其の壱 この街は怪物で満ちている
ここは自然は皆無、街並みも乏しい町、
竜ヶ峰町だ。
俺は伊藤 伊月、ついさっき城西中学で2年生になったばかりだ。
自分のクラスに行き、席に着く。一番後ろの窓際だ。
「さてと、本でも読むか」
俺の愛読書は、ラノベ、基本的に何のシリーズでもいいが、今見ているのは、最近第3期公開決定したアニメの原作シリーズだ。
「——以上を持って終わりにする。起立!」
「……」
「ん?どうした? 伊藤? 何かあったのか?」
「……」
トントン。
突然肩を軽く叩かれた。何かあるのかと思い。
「ん? 俺に何か用か?」と返事をする。
すると「号令よ、立つのがいちばん遅い人が号令」
「はぁ?! 俺達は、そんなの聞いてねぇよ!」
「本に夢中だったもんね、クスッ」
「笑うな!」
無事に中二の学校生活一日目を終了させた。
2週間後
「あの、伊月君、お昼、一緒にどう?」
ファ?今なんて……。
「も、もう1度言ってくれない?」
「お昼、食べよ♪」
ぶしゃァァァァァァァ!
「ご……褒美」
バタッ。
俺は鼻血を噴き出して倒れた。
「おーい、大丈夫?」
その言葉で目が覚めた。
「ここは?」
「保健室だよ、突然倒れたからビックリしたよ、心配させないでよね」
まるで俺を心配しているような言い方だ。
「所で、弁当は?」
「まだ食べて無いよ」
まじか。なんか、ごめんなさい。
「ごめん、俺のせいで弁当食べる時間無くて」
「いいのいいの、後これ、伊月君の弁当」
「あ、ありがとう」
そう言って弁当を貰う。
にしても何でこんなに可愛いんだろう?
うーむ、この少女の身長は150未満、胸はAAAカップと言った所、髪はロングストレートで深い紫髪、こんなロ……ゲフンゲフン、こんな少女?がなんで俺なんかに……。
「じゃあ食べよっか♪」
「う、うん、でもその前に、名前…で聞いていい?かな?」
「私は倉部 鈴奈、鈴奈でいいよ♪」
「俺の事も君なしで良いよ」
「次からそうするね、伊月!」
「適応能力高過ぎだろ!」
俺達は保健室で昼食を済まし午後の授業に戻った。
放課後
「これで、やっと帰れる、支度してっと」
コツ、コツ、コツ、コツ。
「今日の夕飯何かな? ん? うわ! 忘れ物した!」
俺は家の鍵を忘れてしまい、教室に戻る。
シュバッ!ッタ、キイィィィィィン!!
「ん? 何の音だ?」
空き教室の方から聞こえる不自然な金属音。
俺は気になり、空き教室の扉をそっと開ける。
「?!」
そこには異様な光景が広がっていた。
砕け散っている机。
抉られた床。
割られている窓。
そして、血だらけになっている少女。
この光景をどう表現すればいいのかわからないが、一言で言うと、残酷だ。
そして俺に気付いた少女、鈴奈が一瞬、こっちを向いた。その時、形容しがたい怪物が鈴奈の腹を抉った。
「ぐっ!そこで……何してるの? 早く、逃げて!」
「お前を置いて逃げられるわけねぇだろ!」
「いいから!」
その時、化け物が鈴奈に2発目のパンチを放った。その衝撃で、鈴奈は窓際へ吹っ飛び、
教室全体が揺らいだ。
「くっ!」
少しづつ揺れが収まるのを感じていると、化け物がもう1度鈴奈を狙っていた。
「あぁ!もうどうにでもなれぇ!」
そう叫ぶと、一直線に鈴奈の方向へ走っていた。
「来ちゃダメ!」
「知るかそんなもの!」
鈴奈の元にたどり着くとすぐに担ぎ一目散に逃げた。
「全く、無茶しないでよ」
「それは俺のセリフ、大体、あの化け物は何だ?」
「怪物的な?」
「随分軽いな」
「痛っ!」
「大丈夫か?!」
「大丈夫……じゃないかも」
そう言うと鈴奈は倒れ込む。
「どうすれば、あぁ、何も思いつかねぇ!」
「……私はね、人じゃないの」
「?!」
鈴奈はいきなりそんな話をし始めた。
「私は『鬼人』って言う種族なの」
「……」
「このことを他人に言ったのは君が初めてだよ、伊月、誰にも言わないでね……」
そして。
「そんな私でも助けてくれる?」
「うーん、まぁ俺は、人を選ばない、信じろ」
「なら……安心できるね」
鈴奈はそう言うとぐったりする。
あれ?結構やばくね?
「クソッ! どうすれば!」
まさか、恋愛モノとかによくあるきすしてなおるとかじゃないだろうな?嫌でも前にばあちゃんが言ってたし。
考えた末に出した答えは、やはり恋愛モノによくある奴。
「あの、キスする心構えってありますかね?」
「え? どうゆう……事?」
「その……キスしないと治らない的な?」「……今回だけ、だよ」
今回だけ?意外と意味深なことを。
「とりあえず……行くよ?」
「う、うん」
俺はそう言うと、唇を重ねる。そしてある程度時間が経ってから唇を離す。
「大丈夫か?」
「う、うん、治ったみたいだけど……」
「それならよかった」
俺がホッと息をつくと。
「う……んでも、眠い……かも」
ドサッ!
鈴奈は小さな音を立てて倒れた。
「なんでそこで倒れるの〜?! はぁ、仕方ない、おぶって帰るか……てか、家どこだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ?!」
「はっ?!……今のは……誰だ? まぁ、いいか……ナノア! 飯頼む!」
「起きなかったカルトが悪いのです! 飯抜きなのです!」
「ナノアのケチ!」
続く