表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夕日は瞳の奥に  作者: ぬりえ
第十章
60/163

二、

 光の盾が消え、弾かれた黒い靄が再び人の姿に戻る。

「あなたは……非能力者ではないのか?」

 話し方はさっきと同じだが、驚きが感じられる。驚いているのはガーディアンズも同じだ。

「碧?」

「碧さん?!」

 メンバーの声に耳を傾けることなく、碧は“影”に向かって静かに抗議する。

「どうして平衡を崩したいのですか? 苦しい思いをするのはあなたも同じでしょう?!」

 碧とは思えない、強い口調。

 はぁはぁ、と息を荒くしているのを見ると、自分も苦しいのを誤魔化そうとしているのかもしれない。

「なぜ、か……。私を止めた報酬として、教えてあげるとしよう。それは、私が世界のすべてを憎み、恨んでいるからだ。私はすでに苦しい思いをしてきた。そんなことにはもう慣れっこだ。自分が苦しむことなど、気に留めることではない」

 それはとてつもなく哀しいことなのではないか。でも、誰も、なにも言えない。

 碧だけは、やるせない、哀しそうな表情をしていた。

「面白いものを見せてもらった。本日はお暇しよう。少しお喋りがすぎたな。次回、また会おう。土の領で」

 “影”の形は散って消えた。


 しかし、“影”が生んだ瘴気はまだ残ったままだ。このままでは回復しない。

 すると、碧が水をすくうように、両手を持ち上げた。手のひらの上には、白く清らかに光るなにかがある。樹には、命を紡ぐ(あかり)に見えた。

 碧は両手を口元へと近づけると、ふぅ、と優しく息を吹きかけた。


 光が広がる。


 もやもやと淀み、まどろんだ瘴気を包みこんでいく。瘴気は、ひらひらと消えてなくなった。

「浄化……したのか?」

 一水(かずみ)が呟く。

 周囲の景色は、学生が倒れ込んでいるのを除き、“影”が姿を現す前と同じく、青空と陽射しが広がっている。


 ふらり


 力尽きたかのように、手がだらんと下がったかと思うと、碧はそのまま後ろへ倒れ込んだ。

「碧さん?!」

 一番近くにいた樹が、どうにか碧の体を抱きとめる。

 碧は樹の腕の中で、はぁはぁと苦しそうな息をしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ