二、
光の盾が消え、弾かれた黒い靄が再び人の姿に戻る。
「あなたは……非能力者ではないのか?」
話し方はさっきと同じだが、驚きが感じられる。驚いているのはガーディアンズも同じだ。
「碧?」
「碧さん?!」
メンバーの声に耳を傾けることなく、碧は“影”に向かって静かに抗議する。
「どうして平衡を崩したいのですか? 苦しい思いをするのはあなたも同じでしょう?!」
碧とは思えない、強い口調。
はぁはぁ、と息を荒くしているのを見ると、自分も苦しいのを誤魔化そうとしているのかもしれない。
「なぜ、か……。私を止めた報酬として、教えてあげるとしよう。それは、私が世界のすべてを憎み、恨んでいるからだ。私はすでに苦しい思いをしてきた。そんなことにはもう慣れっこだ。自分が苦しむことなど、気に留めることではない」
それはとてつもなく哀しいことなのではないか。でも、誰も、なにも言えない。
碧だけは、やるせない、哀しそうな表情をしていた。
「面白いものを見せてもらった。本日はお暇しよう。少しお喋りがすぎたな。次回、また会おう。土の領で」
“影”の形は散って消えた。
しかし、“影”が生んだ瘴気はまだ残ったままだ。このままでは回復しない。
すると、碧が水をすくうように、両手を持ち上げた。手のひらの上には、白く清らかに光るなにかがある。樹には、命を紡ぐ灯に見えた。
碧は両手を口元へと近づけると、ふぅ、と優しく息を吹きかけた。
光が広がる。
もやもやと淀み、まどろんだ瘴気を包みこんでいく。瘴気は、ひらひらと消えてなくなった。
「浄化……したのか?」
一水が呟く。
周囲の景色は、学生が倒れ込んでいるのを除き、“影”が姿を現す前と同じく、青空と陽射しが広がっている。
ふらり
力尽きたかのように、手がだらんと下がったかと思うと、碧はそのまま後ろへ倒れ込んだ。
「碧さん?!」
一番近くにいた樹が、どうにか碧の体を抱きとめる。
碧は樹の腕の中で、はぁはぁと苦しそうな息をしていた。




