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夕日は瞳の奥に  作者: ぬりえ
第十四章
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三、

「うわぁ、またいっぱいですね~」

「ほんと、びっくり」

 いつもとほぼ同じ会話が交わされる。意見箱を持って生徒会室へ向かう。

 つい最近から、意見箱の中身を回収する回数を、週一回から二回に増やした。少しでも異変を早く察知するためなのだが、ファンレターの量が多すぎて週一回の回収では間に合わないという理由もある。

 増えた分の回収はほのかと弦矢が引き受け、重要なものだけ“気の言伝”で他のメンバーへ伝えられる。


 もう何度目だろうか。ファンレターでいっぱいの意見箱を見て、あきあきする。そんな目的で設置したわけではないのだ。ほのかはげんなりしてしまう。

 守護神だけに任せきりにせず、学生一人ひとりがもっと危機感をもってほしいものだ。

 ただ、ここ最近はファンレターに混ざって何かしらの異変を伝えるものがちょこちょことみられるようになった。どれも土の領のことで、夕闇に人影を見た、とか、どこからか不気味な音がする、とか、人がいないのに魔法の光を見た、などだ。

「ねえ、どう思う?」

「どう思うって……。“影”に関係していそうだと思いますけど」

「ちがう。いや、そうなんだけど、みんな匿名なんだよ。変じゃない?」

 異変を訴えるメッセージは、すべて匿名なのだ。ファンレターや学園への要望は名前があるものが多く、または誰だか割り出せそうなペンネームが書かれていたりするのに、なぜだろうか。

「土の領に目を向けさせて、実は別のどこかでなにか起こそうとしているとか、“影”の錯乱作戦っているか、罠ってことはない?」

 “影”は人の心の闇にうまく入り込み、操る。意見箱に意味ありげなメッセージを入れさせることも、自ら投函することも可能だ。

 弦矢は少し考えて、口を開いた。

「罠の可能性もないとは言い切れないけど、怖いんじゃないかな」

「怖い?」

 弦矢の言う意味がよくわからず、ほのかは復唱する。

「はい。“影”の計画を壊すようなことをして、報復されるのが、怖いんじゃないかなと思いまして」

「あ、たしかに」

 “影”の恐ろしさは身をもって理解している。もしも自分の意見により守護神が対策して“影”の思惑がうまくいかなかった場合、報復されるのではないか。そんな気持ちが匿名にさせているということは、大いに考えられる。ほのか自身、怖いのだ。

「やっぱりすごいね、弦矢くんって!」

「へ?」

「だっていつもあたしたちの考えないところに焦点当てて、大切なこと引き出してくれるんだもん!」

「そんな、そんなこと、は」

 尊敬の眼差しで純粋に褒められ、弦矢は少し居心地悪かった。褒められることに慣れていないのだ。そんなにまっすぐに見つめないでほしい。

「さすが、“光の創造者”様!」

「はへ?」

 は、と、へ、の混ざった間抜けな声がもれてしまう。

「あれ、知らないの? 弦矢君、守護神の二つ名で“光の創造者”って呼ばれてるんだよ?」

「知りませんでした……」

「弦矢君にぴったりだねっ」

 弦矢が苦い顔をしているのに気付かずに、ほのかはファンレターの仕分けを進める。


 胸が締め付けられる。

 この気持ち、なんだろう。

 自分は風の力を十分に扱えない、半端者でそれた道を歩く者だというのに。

 おもむろに、弦矢は窓へ歩いた。

「ん? 弦矢君、どうしたの?」

 急に席を立った弦矢を不思議に思ったのか、ほのかが聞く。

「あ、その、今日の意見の内容をとばそうと思いまして」

 とばす、というのは、“気の言伝”を送るという意味だ。窓から送るというのに違和感はない。多分、飛ばす先の相手は校舎の外にいるのだから。

 ほのかはすぐに納得して、作業を続ける。

 弦矢はほっとした。本当は、自分がどんな顔をしているのか自分自身でもわからなくて、ほのかに見せないために席を立ったのだ。

 弦矢は、窓に向かった理由にしてしまったため、メッセージを飛ばし始めた。

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