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夕日は瞳の奥に  作者: ぬりえ
第十一章
68/163

一、

 樹たちは、儀式を行う大広間へと向かっている最中。そわそわした雰囲気が漂う中、ほのかはひとり、うきうきした様子だ。

「碧さんが正式に学園の生徒になるんだよ! 嬉しい! 学年でいうと、一つ上の先輩だ~♪」

 昨日の涙はどこにいったのか。気持ちの切り替えが早く、ポジティブなところがほのかの長所ではある。

「笑っているほうが、ほのかちゃんらしいね」

 樹も思っていることを口にすると、へへ、とほのかが恥ずかしそうに笑った。

「昨日のほのかちゃん、とってもかっこよかったです」

 唐突に弦矢が褒めた。

「へ?」

「ぼく、感動しちゃった。自分を護れなければ、大切な人、他人を護ることはできないって。ほんとにかっこよかった」

 素直に真面目に褒められてしまったほのかは、ぽっと頬を染めた。

「そ、そうかな」

「はい」

「あ、ありがとう」

 尻すぼみになるほのかの声。弦矢から目を逸らして、さっきとはまた違った恥ずかしさを顔に浮かべている。

 そんな様子を見ていた一水(かずみ)が、紅葉(くれは)に問いかける。

「姉の目からして、妹さんの様子はどう思います?」

「あいつはこういうことに鈍感だからな。客観的に見守るのがいい。私も楽しいしな」

「あ、楽しむのが目的なんですね」

 呆れたように言うが、否定しないところ、一水も同意見なのだろう。

 こんな会話で、そわそわしていた雰囲気がほっこりした。ほのかと弦矢が図らずしも良いはたらきをしてくれたおかげだ。

 そこで、なかなか踏み込めなかった話題を拓真が振ってくる。

「碧さんの力は、どこに所属するんだろうな。輝きの強さも気になる」

 ダイヤモンド、サファイヤ、ルビー、トパーズのどれが輝くかで、属性が決まる。また、魔力の強さは輝きの強さに比例する。

 まず答えたのはフジだった。

「癒しの手でのヒーリングの効果を考えると、土の属性だと思われますが、“影”を退けたあの光のことを思うと弦矢のように光によった風属性も考えられますね」

「“影”が現れたときの光は大変強いものでしたから、輝きも強いと思います」

 これはさらの意見。

「しかし、すぐに力尽きて倒れてしまうのをみると、失礼ながらそこまで強いとも考えにくいのでは?」

 弦矢も入ってくる。

「祓う、という意味では火の属性でもおかしくないな」

 “魔”を火で祓うという習わしは今も存在する。

「そうだったらいいな~。あ、でも、複能力者ってことも考えられるよ! 樹さんみたいに」

 最後のは余計だ、と樹はほのかをきっと睨む。てへっとほのかが舌を出した。

「清めるという意味では、水の属性もありえますね」

 一水も言う。

 それぞれが、自分と同じ属性であってほしいと考えていることが窺える会話。なにかあったとき、碧が近くにいてくれれば安心できる。でも少し、碧に依存し過ぎな面があるように思う。実際自分もそうなのだが。

 それに碧は生徒になったとはいえ、それは肩書だけで、学内での行動はこれまでと変わらない。

「すべての属性を有していたら、すごいですね」

 弦矢が目をキラキラと輝かせている。

「もしかして、伝説の女神様第二弾になるかも?!」

 ほのかも期待に満ちた表情をしている。


 だが正直、樹は碧がどれかの属性を有しているとは思えなかった。たしかに何かしらの力、不思議な能力はあると思う。でもそれは、風でも水でも、火でも土でもなく、また違った力だと思うのだ。

 なぜそう思うのかは樹にもわからないが、違うなにか、というふうに思えてならない。もしもどれかに属するならば水であってほしいと、もちろん思っている。

「まぁ、彼女の能力については、すぐにわかります」

 一水がそう言い、大堂の扉に手をかける。

 なかには学長と薬草学の先生二人、そして碧が待っていた。準備は整っている。

 碧は四つの魔法の石を四隅に置いた魔法陣の中央に立っていた。


 そして儀式は始まった。

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