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異世界で魔法を覚えて広めよう  作者: 早秋
第2部2章
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(7)マリーの成長

 ひょんなことからリゼの息がかかった侍女をマリーから離すことが出来た。

 代わりに来ることになった侍女(候補)は、アリアというマリーよりも二つ年上の少女である。

 そんな子供が侍女で大丈夫かという話も出たのだが、それはエーヴァが補うということでごり押しをしている。

 セイヤは、基本的には自分ひとりでなんでもできてしまうので、エーヴァがいる必要はない。

 さらにいえば、細々とした用事は別の侍女でも十分なので、エーヴァをセイヤ付きという名目にしたまま、アリアの教育係とマリー付きという立場になった。

 アリアが十分に成長すれば、マリー付きとして正式に任命されるだろうが、それまではエーヴァが補佐することになる。

 ついでにいえば、不慮の事故で両親を亡くしたアリアは、マリー付きの侍女とのなることに張り切っているので、すぐにでも仕事は覚えるだろうというエーヴァのお墨付きを得ていた。

 最初は多少強引にことを運んだが、結果的には一月も経たずに、アリアはマリー付きの侍女(候補)として認められることとなる。

 

 多少(?)強引ともいえる手で信用できる侍女を得たマリーは、晴れてセイヤから本格的に魔法を習うことになった。

 とはいえ、マリーはまだまだ五歳になるかならないかという年なので、難しいことは教えられない……とセイヤは考えていたのだが、見事にその予想は外れることとなった。

 内気法はこれまで十分に訓練をしてきたので、外気法を教え始めたとたん、基礎の四魔法はすぐに覚えてしまった。

 暴走することを考えて、念のため神が改良してくれた<遊び場>に入って基礎魔法を教えると、これも数日もせずに使えるようになっていた。

 『旭日』のメンバーに教えたときのことを考えると、破格の成長具合だった。

 

 マリーの成長ぶりをすぐ傍で見ていたセイヤが、

「これ、私よりも成長早いのでは?」

 と言わしめるほどのマリーの成長ぶりに、セイヤは当初の計画を前倒しで行うことにした。

 といっても、すぐに中級魔法を教え始めたわけではない。

 まずは初級魔法を詠唱なしで使えるようにするのと、それ以外のセイヤが見つけた技術をいろいろと教え込んでいく。

 それと合わせて基礎的な数学や化学まで教えることにしたのだ。

 

 本来の子供であれば外で遊びたがる年頃であろうに、マリーはむしろ喜んでセイヤからの知識を吸収していった。

 勿論、子供ということで教える程度は考えているが、それでも以前の世界の教育度からすれば、あり得ないほどのスピードで覚えていく。

 魔法というマリーが一番興味を持っていることに絡めて教えているというのもあるのだろうが、それでもさすがのセイヤも驚きをもって妹の成長を見ることとなった。

 とはいえ、いきなりすべての知識だけを詰め込んでも身に付かなければ意味がないので、きちんと加減はしてある。

 その分余った時間は、魔法の基礎訓練にあてるように言っておいたが、マリーは素直にそれに従っていた。

 

 さらに、セイヤが教えたのは魔法だけではない。

 並行して体力づくりのために屋敷の周りを走るように指示もしている。

 勿論、内気法を鍛えるためでもあるのだが、これにはアリアも一緒に走るようになっていた。

 アリアに教えたのは内気法だけだったが、それでも魔法という存在には驚きを隠せない様子だったのがセイヤには印象的だった。

 既に何度も見ていることだが、こればかりはいくら見ても見飽きないのではないかとさえ、セイヤは考えているのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 セイヤがマリーに本格的に魔法を教え始めてからひと月もせずに、アーロンが領地に帰ってきた。

 この年、学園を好成績で卒業したアーロンは、見聞を広めるという名目の下、数人の友人と諸国漫遊の旅に出ていたのだ。

 途中にセルマイヤー家にも寄っていて、そのときにはセイヤも友人から挨拶を受けていた。

 ただ、クリステルのときのように何かが起こるわけでもなく、すでにその時には成人もしていたので、マグスもわざわざセイヤに依頼を出すこともなく、基本的には放置だった。

 結果的に、このときはセイヤも自分の好きなことをすることが出来たというわけである。

 

 旅から戻ってきてマリーの成長ぶりを知ったアーロンは、呆れたような視線をセイヤに向けていた。

「……何というか、セイヤはマリーをどうしたいんだい?」

 あまりにも抽象的な聞き方だったが、それでもセイヤにはアーロンが何を言いたいのか、理解できた。

「教えたことを何でも吸収していくので、つい……」

「これが、ついというレベルかな? 計算能力に関しては、もう学園に入ってもやっていけるんじゃないか?」

 学園の入学テストは、一ケタの四則演算が出来ればいいということになっている。

 マリーはとっくにそのレベルの計算はできるようになっているので、少なくとも計算に関しては入学できるレベルにあるのだ。

 ついでに、ついこの間などは、三桁と一桁の掛け算をこなしていたりもする。

 

 アーロンの言葉に、ハハハと笑ってごまかしたセイヤはさらに言い訳した。

「今のところマリーの興味は魔法に向いているので、それ以外はほとんど触れていないですよ。このままでいけば、平均レベルに落ち着くのではないかと思います」

 マリーの素晴らしい才能が発揮するのは、どうやら魔法に関係することだけのようで、歴史やら地理に関しては、ほとんど教えていない。

 なので、そこまで突出した天才レベルにはならないはずだというセイヤの言葉に、アーロンはジト目を向けた。

「それってまんまセイヤと同じ道を辿っているということだと思うけれどね? 確か、いまのセイヤは余裕でトップを取れるくらいの成績になっていなかったっけ?」

「あ……そういえば」

 アーロンの突っ込みに、セイヤは今更ながらにそのことを思い出していた。

 

 生まれたばかりのセイヤは、とにかく魔法に興味があったので、そちらに関しての出来る限りの探求を続けていた。

 文字を覚えて、屋敷にある書物を読むようになってからは、別世界に来たんだという実感も伴って、歴史や地理にも興味を示すようになっていた。

 その時のセイヤは、忙しいマグスに代わって、一番年長のアーロンに質問攻めにしていた。

 お陰でアーロンの成績もぐんぐんと伸びて行ったのは、けがの功名といったところだろうか。

 ちなみに、セイヤがアネッサに質問攻めにしなかったのは、幾度か聞きに行ったところで母親の知識量を察してしまったためである。

 

 変なところで抜けたところがあるセイヤに、アーロンは呆れたような視線を向けた。

「まあ、別にいいんだけれどね。どうせマリーの教育に関しては、セイヤに任せっきり何だよね?」

「ハハハ。当然じゃないか。セイヤ以外の誰が適任だと思う?」

 アーロンの言葉に、笑みを浮かべながら二人の会話を聞いていたマグスが、あっさりとそう言い放った。

 

 そもそもマリーは、本来であればまだまだ家庭教師などつけるような年ではない。

 それが、セイヤの薫陶のお陰か、当人のやる気のお陰か、既にあり得ないレベルになっているのだ。

 今更セイヤ以外の人間をつけると、騒ぎが起こるどころではないことになってしまう。

 問題があるとすれば、次の年にはセイヤが学園に行くことになっているので、誰がマリーに必要な教育を施すかということだが、まだまだ先は長いので保留になっていた。

 なんだかんだ言いつつ、少なくとも領地の屋敷にいる者たちは、皆がマリーを甘やかしているのであった。

既に皆さま気付いているかもしれませんが、セイヤは理系人間です。

元の世界で教えていた教科も理科系です。

(敢えてなんの教科かは公表しません)


一桁の掛け算……いわゆる九九を教えたのですが、この世界にとっては驚異的なことです。

勿論、天才と呼ばれる子供の中には、同じようなことが出来る者はいる……はずです?


ついでに、学園ですが十五になる年で卒業になりますが、年の初めに卒業式があります。

その後はほぼ自由に活動していいので、アーロンは旅に出たというわけです。

中には学園に残って研究などを続ける者もいます。

まさしく、正式な貴族になるための準備期間といったところでしょうか。

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