残念な子。
「ふー、お腹すいたー」
「あー腹減ったー」
昼になり腹が減った俺たちは特訓を中断し1階に戻ってきた。
肉だ、昼は肉を食おう。なにが良いかな? 鳥に豚に牛。色々あるな、迷ってしまう。
「そうだハルキ、汗かいたし浄化お願い」
「あいよ、ほら『浄化』」
「はーさっぱりするわ。ありがとうハルキ」
「おう、どういたしまして。所でリザは何食べる?」
「そうね、まだ決まってないけどハルキは?」
「俺もまだだが、とりあえず肉が食いたい」
「お肉ねーお肉も良いわねー」
席に着き2人で肉肉言い始めた。もう俺たちの頭の中は肉でいっぱいだ。メニューの肉料理を2人で吟味中、聞き覚えのある声が俺を呼ぶのに顔を上げた。
「こんにちはハルキさん、昨日助けて頂いたロイです」
「おー昨日のロイ君。リザ、さっき言った昨日ダンジョンで助けたロイ君だ」
「あーさっき言ってた剣の修行の発端になったロイ君ね。おかげでハルキが剣の特訓を早速始めたわ、ありがとう。」
「早速始められたんですね、行動が早くてすごいなぁ。って! なんでハルキさん、リザさんと一緒に居るんですか!?」
ロイくんがやたらと驚いている。はて?
「あれ? リザ。ロイ君と知り合い?」
「え? 今日初対面のはずだけど? どこかで会ったかしら?」
「あ、いや、すみません。リザさんは強くて有名なので一方的に知っていただけです」
「あーなるほど。っで、あちらでこちらを見ている2人はロイ君の知り合いか何かか?」
ロイ君と話し始めてから少し離れた場所にいる少年少女の2人がこっちをじっと見ていた。たぶん昨日言ってたロイ君のパーティーメンバーだろう。俺が話題を振ると、ようやくかと言った具合にこちらにやってきた。
「初めましてロイの幼馴染でパーティーメンバーのロイドです」
「同じくリリィといいます。昨日はロイが危ないところを助けて頂きありがとうございます」
「おい、ロイ。何がまず自分がお礼を言ってから呼ぶから待ってて、だ!。結局呼ばずにハルキさんが気を使ってくださったじゃないか!」
「そうよ。待ってたのに全然呼んでくれないんだもの。酷いわ」
いつまでも呼んでくれなかったロイ君に、幼馴染の2人は非難を浴びせている。
「ごめんね、2人とも許して。では改めまして昨日は助けて頂き有難うございます。本日は早速お礼にやってきました。こちらの2人は同じパーティーメンバーで幼馴染のロイドとリリィです」
「それさっき俺たちが言ったぞロイ」
「そうね、ロイがぐずぐずしてるから」
「うー、ごめんよー」
なるほど、基本ロイド君とリリィちゃんに弄られるロイ君という関係なんだな。
「いや、たまたま通りかかっただけだから、お礼なんて別に気にしなくていいんだが」
「そういうわけにはいきませんよ。命の恩人にお礼をしなかったとあれば末代までの恥。ちゃんとお礼させてください」
「そうですよハルキさん。幼馴染の命の恩人にお礼をさせてください」
「ロイの恩人にお礼をするのは当たり前」
「んーでもなぁ……」
いや本当に偶然だしなぁ。どう断ろう?
「良いじゃないハルキ、お礼ぐらい減るもんじゃないし、素直に受け取っておきなさいよ。それでロイ君たちも満足するのよ?」
「んーそんなもんか?」
「はい、ハルキさん是非お礼させてください。と言っても僕たちパーティーそんなに裕福でもないんでご飯奢るくらいしかできないんですけどね。今からお昼ですよね? どうですか?」
「いや……あの……」
リザの一言でまぁいいかと思い始めていたら、ありていにお金ないけどお礼に奢らせてくださいと言っているロイ君に、俺は二の句が出ないでいた。
見ればリザもちょっと顔が引き攣っている。
「馬鹿かお前は! お金が無いと言って誰がそんな相手に奢らせようとする! 正直にもほどがあるぞ!?」
「はぁ……そこは、助けてもらったお礼に今日のお昼は私たちが奢りますから好きなの頼んでください。が正解よ。なにお金がないってぶっちゃけてるのよ、呆れるわね。馬鹿なの?」
ロイド君とリリィちゃんが、黙っていた俺に代わって突っ込んでくれている。ロイ君残念な子なの?
「んあぁぁぁぁ! 僕はどうすれば!?」
「ん、もうお礼とか良いからとりあえず食べようぜ。此処は俺が奢るよ。お礼はあるとき払いで良いから」
「そうね、私もお腹が空いてるしそろそろ食べたいわ」
俺の提案にリザも乗っかってくれた。2人もお腹ペコペコなのだ。
「「はぁ……うちのロイがほんとすいません」」
「気にしなくて良いから好きなの頼んで。若いんだからたんと食べなさい」
「ハルキ、お母さんみたくなってるわよ……」
気分は既に保護者だ。
叫んでいるロイ君ほっときながら大きいテーブル席に移動して色々注文した。俺はカツサンドのセットとソーセージの盛り合わせに、リザは鶏肉のソテーにトマトソースのセット。ロイド君とリリィちゃんは遠慮がちに1番安いメニューを頼もうとしたので肉か魚かと聞いて、小声でお肉と答えたので一番高いハンバーグのセットを3人分頼んだ。
頼んだメニューが並ぶ頃にはロイ君も復活し、恥ずかしそうに席に着いた。そしてみんなでわいわいと食べ始めた。
「そういえば結局なんでハルキさんはリザさんと一緒に居るんですか?」
「ん? コンビで相棒で相方だからだな」
「いやそれ、みんな同じ意味ですよね? そうじゃなくて、なんでそうなったんですか?」
「あ、それ私も聞きたいです!」
「俺も俺も!」
食べているとロイ君達に俺達の関係の経緯を聞かれた。気になるらしい。
「……成り行きだよな?」
「……成り行きよね?」
俺とリザはお互いに顔を付き合わせて答えた。話せば長いわけではなかったがそれが2人ともに出した自然な答えだった。
「成り行きでリザさんとコンビ組めるなんて実はすごい実力の持ち主何ですねハルキさんは!」
「まぁ大抵の敵は魔法で1発だからねハルキは、実際すごいわよ。剣はあんまりだけど」
「おいおい剣は特訓始めたばかりだろ? もうちょい長い目で見てくれよ?」
「魔法で1発ってそんなに色々な魔法使えるんですか!? すごいです!」
「おいロイも見習って早く沢山魔法覚えろよ!」
「僕だって覚えたいけど魔法って覚えようと思って覚えられるわけじゃないんだし、無理だよ」
「だよなぁー羨ましいぜハルキさん」
ロイ君は何やら俺が多彩な攻撃魔法を操り、いろんな敵を倒せると勘違いしたみたいだ。勝手に話が盛り上がってきているが俺、攻撃魔法メテオしかないからね、ちゃんと訂正しとかないと。
「あんな? 話盛り上がってること悪いんだけど実は俺、攻撃魔法1つしか使えないんだ。ごめんな」
「え? それって昨日使ってたメテオっていう魔法だけですか? ゴブリン倒してた。あの魔法でそんなに倒せるとは思えなかったんですけど?」
「あら、ロイ君はハルキの魔法知ってたのね。でも実際倒してるわよ。なんたって当たれば死ぬ魔法ですもの」
「うっわ! リザさん今そのネタ言いますか!? 恥ずいんですけど!?」
「まぁ実際ほんとのことじゃない。少なくともウルフキングは1発即死だったし自慢していいわよ」
「え? ウルフキングって20階層にいるボスですよね!? それ1発なんですか? 毛が魔力に覆われて魔法が聞きにくいって聞きましたけど?」
え? そうだったの?
「あら、良く知ってるわね.。そうね、少なくとも昔私がファイヤーボールを10発ほどぶち込んでもピンピンしてたわ。でも牽制には有効よ。それに足とかなら至近距離のエアカッターとかの魔法でも十分切れるわ。使える?」
「一応使えますが至近距離となると僕では難しいですね」
「ウルフはそもそも素早いからね、遠くからだと難しいわ。まぁ至近距離って言ったけど実際は1,2メートル位ね」
「それでも今の僕じゃ近づくだけで死にますね。ハルキさんのメテオってすごかったんですね。地味だなって思ってすいまガッ!!!!」
ロイ君は突如、ロイド君とリリィちゃんに左右から同時に頭を殴られ沈黙した。
「ほんとすいません。お礼に来たはずなのにご飯までご馳走になった上にこんな失礼なことを言ってしまって……」
「ほんと今からダンジョン行ってちょっとコイツ捨ててきます」
「いやいや良いから。俺も自分で地味だとは思ってたし、せっかく助けてあげられたのにそんな事しないであげて」
2人はペコペコ頭を下げ謝りっぱなしだ。年下の子にこうも謝り倒されるの居心地が悪すぎる。そんな俺を見かねてリザが助けてくれる。
「2人とも気にしないで良いわよ、地味なのは本当だしハルキはそんなことで怒ったりもしないわよ」
「おう、俺も気にしてないから」
「はっ! いったい何が……!? 僕は何を!?」
「お前はちょっと黙ってろ!」
「あなたは少し黙ってて!」
「え?、え?」
意識を取り戻し、自分の状況が分かってないロイ君に対し2人は冷たい声を出す。その対応にロイ君は狼狽えはじめた。




