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異世界で魔法を覚えて広めよう  作者: 早秋
第2部4章
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(6)『旭日』の方針

※昨日更新分の話で、「(1)動き出すセイヤ」と同じ内容になっているという指摘がありましたので、修正をしています。

よろしければ、前話から確認をお願いします。

(修正をしたのは、16日の21:20頃です)

 今後の方針を話すために『旭日』の事務所を訪ねたセイヤだったが、そこにアヒム以外の者たちがいて、思わずその場に立ち止まってしまった。

 そのセイヤを目ざとく見つけたアヒムが、駆け寄ってきた。

「兄貴、どうしたんですか? 何かありましたか?」

「ああ、いえ。伝えたいことがあったから来たのですが……彼らは?」

 見覚えのない者たちに視線を向けたセイヤに、アヒムが頷いて言った。

「ああ、あいつらは、新しく『旭日』に入ることになったメンバーです。ちょうどいいですから、顔を見せてやってください」

 さらっと言ったアヒムに、セイヤは驚いた。

「えっ!? いやだって、仲間を増やすように言ったのは数日前……ああ、もともと入れる人は決めていたのですか」

 たった数日で面接なりの手続きを経て決めたにしては、随分と早すぎる。

 だが、最初から絞っていたのであれば、これだけ早く決められたのも理解できる。

 

 ただ、セイヤは、そんな話を一度もアヒムたちから聞いたことが無かったので、つい責めるような口調になった。

「そういうことでしたら、きちんと言っておいてほしかったのですが……別に人数を増やすことを禁止していたわけではないのですから」

「い、いや! 兄貴、それは誤解だって!」

 アヒムが慌てたように右手を振りながら、彼らを入れることになった経緯を話し始めた。

 

 まず、セイヤが予想した通りに、アヒムたちが次に入れるとしたら誰だろうなという話をしていたのは事実だ。

 けれども、新しい仲間を入れたとして、実際に彼らに指導したり使ったりするのはアヒムたちになる。

 セイヤに言っていた通り、とてもそんな余裕はないというのも本当のことだったのだ。

 結果として、『旭日』に迎え入れることはなく、ずるずるとここまで来ていたというわけだ。

 ついでにいえば、彼らは最初に『旭日』を作るときに、アヒムとボーナが連れてきていた者たちの中にいた。

 早い話が、一応はセイヤも面識があるのだ。

 

 説明口調で早めに説明をしたアヒムに、セイヤは納得の顔になって頷いた。

「なるほど。いや、別に怒っているわけでは無いのですよ?」

 何となく言い訳めいたことを言ってしまったが、実際、怒る資格などないということは、セイヤもよくわかっている。

 そもそも、しばらくの間はほとんど顔を出せなくなることは目に見えているので、『旭日』の運用をどうしていくのかは、彼ら次第なのだ。

 

 セイヤの言葉にアヒムがホッとしたところで、他の者たちも近寄って来た。

 セイヤが入って来た時からしていた説明らしきものに、区切りがついたのだろう。

 新人たちを引き連れて来たボーナが、最後に付け加えるようにして言った。

「――そして、あそこにいる方が、我らが『旭日』のボス。リーダーだよ。ちゃんと覚えておくように! そして、絶対に逆らってはいけないよ!」

 ボーナがそう言うと、新人たちのうちの何人かが、なぜかパチパチと拍手し始めた。

「いや、ちょっと待って、ボーナ。何、その紹介は?」

「あれ? あたい、何か間違ったこと言った?」

 ボーナがそう言って首を傾げると、元からいるメンバーたちはいっせいに首を左右に振り始めた。

 

 それを見たセイヤは、この場での説得(?)を諦めて、ため息をつきながら別の話題を振ることにした。

「……まあ、それは後から話しましょう。それよりも、シェリーにハンナ。少しいいですか? 話したいことがあって来たのです」

 セイヤのその言葉に、シェリーとハンナは一度顔を見合わせてから、すぐに頷いた。

 彼女たちが顔を見合わせたのは、セイヤが自分たちになんの用があるのか分からなかったためだ。

 もし『旭日』に関わることなら全員がいる所で話せばいい。

 わざわざ個別に呼ばれてまで話す内容が、思い当たらなかったのだ。

 

 

 別室に移動したセイヤは、すぐにシェリーとハンナに話しを始めた。

「実は、学園の入試試験ですが、派手に外気法を使いました。今後は、少なくとも貴族の間では、かなり噂に上ると思われます」

 セイヤがいきなりそう切り出すと、シェリーとハンナは、先ほどと同じように同時に顔を見合わせた。

 だが、今回は意味合いがまったく違っている。

「拙速」

「そうね。予定外にもほどがあるわね」

 暗に責めてくるふたりに、セイヤはグッと言葉を詰まらせた。

 

 セイヤは、シェリーとハンナには、今後の予定をある程度話していたのだ。

 ちなみに、他のメンバーに話をしていなかったのは、別に仲間外れにしたわけではなく、余計なことを言って混乱させたくなかったからだ。

「い、いや。ちょっと状況が状況で、仕方なく。流石に子供の入学試験で、騎士団長が出てくるなんて、予想が付きませんから」

 言い訳めいたようにそう言ったセイヤだったが、シェリーとハンナは驚いたような表情になった。

「驚いた」

「ちょっと。何で騎士団長なんて大物が出てくるのよ?」

「いや、そこはこちら側の事情としか言えません。すみません」

 そう言って頭を下げたセイヤに、ハンナがため息をついていた。

「まあ、それはいいわ。それよりも、そんなことを言うために、私たちを呼んだわけではないのよね?」

「ああ、そうでした。ここからが本題です」

 ハンナに向かって頷いたセイヤは、そう前置きをしてから話を始めた。

 

 貴族たちに外気法の話が広まる以上、平民たちにも話を広める必要がある。

 セイヤは、魔法を貴族だけが使えるものにするつもりは毛頭ないのだ。

 そのためには、同じようなタイミングでことを進める必要があるのだ。

 本当であるならば、前倒しで『旭日』が拡大するたびに広めていくつもりではあった。

 だが、その方法が取れなくなってしまった以上、急いで『旭日』のメンバーには外気法という誰にでも使える技術があることだけでも認識してもらわなければならない。

 

「――というわけで、内気法を教えていく段階で、新メンバーに教えても大丈夫そうだと判断した場合は、外気法も教えて行ってください」

 セイヤがそう言うと、シェリーは表情を変えなかったが、ハンナは顔をしかめた。

 ちなみに、シェリーは滅多なことでは動揺したりしないので、本当のところどう考えているのかは、セイヤにもまだ読み切れないところがある。

「それはまた、随分とせわしない気がするけれど、本当に大丈夫かな?」

 ハンナがこういったのは、魔法を使える立場でいることが有利であるのは間違いないので、そんなに簡単に教えて大丈夫かと考えてのことである。

 さらには、内気法の基礎がしっかりして外気法を教えても大丈夫なのかという不安もあった。

 

 ハンナの不安はセイヤにもすぐにわかったので、頷きながら続けた。

「本当ならば、じっくり教えてからと思っていたのですがね。そうも言っていられなくなりましたから。それに、今の私の教え方が正しいとは限りませんし」

 セイヤとしては基礎の基礎をじっくり教えてから、いろいろな技術を教えるという方法を取りたかったのだが、人数が増えてくれば、そんな悠長な方法を望まない者も必ず出てくる。

 別に、そうした輩には教えないと突っぱねてもいいのだが、基礎を教え込まない状態で外気法に行った場合にどうなるかは、セイヤも把握しておきたいところだ。

 新人たちには実験台のような感じになってしまうが、ここは仕方ないと諦めてもらうことにする。

 というよりも、わざわざそんなことを教えるつもりはないのだが。

 

 それに、セイヤとしても教えっぱなしにするつもりはない。

「私もできる限り顔を見せるようにしますから、教えた内容とどういう結果になったのか、出来るだけ詳細にまとめて置いてください。別にそれは紙でなく、口頭でも構いませんから」

 いきなり外気法に進んだ場合どうなるか、実際に事例がない以上、セイヤにも分からない。

 そのため、出来る限りのフォローはするつもりであった。

 そのために、セイヤはこの場にシェリーとハンナを呼んだのだ。

 セイヤの言葉を聞いて、その意図を理解した二人は、真面目な表情になって頷くのであった。

まずは『旭日』の新メンバーに外気法を広めていくことにしました。

といっても、セイヤの目の届く範囲だけです。

学園に入ったセイヤが、どうやって貴族たちに広めていくかは、まだ未定です。

(出たとこ勝負とも言いますw)

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