目に見えない、そしてなんか下らなそうな、もしかしてマウントされそうな、プチ・カーストぽい身分制度を指一本でそつなく"ブッ壊す" あるごく普通の高卒女子の物語の自信なさげな投稿の試み
バイト先に気になる人がいる。
店のオペレーションをよく知っていて、ときどき店に顔を出しては、店長ともいろいろと話しているようだった。どうやら年は若いけど、本部というところから来ているらしい。
明るくて笑顔が可愛いい。そして親切。ただ、忙しそうで個人的なことを話している余裕はないほどだ。
お店にやってきては来ては、すぐに本部に戻ってしまう。
有眞-アルマ-さんは、そんな人だった。
わたしは、もう何年間かここで働いていて、ほとんどのオペレーションはマスターしてしまい、バイトも育てている。時給はあがってきていて、周りからは先輩と言われるほどだ。
それにしても有眞さんは、3つぐらいしか年は変わらないけど、本部で何をしているのだろう。
そういえば本部は残業が多くて、給料安いよ〜というようなことを言っていたっけ。
あるとき何気なくネットをみていたらバイト先の店の本部が人を募集しているのを見つけた。
その本部の募集要項には、とても厳しい条件が書かれていた。
そもそも書類審査があり、経営学校を卒業していなければならないこと、AFELが580以上であることなどが書かれてあった。有眞さんのことをそんな風に見ていなかったので、少し驚いた。
たぶん、有眞さんのようになるには、5年はかかるなあ、と思った。
その上、経営学校に入るには、ものすごくお金がかかると知ってまた驚いた。
笑顔が可愛い有眞さん。どんな過去があったのかな。
それから数ヶ月して、有眞さんと話す機会があった。
休暇中なのに、お店の様子が気になって、つい来てしまったそうで、わたしが帰りのタイムスタンプを押している時、ちょうど有眞さんも帰るところだったのだ。気になっていたこともあったし、駅までの帰り道、ドーナッツ屋さんでちょっとお茶しようということになった。
有眞さんの方も、わたしのことが気になっていたらしい。短い時間に、いろいろ話してくれた。
なかなかの苦労人で、最初は、系列店でバイトをやっていたり、借りた奨学金を返していたり、親の体が弱かったりとそんなことなどなど。
しかし、一番心にひびいたのは、彼女の過去の苦労話ではなかった。最近のバイト先のオペレーションが、有眞さんが考えて企画したものだったと聞いた時、ちょっとショックを受けた。
ひとつひとつのやり方や工夫を、上層部がオーケーするまで練りに練って、ついに採用してもらったそうだ。それに、今の店長が有眞さんのかなり下の立場にあることも知った。店長すら有眞さんの企画書に従って働いているのだった。来期は、この地域にある多くの店の統括部隊や、広告戦略にも関わっていくという。
それから休暇中なのにお給料がちゃんと払われていることにも。本部は、利益をもたらす人材には、いろいろと優遇しているらしい。関西に研修に行くこともあるらしく、研修後は自由行動。働きながらちょっとした旅行もできてしまう立場なのだ、
有眞さんと同い年だったら、ひっくり返っていたかもしれない。いままで真面目に何年かバイトをこなしていたけど、本部がそんなになっているとは、思ってもみなかったのだ。
バイト先のオペレーションを考えている有眞さん。でも、そのオペレーションをちゃんとこなす人がいないと、お店は回っていかない。それを効率よくこなしているのが、わたしたち店員だ。立場は対等であるはずなのだ。でも、本部の人たちの情報は、まったく知らなかった。知らされていなかった。それも、何年もの間。。
よく昔のドラマなんかで、こんなパターンの話が出てきたっけ。
有眞さんは、苦労したというけど、こういう風に報われているのだろうなとも思った。
なんかいろいろ教えてくれて、頭の中はぽかんとしていたけど、その日、SNSのアカウントを交換して別れた。
一月後、わたしはバイトを辞めた。