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教会黙示録  作者: 創造のお方
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聖パウロ王国

西暦1253年、首都が聖地である聖パウロ王国では少々悩ましい問題が発生していた。

それもこの時代にありがちな他国からの侵略や疫病の拡大などではなく。

と、いうのも魔神サタンを神として崇める「悪魔教会」が原因で国に夜な夜な下等悪魔が現れて人間を襲うので国王は長年、頭を悩ませてきた


そもそも、聖パウロ王国は西暦654年前後に成立した「神聖教会」によって共に発展してきたので、他教会に対して排他的なのである。


そんな状況下で第20代聖パウロ王国国王、パウロ20世は疫病により先日 息を引き取った。





                        1



4月27日


先日、息を引き取った聖パウロ王国故パウロ20世の息子、ヨハネス=パウロは王都の墓地に立ち尽くしていた。

その十字型をした墓にはおびただしい花束が供えられていて、墓の表面には「聖パウロ王国国王パウロ20世此処に眠る」という言葉が彫られている。

パウロ20世の葬儀はとっくに終わっている だが、ヨハネスには父に 今は亡き父に、どうしても聞きたい事があった。


「父上、どうして亡くなられたのです。 どうして私に託すのです。こんな私に、こんな青二才に王国をどうしろと!」

その声からは唇の震えと大きな悲しみ、そして僅かな憤怒が伝わってくる

ヨハネスは膝をガクリと落とし、地べたに座り込んだ

瞳が僅かに緩む。

何とかそれを堪え、ゆっくりと立ち上がると父に別れを告げて颯爽と走り去って行った。




                   2



王城に着いたヨハネスは王位継承の為の儀式を行っていた、

目の前には純金の十字架、その横に四本の蝋燭、そしてそこに国王庁専属の牧師が立っていて神の御言葉とやらをブツブツ唱えている。

「汝、王位を継ぐに相応しき。王に成るは汝、如何にして断じて下りざるべし。汝、王成れば神の戒め、王の戒めを守られよ。汝、王成れば身を呈して民に光を与え、神の命を守られよ。

以下に同意する事ありきは汝、王位を継ぐに相応しきなり、神に誓って同意するか?」


「はい」


「神よ、教皇の名において祝福せよ。今日、此処に王位を継ぐ者あり、神は教皇の名においてこの者を生涯に渡り支えるものと成せ。」


やっと終わったかと思うと、急に剣の平での一手打ち。

この剣の平での一手打ちの形式はパウロ王国でしか行われていない、噂には聞いていたがやはり痛い。

例え剣の平であっても剣は剣だ、しかも儀式用の剣で純金だった 刃渡り1メートル程の。


「汝は神によって祝福されたものなり、今日、ここに神の御名によって王位を継ぐものありき!」

そう言いながら、牧師はヨハネスの頭に豪華な装飾が施された王冠を被せる


重い、その一言に尽きるばかりだった

王冠には外枠に純金、中にはワインレッドの布、外側のドームの枠は純銀、ドームの枠の装飾は下から順に、エメラルド、ルビー、サファイア、オパール、ダイアモンドの順に装飾され、頭頂部には純金の十字架が取り付けられている。




一通り儀式が終わると今度は賑やかな宴会が始まる、

ヴァイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスの四重奏とフルートなどの金管楽器、更にパイプオルガンの演奏と共に皆がダンスを踊り始める。



ヨハネスも「一緒に踊らないか」と誘われたが断った、ヨハネスはそんなことよりも「夕食はまだなのか」

と思っていたからだ。

宴会の席に座るとキッチンから次々と料理が運ばれてくる、俗に言うフルコースだ。

ヨハネスが目を光らせていると召使いが料理名を説明する

「右から、ブルターニュ産 オマール海老のコンソメゼリー寄せ キャヴィアと滑らかなカリフラワーのムースリーヌ、自家燻製したノルウェーサーモンと帆立貝柱のムースのキャベツ包み蒸し 生雲丹とパセリのヴルーテ、手長海老のポワレとサフランリゾット 濃厚な甲殻類のクリームソース、国産牛フィレ肉のポワレ 季節の温野菜とマスタードソース オレンジの香りを纏ったブールパチュー、木の実とキャラメルのタルトフィーヌ 濃厚なミルクのソルベ シナモンの風味 でございます。」


名前は意味不明だが見た目は美味しそう、と思った。

ナイフとフォークを手に取って黙々と食べ始める

ヨハネスはうまし、うまし、と笑顔になりながら、ふと思った。

今こうして食事をしてる間にも悪魔教会によって苦しんでいる民がいるということを、


だが今はそれを考えても仕方がない、何せ今日は宴ということもあって夕食が豪華なのだ。

気を取り直してメインの肉料理に手を伸ばそうとした時、ふと声を掛けられる。

「ヨハネス様は何がお好きなのですか?」

問いかけてきたのはおかっぱで黒髪の鋭い目つきをした少女、国王の側近だった。

「私は.....」

少し思い返してみる、好きな事。今まで鷹狩りや兎狩り、チェスやトランプなどのボードゲームなどをやっては来たがあくまでそれは「他国の王と友好関係を築くために将来必要なスキル」という名目で教えさせられた表面上での趣味に過ぎなかった。

他に学んだことといえば、貿易学や経済学、商学、数学、国学、公民学、歴史学、地理学、科学、化学、物理学、天文学、地学、語学、王宮剣術、王宮会話術、王宮歩行術、王宮食事術、王宮占星術、哲学、宗教学、聖書学等々、様々な学問を学んできたが 何一つすき好むものは無い。

そもそもこういった学問の予定で毎日が埋め尽くされていたため、唯一の楽しみといえば食べる事ぐらいしか無かった、なので。

「食べる事だ」

そう、言っておいた

「は? 食事術ですか。」

「違う、ただ単に食事をとることが好きなのだ」

少し、顔色を変え

「他に学問で好きなことは...」

「ない、元々勉強は嫌いだから」

側近の鋭い目つきは更に鋭い目つきへと変わり、いきなり席を立ち、こう言い放った

「ヨハネス様、ちょっと.. 外へ出ませんか」

その一言には重みがあり従いいざるを得なかった、

皆に一言告げて王城の外へと向かう、ヨハネスは嫌な予感がしてならないと思っていた。








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