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夕日は瞳の奥に  作者: ぬりえ
第十四章
98/163

六、

 拓真が寝込んで三日三晩、碧がつきっきりで看病し、拓真はやっと身体が動かせるまでに回復した。それまでの間、フジの指示どおりに警備が行われていたが、何事も起きていない。


 部屋のベッドで身体を起こしていると、フジと一水(かずみ)、樹、弦矢が見舞いに来た。もちろん経過報告も兼ねている。

「迷惑をかけてすまなかった」

 心底申し訳なさそうに謝る拓真の顔色はすっかりよくなっている。

「迷惑じゃなくて、心配ですよ」

「そうか、悪かったな、心配かけて」

「本当ですよ……」

 素直に言い直し、笑顔も見せる拓真を見て、フジは安心する。倒れたときの状況が嘘のようだ。ここまで回復するに三日かかったとはいえ、今拓真がこうして身体を起こして笑っていられるのも、碧のおかげだ。


 フジは拓真が寝込んでいる間の会議内容やパトロール結果を報告する。拓真は真剣に聞いている。最後まで話し終えると、拓真が弦矢を見た。

「弦矢、ほのかもだが、俺たちにない思考をくれる。助かってるよ」

「あ、えへへ」

 褒められて弦矢は恥ずかしそうにぽりぽりと頬をかく。

「そういえば、女性陣はどうした?」

 さら、紅葉(くれは)、ほのかがこの場にいない。碧は看病でここにいるが、守護神の女性がいないのだ。男性皆がいるというのに、女性がいないのを不思議に思うのも無理はない。

 それに答えたのは碧だった。

「寝間着姿を女性にさらすのは、拓真さんにとって酷かと思いまして」

 ちょっといたずらっぽく碧が笑う。

 自分は寝間着姿で寝起きそのもの。三日間、風呂にも入っていないことを思い出す。

「それもそうだな、うん」

 碧の心遣いに感謝する。

「碧はいいのか?」

 樹のもっともな質問に、

「私はそもそも三日間看病してもらっているので、そんなことを気にする必要はありません、医者ですから」とまたもっともな返事をしてきた。

「よし、リハビリに夜のパトロールに参加す」

「だ・め・で・す!」

 最後まで言い終える前に、ぴしゃりと止められてしまう。

「体調を崩したときは、治りどきが肝心なんです! 今日はゆっくりお休みなさってください」

 拓真は母親に叱られた子どものようにしゅんとうなだれ、苦い顔をしている。拓真もこんな顔をするんだ、とほほえましく、また、土の長にこんな顔をさせられる碧をすごいと思う。

「明日は?」

「今日きちんと休んで、明日の朝回復していれば、リハビリ程度なら」

「よし、今日はゆっくり過ごすとしよう」

「薬と食事を用意しましたので、しっかりとってくださいね」

「わかっている」

 碧はもう明日復帰する気満々で、パトロールのことを考えている拓真に呆れつつも笑っている。

「碧さんはついていないの?」

 フジが問う。

「これだけ元気になっていますから、もう私が付き添う必要はありません。逆に私がいるほうが気を遣わせて休めないことになると思いますから、私は仕事に戻ります」

「仕事?」

 今度は樹が尋ねる。薬草学の準備は、この間で当分の間もつくらいに終わっているはずだ。

「少し試してみたい薬の調合があって。作業が滞っているから、早めにとりかかりたいの」

「俺のせいで悪いな、碧さん」

「いえ、拓真さんのせいではありません。看病中に、調合のレシピも考えられました。あとは材料を揃えるだけです」

「材料って、なんですか? 碧さんならなんでもお持ちだと思ってました」

 弦矢も気になったことを口にする。療養室の薬棚にはずらりと小瓶に詰められた薬草などの材料が並んでいる。足りないものなどないように見えてしまうのも無理はない。

「う~ん、やっぱり、採取したばかりのもののほうが効果が出やすいものもあるから。それがなにかは秘密」

 え~、と不満そうな弦矢を碧は笑顔でかわす。秘薬らしきものの調合となると好奇心をくすぐられるが、教えられない理由があるのだろう。追及はなかった。


 樹たち五人は、一水が拓真に身体を清潔にする魔法をかけた後、また明日と拓真に告げ、部屋を出た。碧はさっきの秘薬の準備をしたいというためそのまま療養室へ、残り男四人は生徒会室へ向かう。

「あんまり顔色よくなかったけど、大丈夫なのか、あいつ」

「ずっと拓真さんにつきっきりで看病してくれてたからな。それなのにこれから薬を作るなんて、ほんと頭下がる」

「ま、がんばりすぎなときは俺たちが止めればいいか」

「そうだな」

 樹の話に相槌をいれながら、フジは横目で樹を窺った。いつからか、樹と碧の距離が縮まったような気がする。何があったのだろうか。一時期はお互いに避けているかんじさえあったのに。

 まあ、こいつにはさらさんという恋人がいるし、見ていて微笑ましいほどのべたべただから、変な心配は必要ないか、と変な詮索はしないことにした。

「でも、よかったですね。拓真さまが回復するまで何もなくて。ぼく、碧さんからも妖精さんの様子を聞けないから、内心はらはらしてたんです」

「ああ、本当に。拓真さんが寝込んでる間に次の事件があったら、それこそ拓真さんが壊れちまう」

「誘拐事件のときの紅葉さんみたいになりそうだな」

 弦矢の感想に、フジ、樹と、うんうんと賛同する。

 拓真があのときの紅葉と同じように暴走したら、土の領全体を、もしかしたら学外まで大きな地震を起こして全壊させてしまいそうだ。考えるだけでぞっとする。

 恐ろしい想像から話を変えようと、樹は話題を逸らした。

「とにかく、碧が自ら俺たちと別れてくれてよかったな」

「ああ、変な勘繰りされると言い訳みたいで嫌だし、碧も傷つくし」

「穏便に話がまとまるといいのですが……」

 話を逸らすことはできたが、三人は暗い表情になってしまう。実はこの後、守護神の集まりがあるのだ。

 しかし、碧を除いたメンバーで。拓真はスクリーンで参加する。

「おしゃべりは終わりにしてください」

 ずっと黙っていた一水が、釘を刺した。

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