其の弍 異世界から来し者
それはある日の出来事。
リアルな夢は、いつも唐突に……。
俺は言いたい事がある。
眠い……。
「伊月! ここ教えてくれ!」
「断る、大体拓人に教えたって忘れるのがオチだって」
目の前にいるこいつは俺の友人、
真壁 拓人だ。
基本的に馬鹿で、成績も悪い。が、何故か体育は5を取り続ける奇妙な男だ。
「頼むよ! 伊月! この通り!」
「……はぁ、アイス1本」
「ありがとう伊月! でさ、ここなんだよ、単項式と多項式の違いが分からなくてよぉ」
……。
「ん?どうした、伊月?」
「教科書見やがれ、このど畜生がァ!」
その後アイス3本で勘弁してやった。
「伊月! 今日はどこ寄ってくの?」
「土手で本を読もうと思ってるけど……」
「着いてっていいかな?」
「別にいいけど……そう言えば鈴奈は週番じゃなかった?」
鈴奈が歩くのを止め、光にも負けない速さで教室へ駆けて行った。
ー5分後ー
「ハァハァ、伊月も週番じゃなかった?」
「もうやった」
「……ズルくない?」
「ズルくない」
俺達は土手を目指して歩き始めた。
木の上にて。
「俺達はどうやったら戻れるんだ……」
「条件を満たせばいいのです!」
「んな事知ってんだよ!」
あたりに響く。
「じゃ、じゃあ自分達で条件を作ればいいのでは? 無いってことはそう言う事なのです!」
……。
「なんでもっと早く教えてくれなかったのかなナノアちゃん?」
「い、いやだって、気づいて、って顔が怖いから止めるのです!?」
「ねぇ、伊月」
「何だ?」
「今木の上でカサカサ聞こえたの、私だけ?」
「俺も聞こえた」
俺は今、絶賛読書中、隣にいる鈴奈はスマホゲーに没頭中、していたのだが、先程から木の上でガサガサ聞こえて気になって仕方なかった。
「私、あの木、斬っていい?」
「止めといた方がいいよ、無駄なことに首を突っ込むと今読んでるswordsの主人公、みたいな事になるから」
「ふーん」
「お前は何で肝心な時に言わないんだ!?」
「ほんはほほいはへへほははあらいろれふ!(そんなこと言われてもわからないのです!)」
無理やり頬を引っ張ると抵抗するので手段を変えることにする。
「はぁ、仕方ねぇ、一度家に帰るか」
「やった〜! のです! 今日の夕飯は何ですか? カレーがいいのです!」
「生憎シチューなんだ、許せ」
2人は木から降り屋根を伝って薄暗い路地へ消えていった。
「ねぇねぇ伊月、やっぱあの木斬っていい?」
「だめ」
続く