第九話 虎神の祠
「・・・もう、どれくらい歩いてるのかな・・・」
「さぁ・・ざっと二時間くらいじゃないか?」
「そ、そんなに・・ねぇ、カイト。休憩しない?」
「・・・・・」
・・カタ・・カタ・・カタ、カタ・・・
「カイト?」
向こうから馬車の音がする・・・
「・・人が来るぞ」
「え?」
ガタ、ガタ、ガタガタ、ガタガタガタ・・・
「・・・来た」
「・・ん?あ!そこどいて!」
「うわっ!」
ざざーーーーーッ!
「・・ふぅ・・大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です。それより、お聞きしたいことがあるんですが・・・」
「うん、いいよ。あんまり急いでないし」
「ではお聞きしますが、この近くに虎神の洞窟という場所はありますか?」
「虎神の洞窟?うーん・・聞いたこと無いなぁ・・・」
・・無いか・・・
「洞窟は聞いたこと無いけど・・・それって虎神の平原の事かな」
「虎神の・・平原?」
「うん。ここから西にずっと行った所に雷神様が祀ってある虎神の平原があるんだ」
西・・東西南北・・自然・・神・・・!
思い出した!
「もしかしてそこの事?」
「あ、はい。そうです。ありがとうございました」
「お役に立てて何よりだよ。気をつけてね」
「はい」
ガタガタガタガタガタ・・・
「さて、行くぞ」
「ちょ、ちょっと待って」
「ん?どうした?二人とも」
「ここんところ歩きっぱなしで疲れて・・休憩しようよ」
「・・・そうだな。明日は第二の決戦の時だ」
「火魔法」
ぼッ
パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ・・・
「・・バルト、お前はゆっくり休めよ。明日に備えて」
「あ、あぁ・・・・?」
「じゃあ俺は食料とってくらぁ」
「いってらっしゃい」
「動物魔法・ペリカン」
バサッ、バサッ、バサッ、バサッ、バサッ・・・
「じゃあ私も何か採って来るね」
「俺も手伝うよ」
「ううん。バルト君は火が消えないようにしといて。じゃあね」
「あ、あぁ・・・」
「・・・ふぅ、食った食った・・じゃ、おやすみ」
「うん、おやすみ」
「バルトも早く寝ろよ」
「あぁ・・・おやすみ・・・」
次の日
「さてと、出発するか」
「な、なぁ、昨日から俺、すげぇ休んでるような気がするし・・何、今日に備えてって」
「それはもうすぐわかる」
「???」
「・・ここか」
虎神の平原、か
てか何で立て看板なんだ・・・
「・・えーと・・・・」
「何探してるんだ?」
「ん?ちょっと祠を・・・お、あれか」
「・・うん、そうだね。行こう」
この平原は草が黄色になっていてまるで黄色い草原の海にいるみたいだ
「雲行きが怪しいな・・・」
「うん。今にも雨が降り出しそう」
「まだ大丈夫だよ。これくらいじゃまだな」
・・そうかな・・・
何かいやな予感がするような・・・
「・・虎神の石は龍神のそれとは違うね」
「あぁ。話で聞いた青龍の石は青色の石だったけどこれは黄色だな」
そう、青龍の石は澄んだ青色でした
しかし白虎の石は眩い黄色です
「やっぱりな」
「え?どういう事?」
「昔ばぁちゃんに聞いたことがあるんだよ。五神の話を」
カイトは彼のおばあさんから聞いた話を話し始めた
昔から東西南北、各方角に四神と呼ばれし四人の神がいる
そしてその四人をまとめる神、五神がいる
彼らはみな、それぞれ自然の神でもある
北の神は大地の神、南の神は炎の神、東の神は水の神、西の神は雷の神、そして五神は大空と風の神
彼らはこれを崩さず天気などを操り人間とともに歩んできた
しかし人間はその道をはずれ神の存在を忘れていった
忘れられた神々はその世界からいなくなりその日から雨は降らず風も吹かず日に照らされ無い、夜の世界となった
人々は困り再び神を祀った
神々は人々を許した
火を照らしそして雨を降らせた
そしてこれからも神の存在を伝えるために神々に名をつけその神々の絵とともにみなに伝えた
彼らを祀った神社や祠は無なくなってしまったが今もどこかで我々人間の事を見ているだろう
「って感じの話だった」
「・・青龍たちは世代ごとに語り継がれて来たんだね」
「それを思い出して白虎、つまり雷神の継承者はバルト、お前だと思ったんだ」
「何で俺なんだよ」
「この中で雷を扱うのはお前だけだ。現にレイは水神の継承者として選ばれた」
「・・・確かにこの中では俺しか雷魔法を使えない。だが他にも雷魔法を使うやつはいるだろ?」
・・・そう言われれば・・・
「でも四神はきっとそれぞれの魔法使いと戦い自分より強い者に力を託すんだと思う」
「なるほど」
「じゃあ準備はいいか?」
「あぁ」
「っとその前に・・・」
カイトはバルトが手に持っていた武器を取り上げた
「あ!何すんだ!」
「レイは武器無しで青龍に立ち向かった。だからみなそうする」
「だからって・・・」
バルトが話している間にカイトは白虎の石を取った
『・・・・お前ら何者だ!』
「俺は戒人。こっちはレイでこっちはバルト。お前の勾玉をもらいたい」
『俺の勾玉を?なぜだ』
「この世界は闇の継承者によって崩壊してしまう。その前にそいつを次元の扉の向こうへ追い出すためだ」
『・・・なるほど、話はわかった。では俺の継承者はどこだ』
「このバルトがそうだ」
白虎はバルトの足から頭までを見た
『・・お前雷を扱う者か』
「あぁ」
『・・・・いいだろう。では、勝負だ!青龍!』
「青龍!?」
『わかっている』
すると突然雨が降り出した
「・・なるほど・・雷は雨が降っている時こそ最大の力を発揮する」
「この戦いに合う環境を作ったのね」
『そうだ。では行くぞ!』
「へっ!望むところ・・」
ゴロゴロ・・・
「だ?」
『雷落し!』
ドーーーーーーーーン!
爆発音と共に一筋の雷がバルトに落ちた
「ガーーーーーッ!!」
「バルト君!」
「行くな!これは試験なんだ」
「・・・ぅ・・・」
バルト、ごめん・・がんばれよ・・・
「ッッ!・・ちっ!不意打ちとは卑怯だな」
『戦いとはいつ始まるかわからないものだ。出会ってすぐに攻撃される事もある。俺やお前の使う雷は攻撃で早打ちが出来る。それを先に読み攻撃を避け反撃をする。それが雷の戦闘法だ』
「・・なるほどな・・・教えてくれてサンキュー!」
『しかしわかったところで俺の雷を避けられるかな。雷落し×10!』
「へっ!そんな物!」
ド、ド、ド、ド、ド、ド、ド、ド、ドーーーーーーーン!
「一回喰らえば・・・」
ドーーーーーーーン!
「避けられる!雷・・ぐはッ!」
「バルト!」
「ぐッ・・・今のは・・・」
『雷動物だ。五体いるぞ。さて、どう対処する?』
・・雷で出来た動物、バイソン、サイ、ゾウ、ヒグマ、ライオン
どいつも力に関してはやばいやつらばっかりじゃねぇか・・・
こいつは一気に倒さないと体力が持たないぞ
どうする?バルト
「・・へ、へへっ・・なら・・一発で、みんな倒しゃいいんだろ」
『・・・どうする気だ』
「・・・雷魔法・充電」
『む?』
「チャ、チャージって・・・」
「・・そうか。雷を体に溜め込んで一気に放出する気だ」
ん?放出?
・・・って事は・・・!!
「やばい!レイ!つかまれ!」
「え?なん・・・」
「いいから早く!恐竜魔法・プテラ!」
「カイ・・わっ!」
「そして放電!」
バチッ・・・
バヂバヂバヂバヂバヂッ!!!
白虎の作り出した雷動物その一撃ですべて消えた
「・・あっぶねぇ・・・」
「え・・え!?」
「溜め込んだ雷を放出するって事はバルトを中心にして周り全域に雷が走るって事だ」
「う、うん」
「いまだにあそこにいたら俺たちまでそれを喰らって御陀仏だったぞ」
強力は電気ほど体を通ると中から焼けちまう・・・
「じゃ、じゃあカイトが気付かなかったら今頃・・・よかったぁ・・・」
「あぁ、何とかセーフだ。おい、バルト!危ねぇじゃねぇか!」
「ん?あ、わりぃわりぃ!」
『(な、なんという威力だ・・五体もの雷動物を一気に消し去るとは・・・)』
「さてと・・そろそろ決着つけようか」
『ふん、俺に勝てるとでも?』
「あぁ、思ってるさ!雷魔法・雷玉!」
バチッ、バチバチッ!
バルトの掌に雷が集まっていきそれは雷の玉となった
『ふっ、ふははははは!何だそれは!遊んでるつもりか!!』
「・・いやこれで、いい!」
そう言い切ったバルトは玉を思いっきり投げた
『・・ふん、そんな物、すぐ避け・・がはッ!』
「知らないのか?そいつは一度投げれば2、3秒で音速になる。そして一度でも敵に当たればスピードは光の速度、つまり光速にまではね上がる。さらにそのボールは・・・」
『がッ!ぐふッ!はがッ!・・・』
「一度当たった敵が倒れるまでそいつを追い、そして殴り続ける」
『ぐッ!・・ならば・・・電気光線!』
ビリビリビリビリビリッ!
・・・ビームって・・・
それは雷の玉に当たり
バヂバヂバヂバヂバヂ・・・・バヂッ!!
相殺した
「・・なかなかやるなそいつを相殺するとは・・だが、そいつのおかげでたっぷり充電出来たぜ」
『何!?』
「喰らえ!俺の最強の魔法!フルパワーの雷虎!」
『ふっ、いいだろう!うけてやる!お前のフルパワーを!』
「いっけーーーーーーッ!!」
『・・ぅ・・ぐ・・ぐぁ・・ぐあーーーーーーーッ!』
その時、目の前が一瞬光に包まれた
「う・・・バルト、君?やったの?」
「バルト・・バルト!」
バルトはふらふらではあったがしっかりと立っていた
しかし急に脚の力が抜けたように膝をついた
「・・俺は、勝った、のか?」
「・・きっと、な」
「・・・青龍、どうなの?」
『・・うむ、お主の勝利だ。バルトよ』
『あぁ。俺の負けだ。バルト、お前に俺の力を託そう』
白虎は青龍と同じように勾玉になった
「これで二つ目だね」
「あぁ、あとは朱雀、玄武、黄龍の三つの勾玉だったな」
「よっしゃ。行こうぜ、次の町へ」
「うん!」
「あぁ!」
第九話 終わり