1話 召喚
楽しんでいただけますと幸いです。
「なぁ、まだか?」
携帯から聞こえる同じ問い。駐輪所に止めた瞬間から繰り返されて、これでもう3回目。
「もうちょい…、てか、もうつくぞ」
「まじで?急いできてくれよー!」
というか、1回目の時点で常華高校の駐輪所にいるって言ってんだから、もう少し落ち着きを持ってほしい。さすがにこの状況でタクを後回しにはしないさ。
「お!見えた!習!早く!早く!」
教室からタクがこっちを見てる。そんなことする時間があれば、さっさと春休みの宿題を片付ければいいのに。この高校、三年の宿題はそんなにないはずだぞ?
てか、顔を出してるなら俺のクラスと出席番号を教えてほしい。そうすれば迷わず靴箱にいけるんだけど…、っていねぇ。
…はぁ、ま、あの反応的にクラスは同じはず。あの部屋であれば、例年の配置だと…、3-SAか?
となると、靴箱はこのあたり。どうせ出席番号は最後のほう。最後から見ていけば…、
32 羅草愛
31 陽上和昭
30 矢野拓也
29 森野習
あった。今年は29番。靴箱は一番上。しゃがまなくていいから当たりだ。で、案の定タク…矢野拓也は俺と同じクラスで、俺の一個後ろの番号か。
「習!早く!」
「降りてきたのか…」
いないと思ったらわざわざ来たのか、お前…。
「来るくらいなら自力で宿題を進めるべきでは?」
「わからねぇから聞いてるの!」
丸写しする気はないと。これもいつも通り。
「もっと早く手をつけ始めて、遊んでるときにでも聞くべきでは?」
「そんな時間がないから聞いてるの!」
この答えも例年通り。小学校1年の夏休みからずっと聞き続けている言葉。つまり、改善する気はないと。
「おまえな…」
「てへぺろ」
舌まで出してやがるが、イケメンだから無駄に絵になる。俺と同じくらい高身長でイケメン。爆ぜればいいのに。
「今は携帯あるんだから、アプリとかで聞けるだろ?」
「式とか書けなくて面倒くさい」
「写真使え」
確かにx^2とか打つの面倒だけど、それなら紙に書いて写せ。
「それは兎も角、」
「流すな」
「兎も角」
聞く気ないやつだ。諦めよう。
「何故遅れた。寝坊か?」
「寝坊じゃない。ちゃんと0時に寝て6時には起きてる」
寝れなくてうだうだ頑張ってたら1時…ということもない。
「なら何故!?いつもこの時期、こうなるのは分ってるくせに!」
「開き直るな」
軽く頭をはたく。いつもこの時期こうなるの分ってるならちゃんとして?
「何でよ!?貴方、私の友達でしょう!?分ってるくせに!」
「友達って言うか、悪友な。てか、気持ち悪いぞ」
何故頬を膨らませるんだ…?
「俺の彼女かお前」
「いや、違うけど?」
「急に真顔になるな。落差で風邪引くわ」
「お大事に…」
お前のせいだけどね…。
「というか、彼女いるなら俺ほっぽって大事にしてやれよ」
「生まれてこの方、いたことないぞ」
綺麗な人、可愛い人、色々見たことはあるけれど、恋愛感情っぽいものを抱いたことがまずない。
「で、今日遅れたのは?」
「あ、戻るのね。道でお婆ちゃんが困ってたから警察まで送ってった」
だから早めに出たのに、予鈴まで後5分。
「何故に」
「時間あったし。あ。俺の。だぞ。お前の時間は考慮しない。送っていってあげても十分、時間あったからな」
時間がなければ申し訳ないけれど放置していっただろうが。
「ついたぞ。席順は自由だが…」
「どうせお前の前をキープしてるだろ?」
「ザッツライ。早く見せてくれ」
了解。タクが荷物をどけた机に俺の鞄を。えっと、確かこのあたりに…、
「百引さん、廊下は走ってはいけませんよ」
「足が同時に浮いてないのでこれは競歩!つまり、走ってないから校則違反ではない。証明終了、QED。よっし!セーフ!予鈴に間に合った!」
相変わらず、あの人は元気…、
「みんな、おっはよー!」
ッ!?何でいきなり部屋が光って…、
「習!これって…!」
「たぶん思ってる通りだよ!」
部屋全体に刻まれていて、幾何学模様がついている。俺の見間違えかと思ったけれど、そんなことはない。これはきっと魔法陣だ。
「あれ?みんな何で無視…って、何じゃこりゃ!?」
気づくの遅ッー!百引さんの矢鱈響く声と同時に、視界を埋め尽くすほどまばゆい光が展開。俺は意識を失った。
______
さて、無事に目が覚めた…けれど、不安。あんな謎現象があったばかりだし。幸いにも体はふかふかのものに包まれている。多分安全、心を決めて目を開け…、
「知らない天井だ…」
まさかこの言葉を言うことになるとは。個室のベッドの上。だが、天井のシャンデリア、ベッドの装飾、壁に掛けられた絵画に皿。あらゆるものが豪華。明らかに日本じゃない。だが、悪い待遇を受けている訳ではなさそうか。服も替わっているけれど、結構良質。
「お、起きたか。習」
「あぁ、おはよう。タク」
見知った顔があるというのは安心できる。わざわざ来てくれている時点で、何か知ってる…だろうってのもポイントが高い。
「よく寝てたな」
「え?よく寝てた…って、そんなに?」
「あぁ、俺が起きてから1日くらいは寝てたぞ」
明らかに寝過ぎだな…。
「あぁ、寝過ぎだな。ぐっすり過ぎてもう起きないんじゃないかと心配したぞ。あ。飯食えるか?」
「ん?食べれそうではある」
「OK。じゃあ、水と一緒にとってくる。その間にトイレでも行ってて。トイレはあっち。あ。異世界だけど、日本と操作は変わらん」
!?
あっ、困惑してる間に外に出られてしまった。ありがとうを伝え損なった…。それに、さらっと異世界って言われた。
異世界。マジで異世界か…。っ、やばい。トイレって言われたからか、猛烈に行きたい。体は…動くな。寝過ぎたせいかちょっと固い…という程度。問題ないかな。
さて、トイレ…も無駄に豪華。なのはいい。これ、まさか…水洗?水洗トイレが個室についている……と?技術水準が謎。あぁ、この服、着替えさせてくれたんだろうけれど、脱ぎ方がわからん!
あ、ここ外せばいいのか。よし。で、用を足して……横のレバーをひねれば水が流れて、手洗い場にも水が。
完全に水洗トイレ。だけど、エアータオルはない。エアータオルは不要な世界なのか?何にしてもめっちゃ遅れた世界ではないな。
で、椅子は……、ない?え、これ、ベッドに座れと?
「習?何で立って…、あ。椅子がないのか。ベッドにでも座ってろ」
マジで座れというのね。めっちゃふかふかなのに、これに座るのか。そしてこの上でご飯を食べるのか…。
「ほい、ご飯」
「ありがとう…なんだけど、この上で食べるの?」
「時間が時間でな。閉まってる」
閉まってる?あぁ、食堂かな。となると夜中か?
「わざわざ見に来てくれたのか?ありがとう」
「気にすんな。起きてくれてなきゃどうせ心配で寝れねぇよ」
そっか。心配かけたな…。
「俺も横に座るぞ。あ。ご飯はお前の方に置こう」
ありがとう。ご飯は…パンとスープかな。ファンタジー小説とかだと黒パン…めっちゃ堅い上にまずいパンが多かったりするけれど、ここは白。スープは…コンソメか?絶対おいしい。
「さて、お前が気になってるであろうことを話そう。あ、食べながら聞いてくれ」
「待って。本気でこの上で食べろと?」
ふっかふかのこのベッドの上で、食べろと!?
「魔法でなんとかなるから安心しろ」
「あー、そういう魔法があるのね」
なら諦める。あまり汚さないようにしよう。いただきます。あ。このパン見た目通りふかふか。持つだけでわかる。
「さて、話をしよう。まず、ここは『アークライン』という異世界らしい」
「召喚された?」
「正解」
ファンタジー。…お、パン、口に運んでもふかふか。バターでも入ってるのか、ジャムとか要らない。
「帰れるの?」
「今は無理」
「今は」か、となると、いつかは帰れると。
スープもおいしい。コンソメスープの素とかあるとは思えないけれど、あっちのに匹敵する。
「理由は?」
「召喚魔法の原理的に。何でもこの召喚陣、困ったときに助けてもらえる存在を呼べる陣らしい」
困ったときに助けてもらえる存在…か。
「まるでヒーローだな」
「あぁ、勇者とか呼ばれているみたいだぞ」
召喚者に多大な期待がかけられてるタイプの世界か。
「で、勇者なのに…いや、違うか勇者だからこそ、その困りごとを解決しないと帰れないと?」
「あぁ」
帰還を人質に取られている以上、頼みを解決してやらざるを得ないと。ゲームだったらその冒険を楽しみに買うから構わないが、実際にやられると殺意が湧く。
「唯一の救いは「困っていて助けてほしいこと」はもう増えないことだな」
「なし崩しにどんどん増えて、永遠に帰れないのはないと?」
「あぁ。最初に召喚陣にその願いを刻む必要があるらしい。それは召喚したら勇者が達成するか死ぬまで変えれない」
なるほど。それは朗報。
「だと思うだろ?さて、願いは何だと思う?」
こいつがわざわざそう言うってことは面倒なこと。ファンタジーであれば…、
「英雄譚の如く、魔王討伐か?」
「正解。するっと当てられると面白みねぇな」
マジかよ。はぁ…。
「マジで、帰るために魔王を殺せと?」
「あぁ、殺せ。だとさ」
拉致ったあげく仕事押しつけか。…なかなか素晴らしい精神をお持ちのようで。
「召喚陣から呼ばれた勇者のせいで発展度合いはめちゃくちゃだが、概ねイメージされるファンタジー作品世界だぞ、ここ」
中世ヨーロッパ風の剣と魔法の世界。
「となると、魔物もいると」
「いえす」
出歩いてたら盗賊、魔物とエンカウント。からの無事、死亡。それがあり得る世界かー。
「言葉は通じたのか?」
「あぁ。何でも陣で召喚する際に一手間加えれば、こっちの人間の言語は理解できるようになるんだと。あ、お前とか、他に起きるのが遅かったやつらはそれがうまく馴染まなかったせいで、起きるのが遅かったんじゃないか?だと」
了解。ありがとう。言葉の問題はなし…か。ただ、人間の言葉は。ということは他に人がいるならばしゃべれないってことでは?
「で、お前が妙にわくわくしてるのは何でだ?」
俺が起きたから…というだけでは説明できない。目にキラキラしたものが溢れてる。
「ん?わかるか?この小説で読むなら楽しいけど、実際にされるとクソッタレな状況で唯一、楽しいことがあってだな。いくぞ」
え?どこに?
俺がぽかんとしている最中、タクが立ち上がり、俺が見やすいところへ。そして、かがんで、足を伸ばしながら、
「『召喚』!」
と叫べば、手の中に二つの刀。
「お、おー?……見た感じ鋭そうだし、業物?」
先端が鋭く、刃が薄い。薄くてポッキリ折れそうだが…、タクが嬉しそうにしているのを考えると、タクの技量でもおそらく折れない武器であるはず。…強そうだな。
「最初に見るのがそこなのな」
「見栄えのいいだけの武器が使えるとでも?」
見栄えがいいだけの武器とか重いだけ。見栄えがよくて一点ものなら、綺麗で目立つし、個人が特定できる。指揮を執るにはいいかもしれないけど。
「とはいえ、お前が自慢するってことは使えるんだろ?見た目は…、」
日本刀か?あんまり詳しくないけれど、刀身が少し反ってる。持ち手は黒で、鍔が赤。そして綺麗な模様が黒で刻まれてる。刀身は黒と赤で、背が赤で、切る方が赤。黒と赤の境目は波のようになっていて、芸術性がかなり高そう。
…背と刃の継ぎ目が波打ってるのはあまりよくなかった気がするけれど、自慢されてるからたぶん大丈夫。
「刀出せるだけ?」
「いや、俺のは火が出せるみたい「出さないでくれよ」室内で出すかよ」
「ならいい。見てみたいけどな…」
火事になったら死ねる。物理的にも社会的にも。
「で、お前のは?」
「お前をまねすればいいのか?」
「いや、心の中で出るように祈ればおk」
……となるとさっきのは演出?なるほど、厨二病か……。
「違うわ。お前にわかりやすいようにやっただけ!」
「だよな。あ。このまま出して平気か?」
「え?あー。シャイツァーの重さは本人には最適な感じに…0にもちょっと有るにもできるけど、他には基本、見た目通りの重さになる。ちょっと魔力いるけど、他への重さ0になるようにして」
了解。じゃあ、召喚。
…ん?えっと、これは…、
「「ペン…?」」
ゴテゴテした装飾はついていないけれど、模様が豪華。黒ベースに金。「贈り物にもらえたら嬉しい万年筆」とかそんな感じだろうか?……何に使えと?
「えっと、どうすればいい?」
「とりあえず、それの力を探ろう。口に出さなくていいから聞いてみて。口に出すと恥ずいぞ」
その言い方をするってことは誰かがやったんだな…。
尊い犠牲に感謝しつつ、探って……ん?んんー?
「言語理解と、ペン先からインクが出せる…くらい?」
「は?マジで?お前が?」
お前は一体俺をなんだと思ってるんだ。
「敵対者はできる手段で踏み潰す鬼畜」
ひでぇ。
「言語理解は便利っぽい。こっちの言語はもちろん、地球の言語もしゃべれそう」
「起きるのが遅かったのはそれに、言語わかるようになる力が干渉したか?」
かな?こっちの人もそう言ってたのなら本当にそれが一番可能性ありそう。
「とりあえず、英語の試験は恐れる必要がないな」
あれは普通に英語が読めさえすれば、簡単な国語の問題と変わらん。
「帰れればという注釈がつくが…。ありがたいな!」
お前俺を当てにする気か。よかろう。全力で鍛えてやろう。
「あれ?寒気が…」
「風邪か?早く寝た方が…」
…なんかジトッっとした目でガン見されてるんだけど。何故だ。
「インクは…、インクだけじゃないかな?何か書いても怒られないものない?」
「え?あ。待ってろ」
了解。…ん?タクが部屋の隅に行ってなんかごそごそしてる…って、
「それ、俺の鞄じゃね?」
「そうだぞ…って、あ。ごめん。あるの言い忘れてた」
別に構わないけど…。鞄があればノートがある。計算用紙用にルーズリーフ持っててよかった。一枚取り出して、書いてみる。
インク、シャーペンの芯、ボールペン、墨汁。後、色変えて…、
「うん。で?って感じだな」
「思いつく筆記用具は書けるけど、マジで「でっ?」ていう」
ほんとそれな。どうしろと…。
「逆にタクのは?」
「剣術に若干、火魔法に補正」
戦わなきゃならないならそっちのがよさげだな…。
「い、一応、シャイツァーは壊れないから…。消したら汚れも落ちるし」
「これで戦えと?」
やれと言われればやるけれど…、リーチがあまりないからきついと思うぞ?
「投げても念じれば一瞬で帰ってくるし、一定距離を超えても帰ってくる。投擲アイテムになるんじゃね?」
「投げてる間素手だぞ」
「そうだな」
黙るなし。駄目じゃん…。
「あ。クラスメートは全員無事。先生以外全員いるぞ」
「俺と同じく長く寝ていたのは?」
「確か、蔵和列、百引晶、青釧美紅、清水四季さんだったはず。起きる時間はまちまちだったが、清水さんだけお前と同じくらいの時間だったはず」
了解。ありがとう。よく知ってるな。
「寝てる人は仲のいい奴らが誰々さっきまで起きてたのに寝てる!って言ってたし、起きた情報は共有するから…。だから見ててもよかったのさ」
ひょっとしてずっと見てくれてたやつか?
「そうだぞ。だから、最初くらいしかあんまり知らん。召喚されたときは陣の上にどーんだったぞ。ほどほどに偉い人が前にいた」
王はいなかったのね。
「あぁ、いなかったな。一応、寝てる人を個室にぶち込んでから、魔王の話。それで若干混乱しかけたが、旧代議の望月光太と、西光寺らがうまくまとめたぞ」
西光寺がいて、面識はないけど優秀らしい望月もいる。それなら混乱しなくてすむかな?
「ということは混乱はなし?」
「いえす。うまく分かれたぞ」
ん?分かれた?
「仲違いしたか?」
だとしたら最悪だが…。
「あぁ、すまん。分けたらしい。こっからは伝聞だが、基本的に俺も賛成。起きないお前と清水さん、見守り人4人除いたお話で決定してる」
なんだ、なら大丈夫か。
「本当に魔王を倒して帰れるか怪しい。それに、実は魔王がいい人で…とか困る。だから、魔王を素直に討伐しに行くグループと、それを無視して帰還方法を探すグループに分けたってことでいい?」
こくっと頷くタク。
うまい手段だ。もし戦えない、戦いたくない人がいれば捜索班に行けばいい。どっちかが駄目だったら合流すればいい。0からやるよりはいい。
デメリットは人数減るから壊滅する可能性があるってことだけど…、この際、仕方ない。戦いたくない人を放逐して殺すよりかはいい。
「となると、俺は捜索班?」
「たぶん。さすがにお前の能力で戦うのは無理だろ…」
やれと言われればやるけれど、かなりきつそう。
「当初の予定通りだけどな。討伐班と捜索班15:15で半々」
「ん?俺はシャイツァーによらずに捜索なのな」
「リーダーシップ発揮できる人数的な問題。討伐班は仲のいい組の小集団で構成されてて、その中に望月、芯、青釧さん、百引さんと既に4人いる」
望月と青釧さんは知らないけれど、タクが言うならそうなんだろう。こいつの人を見る目は俺以上だ。…そのくせちょくちょくトラブルに巻き込まれてるのだが。
「なんかお前、お前のせいだぞって言いたくなること考えてないか?」
「さぁ?たぶん違うと思う」
芯…、臥門芯は間違いなく大丈夫。厨二病に罹患してるけど心の安寧保つためだし。百引晶さんはあれだが、幼なじみ軍団のリーダー。…統制はとれそうか。
「それに対して捜索隊はリーダーレベルの陣容が?」
「薄い。戦える西光寺姉弟だけだ。…知ってるだろうが双子の姉の薫さんと、弟の賢人な。それ以外は戦えないし、リーダー向きでもないと思う」
だから俺がそっちか。やれと言われればある程度まとめられる。一応、俺とタクで小集団だけど、分かれてもどうとでもなるし。
「了解。ありがとう。で、捜索班はどう動くんだ?」
「えっと。待って。明日の8時…いや、夜が明けた後、2の鐘がなるころだ」
え?
「2の鐘っていつだ?」
「1の鐘が6時。2時間おきに22時まで鳴る」
となると…、8時。日が上ったらすぐ行動。早くないか?
「噂が広まる前に出したいらしい」
「あぁ、今代の勇者は半数が逃げるって言われないためか」
知ったこっちゃないが。めんどくさい…。
「数が多いらしいけどな。今回」
「あぁ、捜索に行く許可が出たのはそれでか」
捜索に半数が出ても、これまでより多い。戦えない足手まといも切り捨てて、残りが真面目にやれば歴代最高の衝撃力…とでも考えたかね。とはいえ、逃げる云々言われるとよろしくない。出るのが早い方がいいってのは妥当。
「ありがとう。ご飯もおいしかった。で、今何時くらい?」
「最後の鐘が鳴った後だから…、0時くらい?」
「眠くないんだけど…」
8時間もぼーっとしているのは地獄。
「話すべきこともないしな…、図書館でも行こうか。案内してやる。お前なら俺らが読めないのも読めるだろうし」
「ありがと。じゃあ、連れて行ってもらっても?」
「もちろん。あ。そのトレーは外な。置き場があるから置いておけ」
了解。じゃ、行きますか。




