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4話 能力の目覚め(IPGの単語説明集No.9)

「……ん…」

目を覚ますと、もの凄い腐乱臭がした。鼻をつまみ、周りを見ると死体だらけだった。

(何が起こってる!?どこなんだここは!?)

とにかく状況を把握したかった。自分がなぜここに居るのか。何が起こったのかを。最後の記憶が殆ど無い。周りには死体がたくさん転がっていた。左を見ると、そこには母親の死体もあった。それで思い出した。

(そうだ…俺は…あのクソ野郎に誘拐されて…M-なんとかっていう薬品を入れられて…それから…うっ…)

まだ頭が痛い。それに体にも違和感を覚えた。まるで自分の体じゃない感じがした。

(アイツは言ってたな…。もし生きていたら、ミュータントになっているはずだと…。ミュータントになったから、違和感があるのか…?そんな事を考えている暇は無いか…)

とにかく今はここから脱出する事だけを考える様にした。ここの死体が母の死体がある事などから、研究で失敗して死んだ人達なのだろうというのは予想出来た。そう考えると、自分も死んだと思われたのだろうというのも予想は出来た。

(どうやって出る…?)

ドアを見つけたが、よく見ると横には機械があり、何かが無いと開けられないのはすぐに分かった。

(くっ…どうすれば…)

その時床が突然ガバッと開いた。

「え!?」

周りの死体と一緒に下に落ちて行く。

「なっ!?なんだ!?」

その時一瞬自分の声にも違和感があったが、今はそんな時じゃないと思い、とにかく死体をクッション代わりにして、下に落ちた時の衝撃を和らげた。

「すっ…すみません…。とにかく…そうだ!母さんの…」

この床はベルトコンベアの様になっていて、前へ自動的に動いている。その向かってる先を見ると、激しく燃える炎があった。

「え…?どういう事だ…?はぁ?」

この場で死体を火葬するなんて信じられないと思ったが、あのサイコパス野郎の事と、自分がこんな状況になってる事を考えると、もう何が起こってもおかしくないと考えた。

「どうすれば良い…そうだ!母さんと父さんの…」

父親が怪物化した時の事を思い出した。あんな怪物になった姿の父親を見つけられるのか?そもそもここにその死体はあるのか?など、しかし考える時間なんてもう無い。焉武はせめて母親の死体だけでも、外に出してやりたいと考えた。

「母さん!母さん!!」

落ちた時に母親の死体を見失った。探したが全然見つからない。

「くそぉ!!!」

気が付くと、炎はそこまで来ていた。そしてあの両親の言葉を思い出した。

『もし私達がenemyとかいう、ミュータントの犯罪者に捕まったとしても、絶対に自分の身を守る為に行動して!お願いよ』

『俺達はお前に生きて欲しいから。だからお願いしているんだ』

「くっ…そ…」

炎を見た。激しく燃え盛っており、どんどん死体を燃やしている。なんの躊躇もなく死体を燃やすその炎が、最後に見た父親の怪物化した姿よりも、怪物の様に思えた。

「どうして…どうして……え?」

よく見ると、2m程先に母親の死体があった。しかしあと5秒もすれば、炎の中へ入れられる距離。

「母さん!!」

焉武は走った。

(ごめん…俺…約束守れない!!)

そして母親の死後硬直により硬くなった死体を抱き締めた。

(俺はこのまま…ここで死ぬよ…。父さん母さん…ごめん……)

焉武と母の死体はそのまま炎の中へ投げ込まれてしまった。容赦なく炎は2人を飲み込んだ。


ーーーーーーーーーー


「今日はどんな感じだ?」

あの焉武を処理場へ運んだ男が死体処理場の管理室へ来ていた。

「あっ。金田キンダさん!1名だけ生きている人が居ましたが、そのまま炎の中へ入れられた事以外特に異常はありません」

「どうせクリーチャーの生き残りだろ。昨日居たんだよ。1体だけだったんだがな。今日も十数人研究に使ったと、研さんが言ってたから、その時に出来たクリーチャーで殺し損ねたのが居るんだろう。全く…」

金田キンダ 薩春サツハル。見た目は特になんの変哲もない、身長173cmの筋肉質な体でも無ければ、肥満体型な体でもない。町中に普通に居るような普通の男性。しかしミュータントであり、能力は『生物の体を蝕む菌を繁殖させる』という状態異常系の能力である。昨日のクリーチャーを殴った瞬間、跡形も無く消えてしまったのは、その菌をクリーチャーに触れる事で感染させて、一気に細胞を殺しつつ、その死んだ細胞を菌が食べたからだ。

「クリーチャーではありませんでした」

「何?」

「あれは…人でした…」

監視カメラの映像を見せた。

「ん?知らない奴だな。殺し損ねたのか、迷い込んだ奴なのか…。とにかく俺には関係無い。それに炎の中に入ったんだろう?」

「はい」

「じゃあ別に心配する事は無いな」

監視カメラを戻した。ベルトコンベアに死体が無くなった事を確認すると、管理人はボタンを押して、ベルトコンベアと炎を止めた。

「どうだ?仕事も終わったし。飲みに行くか?」

「良いんですか!?」

「あぁ。仕事も終わったし、給料も入ったしな」

「はい!是非!」

2人は立ち上がり、帰る準備を始めた。

「あっ。監視カメラを止めないと…」

監視カメラは基本常に全て動かしているが、この死体を火葬する場所に付けてある監視カメラは、監視ではなく死体の数と、全部燃やし切ったかどうかを確認する為に付けてある為、終わったら切るようにしてある。節電である。

「あれ?」

「どうかしたか?」

「いや…その…なんでだ?」

「ん?」

薩春も監視カメラの映像を見た。映像には何も乗っていない止まったベルトコンベアの様子があった。

「なんの異常もないみたいだが…」

「火も止めたはずなのに…なんでまだ燃えているんだ?」

「なんだと?」

よく見ると確かに死体を燃やす所で、まだ炎が上がっていた。

「消したはずなのに…なんでだ?」

「もう一回ボタンを押してみろ。それで消えなかったら、まぁ普通に故障だろう」

ボタンをもう一回押してみたが、炎が止む気配は全く無かった。

「ん?」

薩春がある事に気付いた。炎の中に人影が見えたのだ。

「なん…なんだ…あいつは…。オッドアイ…だと!?それに右目が赤色の…まさか!!」

薩春は昨日最後に捨てた死体のことを思い出した。

「そんなはずがない…。ありえない!!死んだはずだ!!それに!!あいつは…」

映像に映っていた人物の体から炎が激しく燃え上がっていた。そして監視カメラに気付いたのか、こちらの方を睨み付けてきた。

「薩春さん!これは一体…」

「想定外の事態だ!!」

薩春は急いでスマホを取り出して、研にこの事について知らせようとした。その映像から目を離した一瞬だった。映像をまた見ると、あの人の姿が消えていた。

「なに…」

映像をよく見ると、画面にギリギリ映ってる壁にヒビが入っているのが見えた。

「なんだ…?」

ドゴォ!!と背後に大きな音が聞こえた。2人は振り返ると、そこには燃え盛る1人のミュータントが居た。

「やっと見つけたぞ…。ここが管理室か?運が良い…早めに見つかって良かった。いちいちこの建物を破壊しながら、探すのはめんどくさいから…本当に早めに見つかって…良かった…」

そのミュータントの目からは、憎悪と殺意で一杯なのが感じ取れた。手が激しく燃えているが、熱そうにしていない。

「てめぇら…本当に許さない…。許せない…。絶対に…俺がこの手で…テメェらを…ぶっ殺す!!!」

体から炎を激しく燃え上がらせた。そして手から炎を出して、2人へ向かって飛ばして来た。

「くっ!!」

2人は薩春が管理人を引っ張って避けたので、なんとか助かった。

(誰なんだコイツは…しかしあの目の色…まさか…)

その炎の中の人物は女性だったが、目を見てすぐに分かった。綺麗な鮮やかな赤色の右目。そんな目は昨日死んだはずの男しか居なかった。

〜IPGの世界の単語集〜


No.9

状態異常系能力


毒やウイルスなど直接的攻撃というよりは、少しずつ対象の体を蝕んだり、精神的に追い込む様な攻撃を行う能力。異能力の中では扱い辛い方ではあるが、使いこなせるようになるとかなり便利である。主にサポート役に回る事が多いが、能力によっては戦闘員になる者も居る。

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