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夕日は瞳の奥に  作者: ぬりえ
第九章
52/163

二、

 冬休みが終わり、講義も始まって二月になった。

 一月中に降った雪が残り、景色がほんのり白い。泉には氷が張り、風の高山にはまだ雪が厚く積もっている。風の領ほどではないが、土の領も雪化粧している。火の領は地熱が高いため、雪が積もってもすぐに溶けてしまう。それぞれの領で異なる景色を楽しめる時期だ。


 寒い日はまだまだ続くが、あとひと月も待てば、春の兆しがやってくるだろう。入学式はあと二か月後。すでにそれぞれの領が、新入生歓迎のパフォーマンスをするための準備に取り掛かっており、式典のときとは違った忙しさと賑わいにあふれることになる。

 これも毎年恒例の行事。


 生徒会室にはガーディアンズが集まっていた。報告などは終わり、すっかり緩んだ空気が流れている。

「雪だぁ……。火の領はもう溶けちゃったからなぁ。ちょっとさみしい」

 窓の外を眺めながらほのかがぼやく。

「今年はいつもより早かったな」

 火の領は、山の火口がある部分にある。風の領と同じ山ではあるが、活火山といわれる山は地熱があるため比較的暖かい。そのため雪が積もっても早く溶けてしまうのは仕方がないのだが、今年は例年よりも溶けるのが早かった。降雪量は例年より気持ち多かったのに、だ。

「あの地震のあと、小さい噴火も多いよね。火山活動が活発になったのかなぁ」

 あの地震、というのは昨年に拓真が起こした地震のことだ。

「すまない」

「あ、そっそういう意味ではないですからっ」

 謝ってきた拓真にほのかが焦って弁解する。


 実際に地震の際、火の領では小さな噴火があった。しかしマグマが流れ出すほどではなかった。最近も煙や細かい噴石が出たりする程度。被害といえる被害はない。ただ、その回数が多い、というだけだ。

「ガスや噴石と、大きな噴火があったときの対処は考えておく必要がありそうですね、紅葉(くれは)

「わかっている。今取り組んでいるところだ。ただ、歓迎準備もあって進捗がどうしても遅くなってしまう」

「僕も手伝いますよ」

「さんきゅ」

 一水(かずみ)の申し出を受け、紅葉は嬉しそうだ。

「自分にもなにかさせてくれ。原因は自分にある」

「私もお手伝いします。ガスや噴煙の対策ならお役に立てるはずです」

 拓真とさらも加わる。

 結果、自然災害への対策ということで、生徒会として噴火への対策が練られることとなった。執行部員も加われば、対策方法が決まった後の行動はある程度任せることができ、人数が増えればひとりの負担する仕事が減る。


「そういえば、最近は四大元素のバランスが“火”に傾いてるということはありませんか? 火山活動が活発なのも、それが原因とか……」

 弦矢が心配そうに口を開く。

「今年の講義が始まって、力の割合が光の感覚だと火の領が一番強いように見えるのですが……」

 どう思われますか、と自信なさそうに他のメンバーの顔色を弦矢は窺う。

「たしかに最近は調子がいいかも」

「制御できないほどではないが、他の火の領生もここのところは力強いエネルギーを発しているな」

 そっちはどうだ、と紅葉は一水と樹に目を向ける。

「僕はあまり変化は感じていません。他の水の領生の様子を観察してみましょう。樹?」

「あの、自分は、どちらかといえば、最近は火の力のほうが出がいい気がしてます」

 複能力者である樹は、水と火の二つの属性を持つ。

「そういえば、ほのかの誘拐事件のときも、平衡が崩れていましたね。……少し、気を付けた方がいいかもしれません」

 全員の表情が、一水の言葉にきゅっと引き締まる。

 気を付けるのは、“影”の動向だ。数か月これといった事件もなく、気が緩みかけていたが、そろそろ、という可能性も否定できない。

「弦矢君、不審な気を視たら、すぐに知らせてください」

「承知いたしました!」

 さらの指示に弦矢は大きく頷いた。


 一水の心の中は、不安ではなく、決意、覚悟に満ちていた。火の領でなにかあったときは、自分の力をもって、大切な人を護る、と。

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