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夕日は瞳の奥に  作者: ぬりえ
第八章
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七、

 目が覚めると、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。

 ここは寮のベッドの上で、今日は式典の次の日で……。

「っていうか、もう朝?!」

 いつの間に眠ってしまったのだろう。


 時計を見ると、すぐに一限が始まる時間だ。

 式典は夜遅くまで続くが、次の日の講義は通常通り行われる。残念なことに、樹には一限の講義があった。

 すぐに身支度を整える。顔を洗いながら、昨夜のことを思い出す。

 かぁーっと顔が熱くなり、鏡を見なくても自分の顔がどうなっているのかわかる。

「俺、さらさんと……」

 濡れたままの手で目をおさえる。夢じゃない、現実だ。あのときの光景がまぶたの裏で繰り返される。

「両想いって……、ことだよな?」


 あの後のことは、正直よく覚えていない。会場に戻るさらを見送り、最後の任務のパトロールを終えて、多分寮に戻ってきたのだ……と思う。

 警備隊員としての任務は、無意識にでもきっちり行っていたことを祈る。

 やっぱり夢か? いや、さらの唇に自分のそれを重ねた感触は、しっかり残っている。もらったマフィンよりも甘く、やわらかかった。

 もう一度、昨夜のことを思い出す。部屋の中をうろうろしながら、一つひとつの言動を。


 そして、気付く。

「俺、さらさんに好きだって、伝えてないじゃん!」

 お傍にいさせて、としか言ってない。

 でも、でも、してしまった……。自分の気持ちは本物だが、さらの気持ちは確かめたい。どうすればいいのだろう。

「うわぁぁああああ」

 その場にうずくまって頭を抱える。


 結局樹は、一限に遅刻したのだった。

 途中から参加した講義も、その内容はほとんど頭に入ってこない。さらに付き合ってほしいと告白する手段を考えているからだ。他人から見れば、真剣に受講する真面目な学生という評価がもらえそうなほど真剣に考えていた。

 昼休みに、碧のところでアドバイスをもらおうかと考えた。碧は昼休みには療養室で過ごしていることが多い。一水(かずみ)のようにいじられずに、親身になって話を聞いてくれるだろうと思ったのだ。

 しかし、よく考えれば今日の放課後はガーディアンズの集会がある。式典での業務報告のためだ。たしか、碧も参加すると聞いている。昨夜のこともあるのに、女性のもとへ一人で訪れるのも気が引ける。ここは少し我慢して、放課後まで待って相談するか、とも考えた。

 あれ、でも集会があるってことは……。

 さらさんもいるじゃん!

 早めに呼び出して、自分の気持ちを伝えようか。いや、呼び出す事すら今の自分には難しい。

 さんざん悩んだ挙句、最終的に、集会後にどうにかうまく、話をするきっかけを作ることに決めた。方法は決めていない。ぶっつけ本番で捕まえる。集会での報告は、さらの存在があっても事務的にできる気がする。


 樹は、自分に風の属性がないため気の言伝を使えず、さらをこっそり誘い出すことができないことをもどかしく思った。複能力者であることを自分で好ましく思っていない樹だが、今日だけは、水の魔法だけでなく風の魔法も使いたい、と思ってしまった。

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