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夕日は瞳の奥に  作者: ぬりえ
第五章
23/163

二、

 さて、今日はガーディアンズの会議の日。淵園以外の八人は、生徒会室に集まっている。

 ちなみに“ガーディアンズ”というのは、“影”対策に取り組むメンバー九人のチーム名である。ほのかが名前を付けようと言い出し、討伐隊やら騎士団やらいくつか案が挙がったなかで、“護る”こと第一ということで、“護衛隊(ガーディアンズ)”というこの名前に落ち着いた。

 樹としてはこの横文字はなんだかむずかゆいのだが、呼称があるのは便利なので、他に案もないからよしとしている。今のところ護るべき対象は学内の者に限られている。学外、一般の人に危害が及ぶ前に、“影”を止めよう、というのが目標だ。


 これまでにも会議は何度か行われている。会議室ではなく生徒会室で行われているのは、遮音や警備が他の部屋よりも強いからだ。

 だいたい一週間に一回のスパンで、メンバーの都合を考えながら日程を決め、近況報告などを行う。淵園は本業を優先するため、たまにしか顔を出さない。そのため、報告事項がある場合は、内容をまとめて書類として渡している。淵園からの報告は、メンバーが彼女に会ったときにちょこちょこ聞いているのを会議の場で共有している。


 学内の警備を強化してから数週間経過したが、特に異変は感じられない。あえていうならば、警備強化のおかげで学内のもめごとが減ったこと、あとは“影”の噂が広まったことで人気のないところや遅い時間帯の外出者が減ったことくらいだろうか。誘拐事件から二か月ほど経っているため、“影”の噂も下火になってきているが、正体のわからないものの存在は恐怖心を煽る。まだその存在が学生の記憶から消えたわけではない。


 いつもどおりに会議が始まり、それぞれが報告をしていく。手掛かりになりそうな動きはみられない。“影”もこちらの動向をうかがっているのだろうか。

 樹も報告をする。水の領では異常なし。次に風の領の件。淵園が言っていた、草原地帯の植物と妖精の件だ。

「妖精の姿がなく、植物の元気がないのですか……。最近は空中浮遊の指導で忙しく、目が届いていませんでした。申し訳ありません。そんなにひどいのですか?」

「去年の今頃は秋空に緑が映えて風に揺られていたのを覚えていますが、今年は明らかに萎れています」

 長なのに異変に気付かなかったことに、さらが萎れてしまった。先にさらに元気になってほしいと思いながら、状況を伝える。


 数日前に淵園にその話を聞き、次の日も気になって風の領に足を運んでみた。植物はさらに元気を失って、枯れかけて茶色く見える部分さえあった。まるで何かに生気を奪われているかのようだ。

「日に日に状況が悪くなっているように思います」

 岩場地帯に植物はほとんどないので気付きにくいが、森林地帯には大きな異変は見られない。草原地帯だけに異変があるのも引っかかる。

「ほのかさんの事件の前、淵園さんは水の妖精の様子が変だったとおっしゃっていましたね。妖精たちが何らかの危険を察知して姿を消しているとしたら、風の領での警戒を強めた方がいいでしょう。樹、お前は今後風の領の担当を増やすぞ」

 はい、と一水(かずみ)に返事する。さらは不安そうな顔つきをしている。その不安を、自分が警備にあたることで少しでもやわらげたい。さらを、さらの領を、学生を、傷つけるわけにはいかない。

「私も、指導を行いながら領全体に目を向けるように心がけます」

「ぼくも、さらさまを全力でサポートします!」

 弦矢も意気込む。


 他の領の警備は今までどおり、風の領だけ警備をより強化する。現時点では、“影”が何か仕掛けてくるとは言い切れない。全体の警備をあからさまに強化すれば、学生の不安を煽ってしまう。

 だが、小さな異変に気付くことで回避できることがあるかもしれない。自然の変化は“影”に関係があると、樹はこっそり思っている。誘拐事件のときも四大元素の平衡が崩れており、それは人魚とメローの戦いが起こる寸前だった。

 もしも“影”の計画が達成されていたら……。そう考えるだけでぞっとする。あのとき淵園から話を聞いていてよかった、と今さらながらに思う。


 会議が終わり、外へ出るとざわっと風が吹いた。日も暮れてきて、昼間より冷たく感じる。

 きっと大丈夫。風は、自分たちの味方をしてくれる。

 風は樹の気持ちを励ますように、後ろから前へ、さぁっと走って行った。

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