其の四 一対多数殲滅式妖刀 五月雨&時雨
「どうしてこうなった……」
それは約3時間前のことだった。
ー3時間前ー
「よいしょっと、おい鈴奈、起きろ」
「ん、ん〜、ここ……どこ?」
「鈴奈の家だバーロー!」
「あ! 家だ! 帰ってきた!」
うるさいなぁ、潰そっかな?
「ねぇねぇ伊月! 入っていいって!」
「え? いや、俺は帰るけど……」
「遠慮しない遠慮しない!」
「やめろォ! 俺を家に帰してくれぇ! なんか嫌な予感がしてならない!」
そして、今に至る。
「えーコホン! 今からポーカーをやりま〜す!」
「「いぇーい!」」
親までノリノリかよ、合わせんの面倒だな。
「いえーい……」
「それでは1回戦! 対戦者は私の父、 倉部友蔵選手と私と一線越えそうになった伊藤 伊月選手です!」
「お前何口走ってんだ!」
「その話もっと詳しく」
「そこまで行ってねぇから!」
成り行きでキスまでしたとはいえ、あんなこと言えるあいつが羨ましいわ。
「おい鈴奈、これジョーカー入りか?」
「うん、そうだけど」
なんてこったストレートが来たら負けじゃねぇか。
ここは!
「男気発動!!」
「すべて捨てた?!」
「あぁっと! 伊月選手がすべて捨てました!さぁ何が来る!?」
「うわ……」
「フッ、素晴らしく運がないな、君は」
「うっせー! お前は審判だろうが! とっとと向こうにいけ!」
ったく、あいつの頭には如何わしいことしかないのか?
「次はワシのターン! 2枚捨てドロー!」
えっ?終わり?まぁいいか。
「んじゃ3枚」
そう言って上にある3枚を取った。
「!?」
そして俺は目を見開いた。
「おやっさん、勝負していいか?」
「あぁ、構わん」
「じゃあ行くぞ」
「「勝負!」」
「ワシはフルハウスじゃ! 選ばれ続けて8年目! フルハウスじゃ!」
「悪いなおやっさん、ロイヤルストレートフラッシュだ!」
「何じゃと?! ありえん! ありえんぞ〜!」
可愛そうなおやっさんを前に俺は水を飲みに行った。
「それでは2回戦! 私の母、倉部 京子選手と、相変わらず冷徹かつ人外の伊月選手です!」
「人外言うな!」
人外とかひどすぎる文句を言われながらも俺はカードを見る。
「は?」
俺は、は?という言葉を口にした。そりゃ誰だってなるでしょ。だって、手札がジョーカーを含めたAのストレートなんだもの。
「勝負、良いですか?」
「え? 良いんだけど……」
「じゃ勝負」
そう言い放ち、カードをを置いた。
「は? すすすすすすすとととととととれれれれれれれーーーーーーー!」
長いのでほっといておくことにした。
「次は、負けたら恥ずかしい秘密を暴露される! ちきちき! ババ抜きでーす!」
「帰る」
「ちょ!待ちたまえ!」
「いや〜、だってな? 俺いる意味わかんねぇし」
すると鈴奈がしかめっ面で変なことを言い始めた。
「ちょっと伊月と裏山に登ってくる〜!」
「「行ってらっしゃい」」
「なんで行く前提なんだよ!」
「まぁまぁ、ここにある妖刀を上げるからそれで我慢して貰えんかのう?」
「喜んで」
「切り替えはっや」
刀を受け取ると、速攻で山を登る準備をする。
「行くぞ鈴奈」
「待ってよ〜!」
俺達は山を登り始めた。
「ねぇねぇ、私たちかなり登った気がするんだけど」
「俺もそう思う、てか山頂スグそこだろ」
俺達は登り始めて約5分、山頂というかただの上り坂みたいなのを登った。
道中何も無かったのが不幸中の幸いと言う奴だ。
「んじゃ、帰ろう……ぜ?」
「ん?どうしたの?早く帰ろうよ」
「う、後ろ見る勇気あります?」
「ふーん、驚かそうったって無駄よ! まぁ一応見てあげる、ほーらやっぱり驚か……そうと?ねぇ、これ何?」
「禍々しい空気を感じてるくせに、分かるだろ?」
「ぎゃぁぁぁぁ」
「あ?! 先に逃げやがったな!」
「グァァァ!!!!」
「?! やば! 食われる!」
どうにか怪物の攻撃を避ける。
「くっ! ここは、こいつの出番だ!」
言い放つと同時に、腰にかけてあった妖刀 時雨に手を掛ける。そして一気に引き、怪物に切りつける。
「グワァァァァ!!!」
「やったか?!」
「伊月、それフラグ」
「あ」
そして怪物に食われかけた、瞬間。
「は?」
世界は時間停止した。
なんだこれ?何?妖刀ってすごい能力持ってる系ですか?
小学生が『ザ・ワールド! 時よ止まれ! 』と言っている所を目の当たりにしたことがあるが、いやはや、ほんとに出来るとは。
「よいしょっと」
キョンな掛け声と共に時雨を振り落とす。
ザンッ!
そして時間が動き始めた。
「これ自分の意思で出来るのか」
そんなことを呟いていると遠くからなにか迫ってきた。
「伊月! 大丈夫?!」
「一目散に逃げたやつが何を言う、あぁ、それとこの妖刀、時間停止が出来るみたいだ」
「凄いね! でも、ッ!」
ん?なんか変だな、どこか痛めてそうな。
「さっきから《《ずっと》》足引きずってるけど大丈夫か?」
「!? う、うん、大丈夫、だよ」
図星か。
「……見栄はるなよ、本当は痛いんだろ?」「……うん」
本当我慢するやつだな。
「よいしょっと」
「?!」
「痛くないか?」
「大丈夫」
俺は鈴奈を抱き上げた。
「あ、ありがとう……」
「なんか言ったか?」
「ううん! なんでも!」
今日の日記
伊月と山を登ったら怪物に出会った。
すごく怖くてすぐに逃げちゃったけど、伊月が全部倒した。
その後足を痛めた私は我慢してたけど、伊月は気づいてくれてた見たい。
その後、お姫様抱っこで家まで運んでってくれた。
すっごい嬉しかった。
またやって欲しいな。
P.S 私は伊月の事が好き見たいです。
「これでよしっ! っと、今日はもう寝よ、ふわー、ん〜、むにゃむにゃ」
続く