



「…そうだけど、そっちじゃない。…騎乗したまま門に行った時の二人との間の距離感とかの問題」


 あぁ、その時に一応面識あるっぽい判定をもらえてた。そういうことなのね。いろいろおっしゃっていたけど。



「申し訳ないのですが…、そこでこそこそお話をされていると邪魔です」

「あ。ごめんなさい」


 さっさと降りて、センを連れて馬小屋へ。



「セン。今更だけど一人で大丈夫?」

「ブルッ!」


 「へーき!」なのね。でも…、



「中に入ると明日の朝まで出てこれない予感がするんだけど」

「ブルルン!ブルルッ!ブルルルルッ、ブルッ!」


 「それでも!そもそも!あんま食べなくても、へーき!」…なのね。「あんま」の程度がよくわからないのだけど…。



「ブル、ブルルルルン……、ブルルッ、ルー!」


 「二人の、魔力がおいしいから…、三日!かなー!」…と。美味しいのと絶食可能期間の長さに因果関係はなさそうなのだけど。というか、おいしいほうが短くなりそうなのだけど。

 

 

 でも、解釈はあってるっぽい。



「…なんて?」

「三日は平気らしい」

「…餓死寸前が三日ではないよね?」

「ブルルッ!」


 違うよー!といわんばかりに鳴きつつ首を横に振るセン。



「ブルルッ、ブルルルルー。ブルルッ!」

「「お腹すいたなー」ってなるくらい!」…って言ってるね」


 燃費が良すぎ…というわけでもない?俺らだったら三日も食べなければ「何か食べ物を…」になるだろうけど、ワニとか結構持ったはず。生体が違うから一概にどっちが優れているとは言えないが。



「それなら、別れる前にご飯をあげていけば安心して離れられますね」

「だね」


 馬小屋の一区画にセンに入ってもらう。手を差し出して魔力をあげて、



「そういえば、どうやってこの子がうちの子だって証明するんだろう?」

「…今押し上げた棒の前に、板があるでしょ?それを取ればいい」

「どういう仕組みなのです?」

「…鍵。無くしても魔法で追える」


 魔法がある分、時々地球より高度。



「で、戻ったはいいものの、二人は戻ってきてないね」

「ですねぇ…」


 部屋に戻ってしまうと本格的に俺らの存在を忘れられそうだ。忘れられても俺らはフーライナを通り抜けたいだけだから何も困らないけれど。



 後々、フーライナで大災厄が起きて、勇者が駆り出される…とかになると皆に申し訳なさすぎる。ただでさえ寝坊したせいで独自行動をとらせてもらっているのに…ね。



「アイリ、ここで待っててもいい?」

「…ん」


 演技を続けてもらわないとダメなのに、ありがとね。待つなら待つで宿からの許可をもらっておいたほうがいいか。



「あの、ここで連れを待たせていただいてもかまいませんか?」

「もちろんです。が、お待ちになるならばそちらのバーはいかがでしょう?経費で落ちますよ?」


 最後。その情報は必要ですか?



「第一騎士団長のお客様でしょう?その旨を門兵からいただいておりますので…。お金の心配が必要ないなら、遠慮なく飲んでいただけますでしょう?儲けさせてください」

「正直ですね」

「霞を食べて生きていけるわけではないですから」


 そりゃそうでしょうけれど。ぶっちゃけすぎでしょう。



「経費って伝えて大量に飲み食いされると、ここが嫌われるのでは?」

「あぁ、大丈夫です。経費で落ちるのは皆様をお待たせしている間だけですから。あ!心配なさらずともご飯は付きますのでご安心くださいませ!」


そっちは心配してないです。俺らが待たされている間だけ…ね。



「それでも、大量注文する可能性がありますよね?」

「一定以上になると騎士団長に請求が行きますから。大丈夫です」


 お前のせいで発生したから払え!…になると。残念でもないし当然。であれば、大丈夫か。



「子供が入っても平気ですか?」

「個室をご案内いたしますのでご心配なく」


 二人に確認…と思ったけど、聞こえてたみたいね。『身体強化』でもしてくれてたのかな?頷いてくれたし、移動してのんびり待とう。



「バーで待たれるならばお荷物をお部屋にお運びしましょうか?」

「お願いしても?」

「ではお預かりしますね」


 待つなら邪魔だ。持って行ってもらおう。パクられる可能性もあるけど、ここだと大丈夫だろう。フーライナで最高級の宿だし。



「じゃ、行こ「あー!あー!ごめんなさーい!」…」

「間に合った!間に合いましたよね!?」

「「駄目です」」


 間に合ったも何もついてきてくださいって言ったくせにほっぽって言った時点でダメです。



「くっ…。ですが、時期は完璧でしたでしょう!?」

「確かに待ってないですが、駄目です」


 「ついてきてください」って言ったのに放置して言った時点で以下略。



「仕方ありません。奢りましょう」


 賄賂かな?



「賄賂じゃないですよ。接待です」

「情報提供料ともいいます」


 どう言い繕おうと「失敗したけど言わないでね☆」にしか聞こえない。



「さ、さぁ!行きましょう!」


 さっきは置いて行ったくせに今度は俺らの後ろに回り込んでグイグイ押してくる。アイリはさりげなく俺らの前に避難しているから、俺と四季が押されるのに合わせて押されてる。



 テレビや漫画で見るようなバーを通り抜けて、個室へ。こっちも先と同様、どっかで見たような風景。青を基調とした落ち着いた紳士淑女が集う場所…だろうか。



 個室だし、座敷の上、床の畳が青いけど。



「店員さん!ご飯も持ってきちゃって!」

「高いお酒も!」


 え?お酒?お酒は…、



「…待って」


 あ。ありがとう。アイリ。未成年だから飲めないなんてほざいたら「はぁ?」ってなってしまう。未成年ならアイリくらいの子がいるはずないからな…。



「…あと、成人は16歳。わたしは無理」


 了解。



「何か飲みたいものはありますか?」

「…甘い飲み物」

「あの、おすすめの甘い飲み物も頼んでいただけますか?」

「あ。お子様がいましたね。気が回らなくて申し訳ない」


 …おぉう、気が回らない自覚はあるのですね。ないものだと……なんか不思議そうな顔をされている。

 

 駄目だ、俺らがポカンとしてる理由に心当たりが皆無そう。自覚ないっぽい。がんばれ、リベールさん。あなたの団長でしょ。何とかして下さい。



「お飲み物です。当店最高級のお酒…10年もののブピラワインでございます」


 ブピラは確かぶどうだったか?



「そしてこちらがピアナの果肉をすりつぶし、飲みやすいようにピワナの果汁で水分量を調えたものです」

「ピ〇ナが梨です。〇がアなら西洋。ワなら豊水とかです」


 そこまで地球に似てなくてもいいのに…。



 西洋ナシはまろやかで甘く、なめらかな触感のある梨。だけど、二十世紀みたいな瑞々しさはない。果肉ごとすりつぶしたら水分量が足りなくて飲みにくくなるから。水が欲しい。でも、水だと芸がないから梨汁で水分を!といったところだろうか?



「「「「「いただきます」」」」」


 ついいつものノリでやってしまったが…。お二人もするんだ。



「ふふん、古い家系ですから。皆様は…触れないでおきましょうか」


 貴族だって一言も言ってないけれど、やっぱり「貴族の身分がうざいので黙って旅してる人」みたいに思われてるんだろう。



 この二人の場合、貴族に放置プレイかましちゃったからブラボ(ブラックボックス)にしちゃえばいいや!なんて下心もありそう。



 「いただきます」を古い勇者家系がするなら最初の食事の時、アイリが聞いてきたのが謎…ではないか。



 俺らがどういう意図でしているのか知らない。だから知っておこうという心意気。



「美味しい?」

「…ん。飲みやすくて、甘い」


 アイリは飲んでいたグラスから少しだけ口を離して答えると、また口づけて飲み切った。気に入ったっぽい。



「お変わりは自由に頼んでくださいね」

「…ありがとう」


 フランソーネさんにそう言われてさっそくとばかりに、くいくいと四季の服をひっぱるアイリ。



 それを受けて四季が再注文。自分で頼めるけど、演技をしてくれているから引っ張ったのね。



 さて、食事を楽しもう。最上級の宿というだけあって、料理は豪華。フーライナだからか、野菜、果物、お肉、乳製品が本当においしい。生鮮食品が新鮮なのは言うまでもないけど、ユッケすらある。しかも牛っぽい。



 地球だったら食中毒対策がメンドクサイから提供している場所なんてそうそうないのに。食べるのは少し不安だけど…生肉を食べること自体、割とリスキー。魚でもアニサキスいたりするし。



 食べたいから、いただきます。あぁ、めっちゃ久しぶりに食べるけど、おいしい。火が通っているとあり得ないこの食感。トロっと溶ける油に、甘いお肉。



 いっぱい食べたくなるけど、一応、自重しておこう。食べてる時点で自重もくそもない気がしないでもないが、しないよりましだ。



 …で、お酒か。こっちでの年齢制限は越えてる。だから飲んでも大丈夫。日本で飲まなきゃいい…のだけど。罪悪感が。



 でも、高級なお酒という言葉には勝てない。せっかく、わざわざ出してくださったんだ。少しくらいいいよね?



 グラスに注いで、香りを楽しむ。…うん、ブドウの甘い香りが重厚になったようなそんな感じ。アルコールの匂いはそれほどきつくない。たまに調理酒の匂いを嗅いでしまってウッってなる俺には嬉しい。



 味は…表現の仕方がわからない。お酒とか飲んだことないから仕方ないといえば仕方ない。だから美味しいとしか言えない。料理とは別ベクトルに美味しくて、うまく料理と合っている。食事がすすむ美味しさなんだけど、それをうまく表せない。



「失礼。団長。これを」

「ありがとう」


 上品に食べていたアレムさんがこれまた上品に紙を受け取る。こういうところを見ていれば団長って感じなのだけど。他が残念過ぎる。



「その紙は?」

「どうやら、私たちが放棄した仕事の連絡のようです。お三方が渡してくださった大きな魔石と、片付け隊が持ち帰った死骸。それらから度々被害が出ていた南の蜂で確定のようです。というわけで、」

「「切に感謝を」」


 頭を下げるお二人。ほんと、まともな時はまともなのに。何故ああなるんだろう。



「南の蜂でしたので、報酬が出ます。ギルドに登録はされていますよね?」

「「はい」」

「でしたらカードを…と言いたいのですが。本題に」


 食べながらするのですね。了解です。



「私どもの目下の討伐対象は東のバッタです」


 目下?ということは…、



「他にも何かいます?」

「西に猪が確認されております」


 苦々しさをにじませるお二人。この国、北以外の方角に魔物を抱えてたのか。



「すべて討伐せねばならないのですが、東が差し迫った理由を抱えておりまして」

「そのバッタは毒を垂れ流すバッタでして、最悪なことに住処がトヴォラスローグル湖底なのです」


 察した。トヴォラスローグル湖から流れだす川。たぶんそれがフーライナの農業用水だ。それが汚染されていると。間違いなく最悪。



「実害は?」

「不明です。北部一帯の水瓶ですので…」

「気づくまでに散布してしまい、枯れたものだけでも相当かと。汚染は浄化で何とかなるのですが」


 人類の食糧庫たるフーライナにとって好ましくないな。



「そこで、蜂を退けたお三方に協力していただけないかと」

「報酬は国から出ますし、ギルドの依頼という形で処理させていただきますので、ランクも上げることが可能です」


 事情を聞きたい…って言われてきたけれど、これ、初期から戦力としてあてにしてたな?



「今の対処はどのように?」

「貯水池から回しています。川が赤くなるのに備えて一杯あるのですが、」

「…トヴォラスローグル湖はファラボ大橋のすぐ下流。蛇行しているからか、よく水が来る」


 川が赤くなる(血で)…か。濾過とか浄化すれば使えるだろうけれど、常にそれをし続けるわけにもいかない。だからちゃんと作ってあるのね。



「残量は?」

「後、一、二週間ほどかと」

「いかんせん、毒が混じっていると気づくのが遅かったのが致命的でした。水が悪くならないようにするために通水させていたのが仇になるとは…」


 なるほど。水が尽きることによる影響は……、フーライナへの穀物生産量の低下だな。食糧庫たるフーライナ。その北で壊滅的な被害が出れば人間と魔人との戦争に確実に影響が出る。こっちから宣戦布告はなくなるだろうが、相手がしてくる可能性がある。



 そうなれば勇者たるクラスメートの負担が増える。それはよくないかな。



「四季、」

「えぇ」


 名前しか呼んでいないけれど、四季の目は「協力しましょう」という目。アイリは…、いつも通り任せてくれると。センにも聞きたいけど…、「馬に聞くの?」って顔されそうだし、たぶん走れればなんでも良いって言いそう。



 受けようか。後でセンに謝ろう。



「わかりました。協力いたしましょう」

「本当ですか!?やった!勝った!」

「勝ちましたわ!」


 気が早い!



「ふふっ。アレムとわたくし。それに第一騎士団。その上に皆さまですわ。勝ったも同然。前祝ですわ!」

「さ、皆様のカードをこちらに。手続きを済ませて返却いたします!」


 カードは…ポケットに入れてるか。俺のところへ三人分集めると、ひったくるようにとられた。



「さー、祝うぞー!」

「おー!」


 え?カードのことを頼まなくても…あ。駄目だ。聞いてないわ。







______


「団長!わたしが(・・・・)報告に…」

「お疲れ様です。リベールさん」


 絶句しますよね。そりゃ。



「えぇと…、どうしてこのように?」

「我々が東のバッタ討伐に随行するというと、前祝だー!と」

「察しました。わたしからもお礼を。こいつらはどうせ最上階でしょうし、そこにぶち込みます。ここに置かれているお三方のカードはわたしが(・・・・)処理しておきます」


 ほんと、お疲れ様です。



「いえ、お仕事ですので。それより、奥様がお眠りになっておられるご様子ですが、助太刀は必要ですか?」

「いえ。大丈夫です」

「かしこまりました。後処理はこちらでしておきますので…、おやすみなさいませ」


 はい。おやすみなさい。



 一人で運ぶとは言ったもののどう運ぼう。お姫様抱っこは視界がふさがる。し、寝てるから落ちそう。となると、おんぶかな?



 座った状態から前傾してもらって、俺が足の間に手を入れて、腕を首…駄目だな。寝てるから腕組めない。よしんば組めても首締まりそう。



「…どうしたの?」

「おんぶしたいけど、首締まりそうだな…って思って」

「…おぶれるようにしようか?」


 こてっと首をかしげて言うアイリ。ちょっと眠そう。ごめん。でも、



「手伝ってもらっても?」

「…ん」


 寝てるけど、四季に一言断ってから、位置を動かす。

 

 

 座敷っぽいとこでよかった。靴を脱いだところにある段でおぶれる。



「…靴は持つ」

「ありがと」


 俺だけ靴をはいて、しゃがむ。四季を俺にもたれさせて、アイリが腕を調整。俺の前に持ってきて…って、これじゃダメじゃない?



「…大丈夫」


 どこからともなくとりだした紐。四季の右手に巻き付けて、俺の左手とつなぐ。別の紐を四季の左手に巻き付けて、先の紐とクロスするところで数回、先の紐に絡ませる。そして、右手とつなぐ。



 紐が交わったクロスのところにさらに紐。俺の腰の後ろを通してからお腹あたりで結ぶ。



「…ん」

「なんか思ってたのと違うんだけど」

「…寝てるからね」


 確かに、紐のおかげで四季の手は俺の腕に引っ張られて前にある。し、紐のクロスした部分とお腹に結ばれた紐が腕だけに体重がかからないようにしてくれてる。



 けど、絵面が…。とか言ってる場合じゃないね。アイリがあくびしちゃった。



「つべこべ言わずに行こうか」

「…ん」


 先に行って寝て…はたぶん通用しない。「護衛だから」で押し通すだろう。だから、さっさと行くに限る。



 ちょっと歩きにくいけれど、これくらいは余裕。階段をあがるのも……、問題ないね。



 おんぶしていると、背中から四季のいいにおいがするし、背中に柔らかいものが当たってる。こっちは少し問題だ。

 

 

 一緒に寝たり、センに二人乗りしたりと何をいまさらという感じだけど。それでも……ね。



 俺は四季が好き。だけど、四季は俺のことをどう思ってくれているのだろう?一瞬。お酒に酔ったふりをして告白しようかという考えもよぎった。けど、アレムさん達がいたから無理…というのは言い訳か。



 やっぱり、告白を拒否されたらと思うと出来なかった。この関係は出だしからしておかしいといえばおかしい。でも、この関係を否定したくない。



 せめて四季も俺を好きでいてくれているとわかれば…、告白する勇気も出るのだけど。



「習君…」

「四季?」

「えへへ…」


 寝言か。起きているのかと思ったけれど…、夢の中でも俺が出ているらしい。好かれている役であれば嬉しいのだけど。



「…ついた」

「ね。悪いけど、カギを開けて」

「…ん」


 部屋は…大きなベッド一つと、高そうな調度品がちらほら。後、お風呂もあるっぽい。でも、ほとんど寝るだけなんだよね。



「…おろして。紐切る」

「ありがと」


 一応、『回復』っと。これで大丈夫。後は着替えさせてあげたいけれど…、さすがにやめとこう。



「…おやすみ」

「おやすみ。アイリ」


 いつの間にか四季の横で布団に入っていたアイリ。



 少し体をほぐして…たらもう完全に寝てるね。結構ギリギリだったのかな?ごめんね。



 俺はまだ眠くはない。このまま眠くなるまで、四季の愛らしくてかわいい寝顔を見ていてもいいけれど、さすがに変態的すぎる。



 ……よし。寝てるなら、言えるだろう。というか、寝ているのに言えなきゃだめだ。練習。練習だ。



「四季、好きだよ」


 うん、言えたね。さて、お風呂に入る元気はないから、体をふいて、



「私も…好きです、よ。習君…」


 !?起きて、



 慌てて振り返っても、ベッドの上の四季は殺気と同じように幸せそうに寝ているだけ。つまり階段の時と同じく寝言。でも、さっきの寝言とは破壊力が段違い。



 寝言で言うってことはたぶん本心。四季も俺が好き…か。滅茶苦茶うれしい。小躍りしてしまいそう。



 でもそれ以上に、気持ちがわからないから伝えられないなんて、言えなくなってしまった。そのことが心にのしかかってくる。



 進めたい気持ちはある。だから、ちゃんと心を決めて進められるようにしなければ。

注)

 日本ではお酒を飲んでいいのは二十歳から!です!

 習、四季は飲んでますが……、日本じゃないからセーフですが、日本ならアウトです。未成年の方は飲まないようにしてください。


 尤も、未成年でお酒を飲むと悪影響がある……という研究もあるらしいので、主人公たちは飲んじゃいましたが、飲まない方がよかったのかもしれません。

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