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[改稿版] 白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
1章 勇者召喚とフーライナ
11/93

11話 セン

「「「ごちそうさまでした」」」


 さて、持ってきて貰ったお盆は言われたとおり外に置いておいて…。お馬さんだ。



「ブルルッ!」


 「こっち来て」…?あれ?あの子、さっきまで寝ていたような気がするのだけど。待っていてくれたのかな?



「アイリ。お馬さんが呼んでるんだけど、」

「行っても大丈夫ですかね?」


 聞かれたアイリは一瞬、「何言ってんだこの二人」みたいな顔をした後、



「…わたしに聞かれてもわからない」


 と一言。そりゃそうだよね。



「行ってみようか」

「ですね。アイリちゃん」

「…ん。なにかしようとしたら斬る」


 アイリに護衛を頼んだらそう言うよね。斬る必要はないと思うけど、アイリに任せよう。



「立てたのね」

「ブルッ」


 「そうだよ」…かな?絶食のせいで立てないのかとも思ったけど、そんなことはなさそうね。



「私達を呼んだと言うことは何かしてほしいのでしょうけど、どうしてほしいのです?」

「ブルッ」


 「手を出して」…?



「手を出すのは良いけど、何をする気か説明してくれないと、危なくて出せないよ?」


 俺らが危ないってのと、アイリが危ないって思って君を斬るっていう二重の意味で。



「ブルルゥ、ブルルルッ」


 「魔力が、ほしいの!」ね。なるほど。手を出して貰って魔力を貰うということは、



「出した手を()んで、そこから吸うつもり?」

「ブルッ」


 なるほど。であれば俺は問題ない。



「誰の魔力が欲しいのです?」

「ブルルッ、ブルルルッ」


 「男の人と、大きい女の人」…ね。



「俺と、四季…俺の横に居る人の魔力が欲しいの?」

「ブルルッ」


 ふむ。四季…も魔力をあげることに異存はなさそう。後はどの順であげるかだけど。



「どうやればいいです?」

「ブルルルッ!」


 「二人で手を出して!」…と。了解。同時に吸いたいのね。お馬さんのすぐ横、柵を一枚隔てた空間に三人で立つ。そこから俺と四季が手を差し出す。



「ブルルルッ!ブルルルル」


 「ありがと!動かないでね!」…かな?



 おぉう。反応返す前に俺と四季の手が両方お馬さんの口の中へ。歯は生えているけれど、噛まないようにしてくれてるのか、うまいこと歯が手に当たらない。



 でも、口本体ははむはむ動いている。くすぐったくて、変な感じ。



「…長くない?」

「それだけお腹空いてるんでしょ」


 たぶん。ただ、長いのは確か。数秒で終わるものだと思ってたけど、終わらないもん。でも、蕩けるような顔をしているから止めようって気にはならない。



「…魔力減ってないの?」

「結構な勢いで減ってますね。現時点で2割ほどですか?」

「同じく」


四季と一緒にはむはむされてるから減り具合も同じになるのが当然なのだが。幸せそうにはむはむしてるのを見ながら待つ。さすがにやばそうになれば振りほど



「ブルッ」


お。終わったかな。



「足りた?」

「ブルル。ブルルルル」


 「足りた。ありがとう!」…かな。それはよかった。



「…お父さん、お母さん。魔力の減りはどれくらい?」

「ん?4割くらい」

「ですね」


 だから残りは6割。のんびりしてたら十分回復するさ。



「…お父さん、お母さん。二人は勇者なんだよ?…ふつうの人より魔力が多い。その勇者から一人四割、併せて八割の魔力を貰ってなんともない。…この馬、ただの馬じゃないよ」


 だろうね。



「…え?知ってたの?」

「うん。だってこの子、立ってからずっと目を開けてないからね」

「なのに見えているような振る舞いをしている。この時点でただのお馬さんではないでしょう」


 それに、お馬さんは賢い動物として有名だけど…。会話が成立するレベルかと言われると怪しいし。



「なんか怖いってのもきっとこの子が魔獣か魔物だからだろう」

「とはいえ、この子は大人しいですし、助けないという選択肢はなかったわけですが」


 助けを求めていても危険なら楽にしてあげるけれど、そうじゃないなら助けるさ。



「…なるほど」


 ごめんね。アイリ。



「お腹いっぱいになったということは…、動くのに支障はないと言うことでよいですか?」

「ブルッ」


 「ないよー」…ね。それはよかった。



「でも、怪我とか何か悪いモノがあっても困るから、魔法かけても良い?」

「ブルッ」


 「どうぞー」かな。なら、かけさせて貰おう。



「四季、紙ちょうだい」

「…書くの?」

「うん。書く。洗浄とかじゃ駄目かもしれないし…」


 この子は目を開けようとしないしね。赤目なのがバレたくない…って心配は、俺らが「魔獣」だとか「魔物」だとか言ってる時点で無意味。



 だから開けても良い。のに開けない。であれば、目に重大な怪我をしてるか、何か呪いじみたモノがかけられてる可能性がある。それを何とかしてあげないとマズいだろう。



「あの、習君。魔獣とか魔物とか、「魔」を名に冠しているので、『浄化』とかにしちゃうと存在自体を浄化しちゃいそうなのですが」


 確かに。今必要なのは悪いモノだけを消し飛ばせる魔法か。



「ターゲットを指定すればいける?」

「ターゲット指定…です?あぁ。『ほにゃららの浄化』みたいにするのですね」


 そうそう。『対象の浄化』なら対象は綺麗になるだけ…ですむはず。



「ですがその場合、対象指定をどうするのです?『お馬さん』にするのですか?」

「しかないと思うけど…」


 この小屋の外にも馬はいる。シャイツァーが俺らの意思を汲んでくれるなら、この世全ての馬を浄化!なんて頓珍漢なことはしないだろう。でも、小屋のお馬さんに対象がぶれて、浄化対象もついでにぶれて、この子自体が浄化されました!になる可能性がある。



「ブルルッ」


 え?「名前つけてー」?あ。あぁ、なるほど。じゃあ、



「この子の名前を考えようか」

「ですね」

「…待って。流れがわからない」


 え?あれ?何故だ?



「…何故だって顔されても、わたしは馬の言いたいことがわからない。…会話できる二人の方が変」


 ごめん。そういえばアイリ、お馬さんが何言ってるかわかるなんて、一言も言ってなかったね。



「流れとしては、このお馬さんは魔獣か魔物っぽい。で、怪我か呪いみたいなのがかかってる可能性がある」

「それを浄化するのに魔法を使います。が、浄化に失敗してしまうと死んじゃう可能性がありますので、対象を制限することで成功率を上げたい」

「その制限の助けとして、名前つけてー。って感じだね」


 お馬さんで指定するよりは『固有名詞』とするほうが狭く制限できる。その方がうまくいく可能性は上がる。



「…なるほど。…確かに呪いはかかってるみたい」


 え?



「「どこ(です)?」」

「…足」


 足?……見えない。『身体強化』必須か。あぁ、見えた。確かになんとも形容しがたい気持ち悪い黄色っぽい色をした鎖のような模様がついている。



「…名前つけるの?」

「一応ね」

「ですね」


 明らかに悪さしてそうなのがあっても、他になにかあるかもしれないから。



「ところで四季、ネーミングセンスに自信は?」

「ないです。習君は?」

「同じく」


 ……。



「ブルルゥ…」


 アイリとお馬さんからの目が痛い。お馬さんに至っては「えぇ…」って言ってる気がする。



「ぱっと思いつく名前、ある?」

「え?ホースか、プフェールですね。習君は?」

「え?……ないかなぁ」


 残念ながら。



「…由来は?」


 やめて。聞かないで。両方とも別言語の『馬』の発音をパクってきただけ。英語とドイツ語なんてこっちに馴染みはないだろうけれど、さすがにない。お馬さんに馬ってつけるとかセンスがなさ過ぎるだろう。



「『ハイ』とか『グレー』…ごめん。ないわ」


 この子の色が白か黒なら別に構わないと思う。『シロ』、『クロ』って可愛らしい。でも、灰色はなぁ…。なんか嫌。



「『アッシュ』…も離れられてませんしねぇ」


 ash()だしねぇ。色であるのは変わりなし。もうちょいひねりが欲しい。



「…お父さん達の世界で良い言葉ないの?」


 俺らの世界?馬絡みだと…、



「『馬耳東風(ばじとうふう)』?」

「駄目ですね」


 知ってた。『人の批判や意見を気にせず聞き流す様子』を指す四字熟語。だけど、名前にするのはナシだろう。



 …ん?いや、いける?



「習君?」

「東風は東風(こち)とも読めるからいいかなと思ったんだけど、耳慣れないよね?」

「確かに。むむぅ…。あ。『セン』はどうでしょう?」


 セン?響きは大丈夫。元ネタは…、



「『千里(せんり)の馬』から?」


 こくっと頷く四季。



「魔獣、魔物であるならきっとそんじょそこらの馬には負けない、名馬であるのは確定でしょう。この子の名前にちょうど良いと思いますよ」


 お馬さんも気に入ってくれたっぽい。。



「じゃ、君は今日から『セン』だ」

「さ、習君。セン。やることやりますよ!」


 あぁ、やろう。まず、四季が浄化のイメージをこめつつ、結構な量の魔力を込めながら紙を作成。次に俺がそこに書く。



刻む言葉は『センの浄化』。文字数も込めている魔力も今までで最大。だからか、ペンの進みが悪い。ガッガッっとペン先で何かが引っかかっているようだ。



 そのくせ、勢いよく力を入れて少し進めると急激に緩くなる。いや、それどころかぐいぐい押してきて、一画が無駄に長くなってしまいそうになる。



 そんなじゃじゃ馬な紙の上でペンをうまく操って時を書き、それと並行して四季のイメージとも合わせていく。セン自体には影響がなく、されど、センの体に悪影響を与える邪悪なモノを除外する。その方向でうまくイメージを固定する。固定したイメージを紙の暴走に気を取られて崩されないようにしつつ、ペンを滑らせていけば…出来た。



「四季、出来たよ」

「では、発動させましょう。代償魔法で?」


 もちろん。出力はできるだけあげておく。



「セン。用意はいい?」

「ブルッ!」


 嘶きと共に頷くセン。よし、やろう。俺の右手と四季の左手で紙を掴み、あいている手をセンにかざして二人と一頭で三角形を作る。



 目を閉じて、息を吸い込んで吐き出す。心を落ち着かせ、呼吸のタイミングが四季と一致した瞬間、



「「『センの浄化』!」」


 魔法を発動。紙が消えて光が出現、俺らがかざす手の先に居るセンを包み込む。一度、光が明滅すると何もなかったように消え去る。



うまくいったか?足元の鎖は消えてるっぽいけど…。あっ、やばい、気を抜いたからか、力が…。ッ、倒れるっ!?…ん?



「…魔力、使いすぎ」

「ごめん。ありがとう。アイリ」

「ありがとうです。アイリちゃん」

「…ん」


 よろよろ立ち上がる俺らをキビキビした動きで汚れない場所へ引っ張っていくアイリ。地球では子供が大の大人に等しい体格二人を引っぱっていくなんて光景はあり得ない。本当に異世界って感じがする。



 アイリは安置に俺らを置くと、鞄をごそごそ。そして、乳鉢で薬草を乳棒でごりごりすりつぶす。洒落た小瓶に入った水をとくとく注いで、くるくるかき混ぜる。



「…たぶん成功してるだろうけど、成功だよね?」

「うん。そのはず」

「ですね」

「…少なくとも鎖は消えてるね」


 だね。他が不明で怖いけど。



「…ん。完成。効くかどうか微妙だけど、薬作った」

「え?アイリ、薬作れるの?」

「…ん。護衛だから」


 アイリ。薬を作れる能力は護衛だからで済ませて良いことでは確実にないよ。



「失礼ですけど、免許的なモノは持っているのですか…?」

「…ん。公式なモノを持ってる」


 すごいな。アイリの持ってるのは地球ならおそらく薬剤師免許に相当するもの。間違いなくすごいこと。だのに、全く誇る様子がない。だからこの知識も必要に迫られて得たものなのだろう。それが少し寂しい。



「…飲まないの?」

「あ。飲む。器は…」

「…これだけ。別に同じで良いでしょ?」


 了解。



「四季。四季から飲む?」

「え?あ、はい。そうします」


 器を四季へ。薬の色は緑。見た瞬間、絶対苦いだろうなぁと思ったのか顔を少ししかめつつも、意を決して口へ流し込む。



「…それくらい」


 アイリが四季の肩を叩いて止める。ゆっくり傾いていた頭と器が水平に戻ると、四季の目から雫が一つこぼれ落ちる。



「ッ──!にっがいです!耐えられないほどではないですが…、苦い!それ以外に言うことがないです!」


 うわぁ…。正直、飲みたくない。でも、作ってくれたしなぁ…。近くから見ても見た目は普通。どうやったのか植物の繊維みたいなのは残っておらず、濾過された青汁のよう。臭いは…ちょっと青臭い。でも、キュウリレベル。飲める。



 飲もう。



 ッ──!口に入れた瞬間、苦みが暴れる!マズい。でも、ただただ苦いだけ。もし苦いのがたまらなく好き!という人が居れば極上の甘露にも等しいだろう。だが、俺にそんな好みはない。にっがい!



「…お母さんが苦いって言ってるのによく飲むね」

「アイリが作ってくれたからな…!」


 だから飲む。



「…そうなの?お母さんがあんな反応をする薬の味に興味がある…んじゃなくて?」

「それもないことは…ない。けど、アイリが作ってくれた。そっちのが大き…にがっ」


 言い切るまで耐えきれなかった。本当に苦い…!



「しゅ、習君。お水です」

「ありがと」


 水で苦みを喉へ流し込む。…あぁ、何とか人心地つけた。苦いけど!



「…回復、した?」

「飲んですぐ効くものじゃないと思うけど…、微妙かな?」

「ですね。今の回復速度だと…たぶん1, 2時間で二割でしょうか?」


 寝る方が早い。普通に動けるレベルにはなったけどね。



「…なるほど。やっぱり聖水と高めな薬草をすりつぶして混ぜただけのじゃ、勇者には足りないのね…」


 アイリの話を聞いていると、作ってくれたのは割とランクが高そう。だのに、効果が微妙。薬には頼れなさそうだ。



「ブルルル…」


 「大丈夫…?」かな?倒れかけてわたわたしてたから、落ち着くまで放っておいてくれたのね。ありがとう。でも、失敗していたらセンが死んじゃうかもしれなかったのだから、気を遣ってくれなくてもよかったのに。



てか、色変わってるよね?大丈夫なの?魔法をかける前、センは灰色だったはずなんだけど、汚れていただけなのか純白の白馬になってる。目もちゃんと開けてる。瞳の色は赤じゃなくて綺麗な青。魔獣や魔物かと思っていたけれど、違うっぽい?



「変なところはない?」

「ブルルッ」


「ないよー」かな。大丈夫っぽい。

 


「セン。今、聞くのもずるい気がするのですが、私達に着いていてくれますか?」

「ブルルルン!」


今まで一番大きな声で鳴き、深く頷くセン。了承してくれてるね。



「ありがとう。これからよろしくね」

「お願いしますね」

「…お願い」

「ブルッ」


 さてと、センのもうまいこといったし。



「砂糖作ろうか」

「ですね」

「…いけるの?」

「たぶん」


 甜菜から砂糖を作る方法。それを真似すればいけるはず。



「…説明して?」

「ん?まず、ガーツを洗って、皮剥き。適当に細かめのサイコロ状に切り分ける」

「切りましたら沸騰したお湯にいれて煮ます。それを濾過して、ろ液をまた煮詰めて、アクをとってとろみが出たら火からあげて、冷やして終わり…だったはずですが?」

「…あってるね…」


 昔、調べたからね。よく覚えてるなぁとは思うけど。



「…所要時間は?」

「え?えーと…、2, 3時間?」

「のはずですね…」

「…ん。かかりすぎ」

 

 だね。むぅ。今から作れば多分1回はとれる。けどそれだけでは買ったガーツを全て処理するには時間がかかりすぎる。



「となると、魔法で何とかする?」

「しかなさそうですね。幸いなことに砂糖が何か知ってますし」


 砂糖の主成分はスクロース。でも、糖は他にも同じ二糖類のマルトースとか色々ある。そのあたりの扱いが難しい。…あぁ、でも、糖類は種類がいっぱいある。でも、それらが甘いかどうかなんて知らない。だったら、



「スクロースだけ抽出すればいいかな?」

「が、安パイでしょう。絞りかすは飼料になるそうなので、毒物が入ってるとは思えませんが面倒です」


 だね。じゃあ早速魔法を作ろう。



「紙です」

「ありがとう」


 スクロースはグルコースとフルクトースがα-1, 2-グリコシド結合したもの。構造式は知ってる。それを抽出するイメージで紙に字を書く。



 『抽出』だけではなくて、『スクロースの抽出』とすればもっとちゃんと抽出できるはず。抽出したスクロースは塊になって脇に出てくるようにして…、できた。



「ガーツの準備は…バッチリだね。ありがとう」


 ガーツは水で洗われ、皮をむかれた状態。このガーツを少し傾斜させた鍋の中に置く。



「水分が出てきても濡れない高い位置に結晶を出せば良いのですね?」

「うん。そのつもり。じゃ、やるよ」

「「『『スクロースの抽出』』」」


 魔法を発動。紙から出た光がガーツだけじゃなく鍋を包み込む。すぐに光が収まる様子がないので待機…してたら終わった。30秒くらいか?



「出来たね」

「ですね」


 魔法で作ってるからかかなり大きな結晶が出来てる。ガーツの十分の一くらいかな?でも、大きい。ミョウバンで結晶作ったときもこんなに大きくはならなかったのに。



 ガーツに含まれている糖分量と比較して大きいのか小さいのかはわからない。でも、たぶんこんなものだろう。



「…出来たの?」

「材料は出来た。これでスクロース…砂糖の主成分だけなら、ガーツがあれば砂糖は取り出せる」

「食べますか?ただの砂糖の塊ですが」

「…いい」


 だよね。割と大きいただの砂糖の塊とか食べたくないよね。砂糖の塊は食べるにしてもそこそこのサイズだから良いんだ。



「さて、飴を作ろう」

「そうしましょう」


 冷やすために『冷却』の魔法を作る。攻撃用ではないから、2℃くらいの空気が包み込む感じ。



 次に、四季のファイルを机から落ちないようにしつつ斜めに置く。斜面になってるすぐ下くらいに清潔にした皿を置く。これで準備できた。



 水を温めてお湯へ、そこにできた結晶を投入して溶かす。…ちょっと大きいから溶けるのに時間がかかりそうだけど…、スクロース自体の溶解度が高い上、あっためながらかき混ぜてるからか色がつくまでには溶けてくれた。



 そのままあっためて色がついてきたら、かき混ぜないで鍋をぐるぐる回して均等に色がつくように。温めすぎると余熱で焦げる。ちょい濃いめの黄色になったら火を止めて。



 ファイルの上へ流す。下へ落ちる分には皿のおかげで問題なし。ファイルの上、左右から溢れなければ良い。…よし、全部いけた。



「「『『冷気』』」」


 鍋を置いてすぐさま冷却。紙から出した冷たい空気で包み込んで固める。お皿の上には…落ちてないのね。じゃあ、このお皿を机の上へ。四季が持ってくれてるファイルの下に清潔な手を差し込んで、



 四季がファイルを消す。支えを失った飴が落ちてくるからキャッチ&お皿にリリース。完成。



「…シャイツァーの扱いがひどい」

「そうですか?召喚したては清潔で、召喚をやめればファイルだけ消える。これほど上で食材を固めるのに向いたものはないと思うのですが。ねぇ?」

「だね」


 欲を言えば蓋のない箱みたいに、四隅に支えがあれば一番よかったのだけど…それじゃあ、ファイルじゃない。仕方ない。



「…はぁ」


 あきれられた!?で、でも作ったものを食べてもらえればわかってもらえるはず…!



 ペンで飴を殴打。衝撃を与えて砕く。味見もしていないものを食べさせるわけには行かない。四季にかけらを渡していただきます。



 ……ん?んん?味がしない…。いや、するにはするけど、何これ?…微妙。



「…どうしたの?」


 ファイルの扱いを見たときよりも「えぇ…」って顔をしていたアイリが聞いてくる。



「甘いはずなのに、なんか変な味がする」

「同じくです。…何故でしょうか?」

「…そうなの?」


 アイリは欠片をとると躊躇なく口へ放り込む。



「…少し苦いけど、甘くて美味しいけど?…あ。薬」


 薬…?あぁ。作ってくれたやつね。めっちゃにが…って、あぁ、そのせいで味覚崩壊してるのか!



「…たぶん。わたしが食べると美味しい。成功してるよ」

「アイリが美味しいって言ってくれてるなら成功なんだけど」

「苦いってことはわずかに失敗してますね」


 苦みの原因は加熱しすぎて焦がしたことだろう。もうちょっと色が薄い段階で止めるべきだったか。



「失敗の反省は次に生かすことにして、ジャーキーのかわりになりそう?」

「…口に入れておけば良いから大丈夫」


 よかった。それなら作った甲斐があった。



「では、ジャーキー代わりにこれを渡しても良いですか?」

「…ジャーキーよりはこっちのほうが嬉しい」


 少しだけ頬をほころばせながらアイリが言う。

 

 

 見る限りお世辞ではなくて本心から言ってくれてそう。よかった。ちゃんと希望を言ってくれてるのも含めて、よかった。



「じゃ、今から量産するね」

「…え?」


 何故ぽかんとしているのか。



「ジャーキーの代わりならたくさんいるでしょ?」

「遠慮は要りませんからちゃんと食べてくださいね」


 原料のガーツさえあればいくらでも作れるのだから。



「…わかった。ありがとう」


 さて、飴を作りますか。全部作り終わるのとアイリが寝るの。どっちが早いだろう?

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