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夕日は瞳の奥に  作者: ぬりえ
第八章
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九、

「さらさんは気付いていらしたのですか?!」

「ええ。といっても樹さんの気持ちを聞く直前ですけど」

 さらはまだ笑いがおさまらず、くすくすと笑っているが、覗き見していた六人は居心地悪そうにだんまりだ。ただ、一水(かずみ)だけは王子の笑みのまま。

「でも、樹さんの言葉を聞きたい欲求に勝てず、そのままにしてしまいました。私も共犯です。ごめんなさいね」

 樹の周りの冷めきった温度が、少し上昇する。

 こんなふうに言われてしまえば、こいつらをあまり責めることはできない。

「敏感な樹さんが弦矢さんの魔力に気付かないほど真剣に向き合ってくれたことが、私にはとてつもなく嬉しいです」

「……」

 もうだめだ、怒れない。

「とりあえず、経緯を聞かせていただいてもよろしいですかね」

 責めるのは止め、盗み聞きまでの経緯を聞こうと、六人のほうへじっとりとした視線を向ける。

 聞いてみるとこの六人は、樹とさらの関係を知っていた。正確にいえば、恋人になったことを推測していた、ということだった。

 もともと樹がさらに想いを寄せているのは数人には知っていたことだった。さらが樹を意識していることも、気付いていたらしい。

 昨夜、会場を出て再び戻ってきたさらは、どこか落ち着かない様子で、男性からのダンスの誘いもなにかしらの理由をつけてすべて断っていた。落ち着かない、というのは、そわそわしているというよりも、もじもじとして、幸せいっぱいなのを隠しているようだったらしい。

 しかも、会場を出たのが樹の休憩時間で、警備隊員や学生に水の領へ向かうところを見られていれば、最近の二人の距離が縮まっていたことを知るメンバーたちには、何があったのか容易に想像できるというものである。

 樹といえば、休憩後のパトロールは難なくこなしてはいたがどこか上の空で、今朝の講義に遅刻してきたことを知れば、想像も確信へと変わる。

 樹の性格をよく知る一水は、樹が生徒会室に早く赴くことを考え、また、偶然さらが生徒会室に向かうのを見かけたほのかはぴんときて、紅葉(くれは)と弦矢を捕まえて生徒会室へやってきた。拓真とフジも思うところがあったようで、早めに生徒会室に向かったそうだ。

 冷やかしと好奇心、一種の心配と、早く来た理由はそれぞれだ。


 生徒会室の扉は厚い。重要事項の会議も行われることがあるためだ。防音対策も徹底されている。そのため、扉に耳をくっつけてみたところで声は聞こえてこない。室内に二人がいるのはわかっているのに、状況はわからない。

 そこでほのかが弦矢に、光の屈折を利用して室内の盗撮を願った。紅葉は映像だけでは足りないため、空気の操作による盗聴までも要求した。

 盗撮はさすがに二人に悪いと、弦矢は盗聴のみを引き受けた。この時点で誰も止める者がいないというのが腹ただしいところだ。プライバシーという言葉をこいつらは知らないのか。ただ、この生徒会室から音を引き出せる弦矢の技術は称賛に値する。

 とにかく、盗聴に成功したのはちょうど樹がさらに告白しているときだった。六人にとっては絶妙のタイミングだったのだろう。さらも了承し、二人が無事に恋仲となったところで、音は途切れる。それぞれ好き放題に室内の状況を想像していたことだろう。

 樹とさらが付き合うことがわかったとき、六人は喜んだ。それについては、ひそかに恋を応援してくれていたのがわかるし、嬉しいことでもあるのだが、盗み聞きとは趣味が悪い。

 せっかく幸せに浸っていた時間を台無しにされたうえ、告白を盗聴されるという公開処刑にあった樹が不機嫌になるのは当然というものだ。

「まあ、皆さんが私たちのことを知っているのなら、ここでは周囲の目を気にしなくていいのですし、気持ちは楽になりますから」

 そんなにむすっとしないで、となだめられてしまう。


 たしかにそのとおりだ。このメンバー内であれば、先輩後輩を装うことなく恋人として一緒にいられる。美人で優しくて力も大きいさらは、性別問わず憧れの的である。樹と付き合っていると知れれば情報は一気に広がり、樹は好奇や嫉妬の目にさらされることになる。

 さらは、学内で自分がどのように見られているのか、理解している。樹に気を遣ってくれているのだ。

 追加すると、泉でふたりになったとき、さらは空気を操ってふたりでいるところを見えないようにしていたという。

「外部に触れ回るようなことをしたら、ただじゃおきませんからね」

 脅しの言葉ではあるが、このメンバーに対して実質その効果はない。しかし脅しを投げつけることで、樹はとりあえず六人を赦すことにする。

 さらがにっこりと微笑んだ。

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