解放された女性達は
9「解放された女性達は」
俺は男達を倒した後、部屋から出てきた女性に連れられて部屋の中に来ていた
しかしなんだろうこの圧迫感・・・
先程の野郎どもに囲まれている以上の圧を感じる
「そ、それであなたは悪い人・・・ですか?」
先ほどの女性が怯えながらも問いかける
うむ、ここで「はい、悪人です」っていうのも面白そうではあるが、今日は疲れたし早く寝たいなぁ
真剣な少女達には悪いが今の俺はすごい眠い
なのでテキトウに説得して家に帰って貰おう
俺はそう思い善人ぶった演技を開始する
「いや、俺はやつらを倒しに来たんだ
町で女の子を攫おうとしてたからさ、それを倒して後を追ったらここに辿り着いたというわけだ」
すると少女達はざわざわしだして顔を見合わせる
玄関に縛られた野郎どもを確認した少女達が「本当かもしれない」と呟き、彼女達の目に微かな希望の光が灯る
「じゃ、じゃあわたし達はどうなるんですか?」
「お家に帰れる・・・の?」
我慢できなかった少し幼い少女達が俺に問いかける
うん、これはいい流れだ
このまま上手くやり過ごせばみんな帰ってくれて、俺も眠れるはずだ
乗るしかないこのビッグウェーブに!
「ああ、君たちは帰れるよ
でも、この屋敷には嫌な思いがあるだろうから
帰れる子から帰ったほうがいい
でも、夜も遅いからね夜道に女性1人ってのは危ないだろうから、君たちが良かったらだけど、俺が用心棒として家まで送るよ」
あくまで送るのは警備のものを呼ばせないためだ
ここでそれを呼ばれてしまえば、俺の存在がバレてもしかしたら捕まってしまう
なんならこの屋敷も使えなくなってしまうかもしれない
そうならないためにも、多少面倒ではあるが彼女達、大体20人ほどなので頑張れば数時間で送り届けることが出来るだろう
だがそんな考えを知らない少女達は俺の言葉に歓喜している
飛び上がって喜ぶ子、感動のあまり泣いてしまっている子、事態が読み込めないのかアタフタしている子と様々だ
そして最初に俺に話しかけた少女は、他の子達に意思確認をして、その総意を伝えてくれる
「あの!ありがとうございます!
わたし達を代表して言わせてもらいます
ここに捕まっていた全員に確認したところ、全員家に帰りたいみたいです
お手数でなければですけど、私たちを送ってもらえませんか?
あなたでないとみんな安心出来ないみたいなので」
そうだそうだと言わんばかり、少女達はうんうん頷いている
よしよし、これで目論見通り帰宅してくれるみたいだ
時間がかかったがこれで安心だ
俺は帰宅希望の子達を連れて一人一人の家に訪問して行った
皆の家族の反応は様々だったが、皆俺への感謝とお礼がしたいと申し出てきた
しかし、あまり大ごとになると王様の耳にも伝わる可能性もあると考え、日本人らしく「気持ちだけで結構」だと伝えることにした
ホントはお金と食事が欲しかった(泣)
まあ、なんだかんだで皆に感謝されたし、俺は宿泊出来るしでまあいいかと、帰路に着く頃にはそう思う様になっていた
そして俺は宿泊施設(不法占拠宅)に帰るのであった・・・
しかし彼は気づかなかった
彼のその謙虚に見える行動によって、目立たなくなるどころか、むしろ注目される事になるという事を・・・
なんかこう見たら最初の発言以外、主人公結構まとも?
次話は町の散策です!