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夕日は瞳の奥に  作者: ぬりえ
第十五章
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三、

「なにがあった?!」

 拓真がどなる。これでも抑えているのだろうが、地面が揺れていると錯覚するほどの勢いだ。

「わ……わかりません」

 樹も混乱していたのだが、どうにか声を絞り出して答える。本当に、わからないのだ。

「樹、なぜおまえは無事なんだ」

 三つの石像を見つめたまま一水(かずみ)が問う。

「……わかりません」

 それが答えだ。

 後方から弦矢の警告のメッセージが来て振り返ったら、今度はさっきまで進んでいた方向に違和感と光を感じ、また振り返ると同時に叫び声が響いた。気づいたときには三人が石像として冷たく固まっていた。

「もう……なくなってる。なんで」

 茫然と立ち尽くしながら、碧がこぼす。

「なくなってるとは、なにがだ? なにかここにいたのか?!」

 拓真が碧に詰め寄る。そのものすごい形相に、碧がびくりと肩を震わせた。

「こちらの辺りから、こことは別の気配を、感じたんです。こっちに引き込まれてる、なにか別の……。でも、消えてしまって」

 碧の言っている意味は誰にもわからなかった。わかったのは、碧がなにかを感じ取ってここまで走ってきた、ということだけ。

 そう、一人で。


 まずいことになったな、と一水は思っていた。これでは、学生たちの想像していることを裏付けることになってしまう。

 一水の目に映るのは、同じ方向を向いて、恐怖の表情のまま固まった三人の石像。

 ひとりは尻もちをつき、ひとりは魔法を使おうとしたのか手を持ち上げたまま、ひとりは護身用に身に着けていた剣を構えた状態。

 そして、苦渋の表情で拳を握り締めている拓真。そんな拓真を見て固まってしまっている弦矢に、困惑して自分以外からの情報を受け付けなくなっている碧。そのふたりを支えるように落ち着かせようと努める樹。あとは状況を冷静に分析している自分。

 最悪な事態に陥ってしまった。それはここにいる全員が感じているだろう。だが、この最悪がどこまで最悪なのかを理解しているのは、現状を分析している一水だけだった。


 その夜のうちは、大事にしないためにこっそりと、最初のひとりの石像が横たわる特別室に三人を運び込んだ。特別室には残りの守護神メンバーが集まって、運び込まれてくる新たな学生を見て沈んだ顔をしている。

 その日、守護神は石像になった三体と、特別室で夜を明かした。それぞれ、胸の内にもんもんとしたものを抱えたまま。

 月のない夜に瞬く星は、学生のことなど、ちっぽけな人間のことなどまったく気にかけずに、自己主張を続けている。それがやけにざわざわして、気持ちを乱してくる。

 樹は光を断ち切ろうとカーテンを掴み、がっと音を立てて閉めた。

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