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異世界で魔法を覚えて広めよう  作者: 早秋
第1部1章
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(7)新世界調査(前)

本日四話更新の三話目です。

 机の上に置いたままだった腕輪を取ったセイヤは、意識して腕輪にある赤くなっている部分を触った。

 具体的には、人差し指で触りながら魔力を流し込んだのだ。

 するとそれに反応したように、いきなり目の前に扉がひとつ出来上がった。

「なんと!?」

 セイヤは、マグスが驚いて声を上げたのに気付いたが、自分自身では特に驚きはしなかった。

 神と名乗るものから受け取った物なのだから、これくらいはあり得るだろうと予想していたのである。

 

 セイヤは、自分で扉を開ける前に、マグスを見た。

「先に入ってみますか?」

「いや、止めておこう。先ほどの反応もそうだが、お前が使えるようにできているのだろう? 先に私が入ったとしても弾かれる可能性が高い」

 マグスは首を振りながらそう答えたが、その目は好奇心に満ちていることにセイヤは気付いていた。

「もし、他人が入れるようでしたら、今度お誘いいたします」

「おお、それはいいな。頼む!」

 わざとらしく鷹揚に頷く様子を見せたマグスに、セイヤは苦笑を返すことしかできなかった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 腕輪を起動(?)して出現した扉を開けても、不思議な力が働いているのか先を見ることはできなかった。

 仕方なく、そのまま扉をくぐると、そこはセイヤの見覚えのない部屋になっていた。

「はて。ここはどこでしょうね?」

 首を傾げながらそう呟いたが、答えが返ってくることはなかった。

 部屋は、目測で大体33平方メートル(二十畳)ほどの広さがある。

 

 そしてその中央に少し大きめのテーブルが置かれており、そこには一枚の紙が置かれていた。

「なんでしょうね。これは」

 そう言いながら紙を手に取ったセイヤは、そこに文字がかかれていることに気付いた。

 しかもご丁寧にも日本語・・・で書かれていた。

 だれが犯人かは、いうまでもなかった。

「……何をやっているのでしょうね、あの神様は」

 そう呟きながらもセイヤは、その手紙に目を通し始めた。

 

 

 手紙は、初めに簡単な挨拶から始まって、腕輪を使ってくることができる世界・・についての説明が書かれていた。

 なんと、セイヤがいまいる場所は、言葉通りに神がセイヤのためだけに作った世界だった。

 手紙には小屋と書かれている、いまいる部屋から出ると、扉を通る前の世界と同じ法則で作られた疑似的な世界が広がっているという。

 その世界は、いわばセイヤが魔法を思いっきり習得することができるように作った世界であり、たとえ魔法を暴発させても誰にも迷惑がかからないと書かれている。

 しかも、ゲームのチュートリアル的なものまで用意してあって、元の世界に出てくるモンスターも疑似的に用意できるそうだ。

 さらにさらに、セイヤがこの世界でモンスターに倒されたとしても、いわゆる死に戻りが出来るそうだ。

 ようするに、この世界では、セイヤは死ぬことが無いのである。

 

 手紙を読み終わったセイヤは、どれだけ大盤振る舞いをしているんだと思って呆れたが、逆にいえば神がセイヤにそれだけの期待をしているともいえるだろう。

「……なんというか、期待が重すぎる気がするのですが…………」

 そんなセイヤの呟きに反応したのか、あるいはもともと用意してあったのか、突然持っていた手紙が一瞬だけ輝いた。

 そして、そこには、いままでなかった文章が追加されていた。

『なに、気にすることはない。セイヤ君が成功すればそれでよし、失敗したところで、また新たな挑戦者が来てそこを使うだけじゃからの』

 そのなんともありがたいお告げ(?)のお陰で、セイヤは脱力したように肩を落とした。

 この茶目っ気は、神の素なのかそれともセイヤの気をほぐすためにあえてやっているのか、よくわからないところがある。

 ただ、少なくともセイヤの中では、神としての威厳は幾分か(かなり?)落ちているのは確かだった。

 

 神にため息をつきつつ、セイヤはまず、手紙に書かれていた端末の機能を確認することにした。

 この端末は、いまいる世界にモンスターを用意するためのものだ。

 手紙には、今のところ(・・・・・)その機能しかないと、いかにも含みがあるように書かれていたが、とりあえず無いもののことを考えても仕方ない。

「どれどれ。さて、どう使うのでしょうかね? ……っと。これはマウス……のような物でしょうか?」

 端末の画面の前に座ったセイヤは、その傍に見覚えのある物を見つけて、とりあえず動かしてみた。

 すると、まるでスリープ状態から復活したかのように、画面が表示された。

「うん? これは、もしかしなくともこの世界の世界地図、でしょうか」

 画面が付くと、まず画面の左側の五分の四ほどを使って表示されている地図らしきものが目に入ってきた。

 その世界地図に、門のような印がひとつだけ描かれている。

「これは、もしかしなくても、腕輪を使った場所なんでしょうね」

 セイヤはそう呟いて、さらに画面の確認を続けた。

 

 残りの右側には、検索バーのようなものがあり、その下にはツリー構造になっているモンスターの系統樹が表示されている。

 一瞬だけ使い方を迷ったセイヤだったが、すぐに考えるまでもないかと検索バーのところに文字を……入力できなかった。

「……おや? キーボードはどこでしょうか?」

 画面の周辺はおろか、机の下などを探してもどこにもそれらしいものはない。

 ひとしきり探したところで、セイヤはふと思いついた。

 そんなはずはないかと思いつつ、その思い付きを試してみることにした。

「…………ゴブリン」

 元の世界でも有名なモンスター名だが、新しく生まれ変わった世界にもゴブリンがいることは書物から確認していたので取りあえず、その名前を呼んだ。

 すると、セイヤが画面に向かってそう言うと、検索バーに『ゴブリン』と入力されて、検索が始まった。

 どうやら、このシステム(?)は、音声入力になっているようだった。

 

 キーボードを探した自分に若干落ち込みつつ、セイヤは検索が終わった画面を見た。

 ちなみに、検索自体は一秒もかかっていない。

 そして、画面にある地図上には、赤い点がたくさん出ていた。

「この赤い点が、ゴブリンが出る場所、ということでしょうか。……というか、ほとんど真っ赤ですね」

 高山らしきところや、海などには出ていないが、陸地らしい場所には大体赤い点が存在している。

 それだけ、広く世界にはゴブリンが分布しているということだろう。

 次は別のモンスターを検索しようとしたが、いま表示されているゴブリンをどう消して新しいモンスターを検索するかが、すぐには思い付かなかった。

 といっても、十秒も考えずにやり方はわかった。

「消去。……そして、ドラゴン」

 セイヤがそう言うと、赤くなっていた世界地図がいったん元の表示に戻って、ドラゴンの検索を始めていくつかの場所で赤くひかった。

 さすがにゴブリンほどは赤くなっていない。

 

 それを見て、セイヤは安心してため息をついた。

「さすがにゴブリンと比べれば、分布が少ないですね。これは、山奥とか人里離れた場所……だといいですが、どうなんでしょうか」

 セイヤは、詳しい世界地図など初めて見るので、赤く光っている場所がどういう所なのかは、まったくわからなかった。

 こればかりは、比較できる地図か資料が手に入らないとどうしようもない。

 かろうじて門が表示されている場所の周辺はわかるが、幸いにも赤い点は近くには表示されていなかった。

「さて、次はどうしましょうかね」

 モンスターの検索方法を確認できたセイヤは、次に何をするかを考えながら画面を見るのであった。

神からのお土産の確認。

セイヤにしてみれば、ちょうどいい遊び場を手に入れたというところでしょうか。


次話更新は本日16時です。

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