ホームをレスってしまった俺は
7「ホームをレスってしまった俺は」
俺は姫様の部屋から逃亡したのちに、城から一番近い城下町に逃げてきていた
「いやー、なんか城を出てからも追っ手が来るかと思ったが全然追ってこなかったな・・・
これはもう大丈夫ってことかな?」
そうして俺は、ポツポツと街灯の灯る町を歩いている訳だが・・・
「全然店空いてねーじゃん・・・」
昼間の様子は確認してないが、今は人もまばらで空いているお店も一つもない
光があるとするなら宿屋らしき場所か、いわゆるそっち系のピンク色の街灯が灯る娼館ぐらいだ
俺の手元には王城でちょろまかしてきた金貨数十枚と銀貨、銅貨少々しか手持ちがないのだ
「泊まろうと思えば泊まる事はできるが・・・
このお金は出来る限り置いておきたいな、出来ればお金のアテが見つかるまではな・・・」
どうしようかなぁ、朝に逃亡すればよかったなぁ
そんなことを考えながら、当て所なく路地裏の近くを歩いていると
「っ!や、やめて!
離して!誰か!誰か助けて!」
突然路地裏から、女性の悲鳴が聞こえてくる
俺は息を殺して様子を見てみると
「へへへ、嬢ちゃん大人しくしな
こんな時間にこんな場所にいるやつなんていやしねーよ」
「そうだぜ、ここの近くにボス達と不法占拠しているアジトだってあるんだぜ?
逃げ出してもすぐ捕まえられるんだから抵抗はやめな」
何やら見るからに悪そうな男たち二人組みが、町の娘であろう少女を二人掛かりで取り押さえている
そして乱暴に両手を後ろ手縛り、引きずるように引っ張っていく
しかし俺は、その光景から目が離せなかった
娘が可哀想? 女に乱暴するなんて許せない?
まあ、どちらも少しは思っていたがそんなことではない
俺は、俺は見つけてしまったのだ
「あいつらの不法占拠してるアジトに泊まれば、宿泊費タダじゃん!」
俺は自分の幸運に感謝しつつ、男たちの元にスタスタと近寄った
俺はヒーローもんの特撮の如く路地裏にバッと入る
「おい!そこの男達何をしている!」
路地裏にいた男達は「何っ!?」と言って勢いよく振り返る
「なっ!?なんだお前は!
どっから出て来やがった!」
「アニキ!こいつ一人だぜ!
二人掛かりでやっちまおうぜ!」
男たちは突然現れた俺に驚いていたが、俺が一人だという事を有利だと思ったのか、背後からカッターナイフほどの刃物を取り出し、俺の方に近づいてくる
「お願い!助けて!」
町娘は必死に俺に助けを求めたが、アニキと呼ばれていた男に押さえられている
まあ、町娘も助かるがそれはあくまでついでだ
目的はこの男たちのアジト、そこを奪って宿泊費を浮かせることがメインだ
不法占拠であれば悪い奴らが住んでようと俺が居ようと関係ないはずだ
夜も更けてきたことだしさっさと終わらせよう
まずは女神さまの力を拳に込めて
「○ァルコン パァーンチ!」
不用意によってきた男の片割れを殴り飛ばす
思いっきりぶん殴りたいって願って殴ったことで、女神パワーが付与され、男は漫画のように路地の端の方まで吹っ飛んでいった
あれま?力加減間違えたか?
俺の目的はアジトにお邪魔するだけで、こいつらを抹殺することではない
どうすっかなぁ、と思いもう一人の町娘を押さえている方に目を向けると
「ひっ!ひぃぃ!!!
や、やめてくれ! 命だけは勘弁してくれ!
こいつは離すから!っな?」
男は震え上がった様子で、投げ捨てるように俺の方に町娘を押し付けてくる
そして、ダッと後ろに翻って逃げていく
アッ!待て!逃げるな!
「おい!待て逃げるんじゃない!」
俺が男を追おうとすると
「あの!ありがとうございます!名も知らぬお方!
この御礼なんと申し上げればいいのか・・・」
町娘は俺の腕を取り、深々と頭を下げながら感謝を伝えてくる
しかし、しかし俺には時間がないのだ!
「ごめん!あいつを追うから後にしてくれ!
あとこんな夜中に女一人で出歩くと危ないぞ!」
俺は吐き捨てるようにそう言って、男の逃げた男を追いかけるべく足早にその場を立ち去った
そして残された町娘は、呆然とした様子でその後ろ姿を見送った
しかし彼は知らなかった、自分がついでに助けた娘がそれがただの町娘ではなく、この町一の資産家トーラス家の一人娘、トーラス=アイナ嬢であったということを・・・
トーラス嬢を助けてしまった主人公を待ち受けるものは?
次話、悪い奴らのアジトに突入!