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夕日は瞳の奥に  作者: ぬりえ
第九章
54/163

四、

「そうか、妖精たちは元気すぎるほどなのか。異常なのかそうでないのかは判断しかねるな」

「噴煙のことについては気になりますね」


 ほのかは碧の話を忘れないうちにすぐに紅葉(くれは)に伝えに行った。そこには紅葉だけでなく、一水(かずみ)と樹もいた。

「とりあえず、様子見ってことは変更なしですかね」

 これは樹の見解。

「そうだな。様子をみることしかないな」

「警備隊員たちに、少しでも異変を感じ取ったら報告するよう、もう一度伝えておきましょう」

「ありがとう」

「それで、対策などの具体的方法はどうする予定ですか?」

「噴火はいつどの火口で起こるかわからないから、対処しにくい。学生に、地下のマグマの動きに注意するくらいしか方法はないな」

「“影”については」

「まだ考え中だ。最近特にこれといって大きな事件が起きていないから、学生の意識から“影”の存在が消えつつある。歓迎の準備もあって忙しいから、“影”に関しては気が緩みがちだ」

「そうですね。では例えば――」


 紅葉と一水の中で、具体的対策の話がどんどん進んでいく。さらと拓真にお願いすることや水の領生の助太刀など、細かい話になっていく。

「なんか、疎外感ありません?」

 真面目な話をしているため、いちゃいちゃしているようにはまったく見えないが、すっかり二人の世界になっている。残されたほのかと樹はぽつんと取り残された。

「そうだな」

 樹も同じことを思っていたので呆れ半分に同意を示す。

「一水さん、やけに積極的ですし」

 そうなのだ。一水は今回、火の領の火山活動に関し、積極的に対策に取り組もうと行動を起こしている。今朝、樹は火の領の火山活動の活発化は“影”によるものだと考えていることを一水から聞かされていた。もちろん、ほのかや紅葉の不安を煽ることになるため、口にしない。

 何かあったとき、一水ができることはひとつ。対策を練り、実行すること。

 “影”の行動は予測不可能で、事前に防ぐことは難しい。だから、消極的ともいえるが、事件を想定し、事後の措置を考え備えておくことができることなのだ。水は火に相性がいい。水の力で抑えられることは多くあるはずだ。

 こんなにも真剣なのは、大切な人を護るため。

 それを樹は理解していた。

 力のバランスが“火”に偏っていることは、さらが風の王から昨日の集会後に情報を受け、事実であることがわかった。

 次は“火”の領で事件が起きると、ガーディアンズの誰もが予測しているだろう。

 だがその予測に反し、他の領で、特に“土”の領でなにか仕掛けてくることもありうる。

 集会で火山活動については昨日話したばかりだったが、今の紅葉と一水との話し合いで、具体策は固まっていた。


 まずは、どの領にも常時他の領生を二人以上配置すること。

 これで相性の良し悪しを気にせず対処するとともに、慣れていない領での異変にいち早く気付く。

 次に、火の領で噴火が起きた場合の策。

 噴煙は風の領生が巻き上げて空気の玉に閉じ込め、処理する。噴石は土の領生が小さな粉末に分解する。粉にすると視界が悪くなるため、怪我をしない程度の大きさで地面に落とす。

 マグマが流れ出したときは、火の領生が温度を下げ、それを水の領生が援護し、土の領生が壁を作る。風の領生は気の言伝で支援や避難を呼びかける。

 これらはさらと拓真の意見を聞き、学長の許可得た後、噴火が起きた際の行動としてマニュアル化し、全学生へと知らされることになっている。


 そして、“影”の対策。

 これは瘴気を感じたらすぐに報告すること、特に碧には妖精たちの様子を定期的に報告を頼む。事前の対策としては、やっぱりこれが今できる限界だ。

 ことが起こらなければ何もできないことを歯がゆく思う。紅葉と話している一水をちらと見ると、一水はとても真剣で、厳しい表情をしていた。

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