九、
樹たちが生徒会室を出て四人の気配がなくなると、長四人が臨時会議を始めた。
「では、これから」
「いや、いい、弦矢。お前も席についてくれ」
「へ?」
長の会議開始の際の口上を述べようとした弦矢は、拓真にそれを遮られてしまう。しかも長の会議と思いきや、自分も座れと言われてしまい、戸惑った。どうするべきか助けを求めて他の三人に目をやるが、助太刀をいれてくれる人はいなかった。弦矢は怖々と席につく。
「弦矢、さっきは臨時会議と言ったが、実が違うんだ。ちょっとした話し合いなのだが、おまえの意見も聞きたくてな」
「ぼくに、ですか?」
紅葉の話に首をかしげる弦矢に、さらが説明を加える。
「碧さんの寮分けの儀式でのことなんですけれど、私たちの持つ宝玉が、碧さんが魔力を流したときに反応したんです」
「反応、というのは」
儀式のとき、碧の力が魔法陣に伝わり、ぽう、ぽう、と白い珠のような光が現れた。それに反応するように、三人の持つ宝玉が、魔力を帯びたそうだ。自分たちは何もしていないのに。
拓真は宝玉こそ有していないが、物質に起きた小さな変化を敏感に感じ取っていた。
そしてその反応は、碧が力を止めるとともに、すぅ、と消えたらしい。
「ちりっと熱を帯びたかんじだったな」
「ほんの少し、光を放っていた気もします」
それで自分が呼び止められたのか、と弦矢は納得した。
「ぼくにもなにか視えなかったか、ということですね」
「そうです。心当たりや気になったことはありませんか?」
一水に問われる。
儀式のことを思い返す。あのときは、白い光の美しさに見とれて、ぽーっとしていた。他になにか視えたものはなかったか。
四人は、弦矢の返事を黙って待っている。長四人の中に自分一人というだけで緊張するのに、こんなふうに黙って見つめられ、さらには答えに期待されてしまっては、弦矢にとって大変なプレッシャーだ。
しかしそのプレッシャーのおかげか、一つ思い出したことがあった。
「あ、そういえば」
「なんだ?」
「うっすらと光の線を見た気がします」
「光の線?」
白い光が浮き出たとき、その中で三本の光の線を見た気がしたのだ。そしてその線は、多分さらの耳元、一水の胸元、紅葉の指から、それぞれをつなぐよう三角形に出ていたような気がする。
確信ではないが、四人にその旨を伝えた。
「やはり、なにかあるのか」
「碧さんの力には、この宝玉の力をも動かす力がある、ということですか」
「四つの力をつなげる、と考えられますね」
「まるで“樹”だな」
拓真、さら、一水、紅葉が次々に感じたことを口にする。
「あのぉ、お役に立てたでしょうか……?」
おずおずとたずねてみる。
「ああ、大変参考になった。ありがとな」
拓真にそう言われ、弦矢は心から安心する。もうお役御免ならこの場をすぐにでも離れたい。自分がいるのは場違いな気がしてならない。
「では、ぼくは……」
「引き留めて悪かった。ここの片付けは俺たちに任せてくれ」
弦矢はお言葉に甘えてそそくさと退散した。
弦矢が退出すると、四人の顔は難しくなった。
「色々、調べる必要がありそうですね」
一水の言葉に、三人は黙って頷く。
その後もしばらく討論は続いた。
もう、すっかり夜になっていた。




