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夕日は瞳の奥に  作者: ぬりえ
第十章
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四、

 ガーディアンズ、今となっては守護神の一部がため息をついていたころ、樹は碧が眠る特別室の中で警備にあたっていた。

「樹、交替の時間だ」

 フジから声をかけられ、もうそんな時間が立っていたのかと気付く。神経を研ぎ澄まして警備にあたっていたため、フジが来ているのには気づいていたが、もう交代の時間がきていたとは。考え事をしていると、こんなにも早く時は流れるのか。

「あまり背負いすぎると、身体に障るぞ」

「ああ」

 フジの気遣いにも感情のない返事になってしまう。

「ずいぶん複雑な顔をしているけど、考え事か? 俺でよければ聞くけど」

「……」

 無言のまま動かない樹を気にすることなく、フジは窓枠に腰掛けて外を眺めている。

 しばらく沈黙が続いた。

 かち、かち、と時計の秒針が室内に響く。

「……何者なのかな」

 考えていたことが口から洩れた。

「妖精の森で育って、幻獣と友人で、癒しの手を持っていて」

 樹が話し出すと、フジは碧のほうへ視線を落とす。

「そのうえ、“影”を退ける不思議な力を持っている」

 樹も碧をじっと見つめる。


 倒れたときは、はぁはぁと苦しそうに息をして、その後高熱を出した。現在の状態は落ち着いているが、意識は戻らない。誘拐事件のときとほぼ同じだ。

「何者なのか、か。それは本人に聞かないとわからないな」

 そんなことはわかっている。

 けれど、どうしても考えてしまうのだ。そして、それよりも気になることがある。

「どんな生き方してきたんだろ」

 前回、誘拐事件の後、一部は聞くことができた。しかし追求しすぎないように言われていたため、すべてを聞くことはできていない。

「あのとき、すげえ言いたくなさそうだったもんな。思い出すのも辛いくらい、苦しい過去があるんじゃねえか? そう簡単には聞き出せねえし、教えてもらえるもんじゃねぇよ」

 なぜ、妖精の森で育てられることになったのか、それを尋ねたとき、碧は大きく拒否反応を起こした。

「なんでそれ気にしてんの?」

「わからない」

 そう答えたが、なんとなく、碧の過去が自分につながるような、そんな予感が樹にはあった。

 “あの子”のことはもちろん、自分の過去に関わるなにかがありそうな気がしている。

「樹も、人には言いたくないことのひとつやふたつあるだろ? それはみんな同じだ。碧さんもな。俺たちができるのは、話してくれるのを待つだけだ。あとは話してもいい、と思ってもらえる存在になること」

「そうだな」

 人には言えない過去。それは樹にもある。樹のそれは、碧とはまた別の意味で、人に言いにくいものだ。

「さんきゅ。じゃ、あとはよろしく」

 少し気持ちが軽くなった。思っていることを口にできる相手がいる、それはとても幸せなことだ。


 フジは部屋を出ていく樹の背中を見ながら、ふっと笑う。そしてすぐに、警備に気持ちを集中させたのだった。

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