逃げるんだよぉ〜
5「逃げるんだよぉ〜」
現在俺は逃げている
それはもう脱兎の如く
ていうかマジでウサギにでもなったみたいだ
「女神様のチートの力スゲーなぁ」
俺があの場で兵士たちに槍を向けられた際、とりあえず逃げないとと考えた瞬間
ふわっとした感覚と共に体が小動物になったかのように軽くなった
そして、王の間から脱兎の如く逃げているという訳だ
ドタドタドタ!!!
王の家来達が俺を追う足音と声が聞こえる
まあ、ある意味さっきの行動は王に反逆したも同然だしな
そして、このまま見つかれば下手したら死刑だろう
ていうか俺からしたら、王の為に自由を縛られるというのはある意味死んだのと同じなので捕まりたくはない
「まあ、ここら辺はあんまり人がいないみたいだしな
どこか少しだけ身を潜められる場所はないかな?」
俺は城内を走っていると、廊下の隅に誰も来なさそうな、少し寂れたような部屋の扉を見つけた
「よし、ここなら誰も来なさそうだ」
俺はそう思い、軽く捻って扉を開ける
ギィ
軋むような音と共にドアが開く
すると部屋の中から
「・・・誰?誰かいるの?」
と、か細いながらもはっきりした口調で声が聞こえた
「・・・誰もいませんよ?」
咄嗟に俺は部屋に入り、だんだん目が慣れて存在
を確認した、ベッドに眠る女性にそう答えた
「何を言ってるのかしら?
返事をするって事はいるってことじゃない
あなたは誰かしら?私を狙う暗殺者?」
女性は気怠そうにしながらも起き上がり、諦めにも似た表情を浮かべている
「残念だけど、私はあと少しで命尽きるわ
あなたが殺さなくても、どうせあと少しで尽きる命よ
それでもというならお好きにどうぞ」
女性はそう言って、だらんとベッドに倒れこむ
コンコンコン!
女性は苦しそうに咳き込んでいる
うむ、暗殺者ではないが何故か彼女の表情には不思議と興味が出てくる
まあ、痩せてはいるが綺麗な人だし、見たところ俺の1.2個上のお姉さんだ
親近感も湧くし少しだけ不憫に思える
関係ない話だが、俺は年上好きである
その事から、俺は年上に弱いと言える
そして、妹にも頭が上がらないことから年下にも弱いと言える
結局何が言いたいのかというと
結局全女性に弱いということである
まあ要約すると、俺は彼女を何とかしてあげたい
とりあえずは彼女に興味があるので少しだけでも話をしてみたい
「それじゃあ君に質問だ
君には妹はもしくは姉、あるいは兄弟はいるかな?」
「・・・?
え、ええ私には妹が2人いるけれど・・・」
そう答えた彼女に俺はニヤリと笑い、問いを続ける
「じゃあ、君の病気を君の妹の命と引き換えに直してあげると言ったら君はどうする?
いや、妹さんと君の立場を交換するでもいい
もし俺がそんな力があるなら・・・
そしたら君のことを助けるし見逃してあげてもいいよ?もしそうなら君はどうする?」
意地悪な質問だと思うが、彼女がどのように考えどう答えるのかに俺は興味があった
すると彼女は最初は何を言ってるんだ?という顔
をしたが、俺の顔があまりに真剣なので真面目に考えたようだ
そして少し俯き考えるそぶりをして、再び顔を上げた
だが、彼女の瞳からは言葉よりも先に大粒の涙がポロポロ溢れる
そして彼女の答えは・・・
「勿論決まってるじゃない・・・
妹の命・・・、価値のない私じゃなくて妹の命に決まってるじゃない・・・」
彼女は 涙を流しながらも力強い口調で答えた
そして今も強い瞳で俺の事を見ている
だが、その瞳からは涙が溢れたままだ
なるほど、期待以上の女だなこの子は
「そうか・・・
君がただ妹を生かす選択をしただけであれば、俺はどうでもよくなったが
君の涙を見て考えが変わった
本当はもっと生きていたいと願いながらも本心を言えない君が見えたからな」
俺はそう言いつつ、彼女の側に歩み寄り彼女に向けて手を構える
「俺は勇者じゃないが・・・」
「なっ、何を!?」
俺は彼女に向けて手を構え、全力で持てる限り全ての力を使って彼女が元気になるように願う
ピカッ!
するとその願いに応えるように手のひらから溢れんばかりの光が発生する
「うっ!?」
彼女が呻いたと同時に
バタバタバタ!
扉な外から兵士のものと思われる足音がこちらに近づいてくる
ドンドン!
「姫さま!大丈夫ですか姫さま!
今部屋から何やら不思議光が!
逃亡者もまだ見つかっておりませんので、安全のために入らせていただきますよ!」
恐らく先ほどの光が漏れたのだろう、不審に思った兵士がここに辿り着いたみたいだ
ヤバイ!
色々と時間がないので俺は
「俺の本当の名前は小鳥遊 空羅だ!
俺はもう行くぜ可愛いお姫様!
また、この国に来ることがあれば会えることもあるかもしれない・・・じゃあな!」
俺はそんな捨てゼリフと共に、空いていた窓からスルリと飛び出し、身軽になった体を使って夜の街に向かって走り去るのだった・・・
次は姫様のその後を書きたいかも