旅立ち。
「メテオです!!」
腰に手を当て胸を張りドヤ顔である。俺は困惑した表情で無言で彼女を見つめかえ返すとすかさず
「メテオです!!!」
「メテオ?」
「です!!!」
やはりドヤ顔である。なにがそこまで嬉しいのかはわからないが、満足顔の満面の笑みで人の死因をそんな顔で言うのである。
正直どんな顔をすればいいか分からなくなる。と思えば、
「笑えばいいと思うよ」
である。あぁなるほどなるほど。
「そうか、そうだったのか!!」
「わかって頂けましたか!」
「あぁ、神様? が残念ということがな。」
「失礼な! 誰が残念ですか誰が! ちょっとジャパニメーションが好きなだけです。あと何で神様が疑問形なんですか!? それに話し方も気安くなってるようなきがするんですけど?」
自称神が抗議してくる。
「自称じゃないです!」
「そうか? 気にすんな。んでさっきからメテオ言ってるけど隕石でいいんだよな?」
「はい、頭上からの隕石による即死です」
「はぁ……隕石って人に落ちるんだな……。それより結局何でここに呼んだんだ?」
「え!? 隕石で死ぬなんてまるで漫画やアニメみたいじゃないですか? そんな面白い死に方するアレでレアな人材をちょっくら異世界に送り込もうかなと思いまして。いかがです? 行ってみたいと思いませんか?」
そんな興奮ぎみに眼をキラキラさせながら、さも夢の中に行くみたいに言わないでくれ。
それにしてもなるほどこのアニメ好きの神様が俺のレアな死因に目を付けた訳だ。隕石で家が壊れたとか聞いたことはあるが、死んだというのは流石に聞いたこと無いな。
だからっていきなり死に方面白かったから異世界に送り込もうとか、この神様興味本位過ぎるだろ? それに何を言ってるんでしょうかねこの神様は。異世界に行ったらドラゴンと狩るんでしょ? んでもってそのうち気が付いたら魔王とか倒しに行かなきゃならないんでしょ?
無理でしょ? 死ぬでしょ? あ、すでに死んでたわ。
「大丈夫です。例によってチート差し上げますし、そもそも魔王いませんしお得ですよ?」
「何がお得だ! 通販か!? それにドラゴンはいるんだな?」
「……」
「おい、いるんだな……? おいなんとか言え」
「……なんとか」
「ちげぇよ!」
思わず突っ込む。そういう意味じゃない。
「ドラゴンが居ない異世界なんて異世界じゃないんですよ!!! 良いですか? よく聞いてください。剣と魔法があったらドラゴンは必須。ドラゴンには知恵と勇気と財宝が詰まってるんです。そういう設定なんです。定番なんです。外せません!」
「お、おう……。ってなに愛と勇気と希望のノリで言ってやがる、ふざけんな!」
「わかって頂けましたか? わかって頂けたなら結構です。さぁ異世界に行きましょうそうしましょう。今すぐ行きましょう!」
「え!? 今のどこに分かり合えたとおもったんだ!?」
「おうって言ったじゃないですか?」
「それは神様の剣幕に思わず出ただけだ!」
「良いじゃないですか? 剣と魔法ですよ? 一度は誰もが憧れるでしょ? 何なら承諾なしで送っても良いんですよ?」
「脅す気か!? 何という神だ!」
「神とは元来己に素直なものなんですよ!」
「胸張って威張るな! 素直すぎだ! よし分かった! いや待て早まるなよ!?」
「はいはいお待ちますよ」
落ち着きを取り戻すべく俺は深く深呼吸を数回繰り返す。
「よし本当に勝手に送られても困るからな、ちゃんと異世界に行ってやる。ただし剣と魔法と言うからにはまず魔法が使いたい。あと生活に不便が無いスキルも欲しい。この2つだ。最低限これらは必須だ。大丈夫か?」
「わかりました。まぁいきなり死なれても困りますからね。その辺はデフォですよね。しかし欲がないですねー。それではその条件をもとに適当にやっておきますね。現地に着いたらステータスと言葉にしてみてください。あと私のおすすめも押し付けておきますね。それではいってらっしゃーい」