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異世界で魔法を覚えて広めよう  作者: 早秋
第2部1章
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(9)魔法講習その2

 部分強化を使えるようになった傭兵団『旭日』の面々は、日を追うごとに倒せるモンスターの格が上がっていた。

 そして、冬になるころには、新興の傭兵団としては一番の注目を集めるようになっていた。

 とはいえ、まだセイヤが許可しているのは、街から日帰りで行ける範囲だけなので、そこまで強いモンスターは倒していない。

 ただし、討伐している数と安定感から一定の評価を得るようになっていた。

 近場の獲物を頼むのであれば『旭日』が確実とまで言われるようになっているのだから、セイヤとしては十分な成果である。

 もっとも、他のメンバーは、自分たちが強くなっていることがわかっているので、さらに上を目指したがっているのだが。

 

 ただし、近場しか行っていないとはいえ、その内容が薄いというわけではない。

 『旭日』が狩りに行くたびに、セイヤは厳しい課題を与えているので、実際のところは遠征して強いモンスターを倒すのと変わらないような濃密なスケジュールをこなしていたりする。

 シェリー辺りはそのことにも気付いているようだったが、彼女がそのことを他の面々に言っても半信半疑だったりする。

 お陰で、『旭日』の面々は、狩りに行くたびに成長しているのだが、そのことにはほとんど気が付いていないような状態だった。

 彼らは、最初の見学以来ちょこちょこと顔を出すようになったアネッサが、「とんでもない成長速度だね」と言っていることは知らないのだ。

 

 真面目に瞑想を行っている『旭日』の面々は、徐々に全身強化で纏える魔力が増加して行っていた。

 まだまだ実戦レベルで使えるほどではないが、最初の頃に比べれば見違えるほどにまで成長していた。

 残念ながら比較対象がいないので、彼らの成長ぶりがどの程度のものなのかは、まだセイヤにもわかっていない。

 それはともかくとして、魔力が増えて来たのを確認したセイヤは、並行して外気法の訓練も行うようになった。

 

 ただし、外気法は目に見える魔法になるので、実際に使うのは街の外でといいつけてある。

 指先に火を灯したり、水を出したりする程度は室内でもできるが、実戦レベルで使える魔法となると、見つかるだけでも面倒になる。

 彼らもそのことがわかっているのか、きちんとセイヤの言いつけを守って、外気法の訓練は街の外で行うようになっていた。

 もっとも、一番成長が著しいシェリーでも、使える魔法はセイヤが初級魔法と括った範囲でしかない。

 ちなみに、初級魔法は、こぶし大の火で攻撃したり、同程度の石を出したりする程度の魔法である。

 

 そうこうしているうちに季節は冬になり、セイヤはついに『旭日』の面々に遠征の許可を出した。

 それは、彼らが成長したということもあるが、それ以外の理由もあった。

 長期休みに入ったアーロンとエリーナが、領地に戻ってきたのだ。

 セイヤは以前約束した通り、今度はふたりのために時間を使わなければならなくなったのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「――というわけで、私や母上の能力がいきなり上がったのは、魔法を使って身体能力を上げたためです」

 セイヤがそう言ってから今回集まった者たちを見ると、彼らは呆けたような表情になっていた。

 それはそうだろう。

 いきなり魔法を使っていると言われても、信じられるはずもない。

 だが、実際に半年以上前に王都で信じられないセイヤの動きを見ているので、信じるしかないという思いもある。

 心情的には信じたくはないが、こんなところでセイヤが嘘を吐くはずもないという考えがあるのだ。

 

 今、セイヤが魔法について教えている面々は、領地にいるセルマイヤー家の全員だった。

 すなわち、領主であるマグスを筆頭に、シェリル母子とアネッサ母子のすべてが集まっている。

 セイヤの魔法については、この先とても重要な技術になるとわかっているからこそ、マグスが集めたのだ。

 ちなみに、侍女などの側近に関しては、すべて排除している。

 

「セイヤとマリーが何かを隠していることは分かっていましたが、まさかそのようなことだとは思わなかったわね」

 最初にそう口を開いたのは、第一夫人のシェリーだった。

「すまないな。事が事だけに、お前にもいうことが出来なかった」

「いいえ。実際にこうしてお話を聞かされれば、その理由もよくわかるわ」

 魔法の存在が一般に知られれば、世界のパワーバランスは一変することになる。

 マグスがぎりぎりまで隠しておいた理由も、すぐにわかるというものだ。

 実際、マグスとシェリーの話を聞いていた子供たちも、納得顔で頷いていた。

 

 全員が驚きから回復したことを確認したセイヤは、ここで魔法を教え始めることにした。

 最初に教えるのは、『旭日』のときと同じように、魔力を感じ取ることからだ。

「まずは、自分の中にある魔力を感じ取ってもらいます。といってもこればかりは口での説明は限界があるので、各自で見つけてもらうしかないのですが」

 そう前置いてから、セイヤは魔力についての説明をした。

 その後は、この場を解散して各自で魔力を感じ取ってもらう。

 これに関しては、目に見えるものではないので、外にばれることはないのだ。

 ――ということを、『旭日』の面々に教えるときに学習していた。

 『旭日』に教えた経験は、しっかりとセイヤの役に立っているのである。

 

 

 シェリル母子に魔法を教え始めてから数日。

 魔力を感じ取ることが出来るようになったので、今度は内気法について教えることになった。

 外気法については知識として教えてあるが、今回は教えることはしない。

 学園に戻ってもばれることを考えれば練習が出来るわけではないので、ここで教えても意味がないとマグスが決断したのだ。

 それに、内気法を鍛えておけば、外気法での魔法は防ぐことが出来る。

 所謂気合というやつだが、きちんと内気法を使って防げば、防ぐことが可能なのである。

 

 セイヤにとって意外だったのは、魔法のことを全く知らなかったシェリルも、きちんと魔力を感じ取ることが出来たことだ。

 この世界では年齢による制限があるのかどうか判断するためのひとつの指標になる。

 ただ、やはり年齢が低い者たちに比べれば、時間がかかっているようだった。

 『旭日』とは違って、数日かかったのは、シェリルが魔力を感じ取るのを待っていたためだ。

 

 

 全員が魔力を感じ取れるようになった後は、部分強化と全身強化についてを教える。

 この辺りは『旭日』に教えたときとまったく違いはない。

「全身強化が使えるようになれば、母上や私が見せた動きも出来るようになります。勿論、より強く、素早く動くようになるためには、それだけ魔力が必要になるわけですが」

 ここ数日のセイヤの講習で、皆が素直に話を聞くようになっていた。

 何気に、一番退屈そうにしているのがマリーなのは、この辺りのことはすでに通った道だからだ。

 とはいえ、彼女だけを省くわけにはいかないので、常に一緒の場所にいるようにしていた。

 

「魔法を使うためには魔力は必須の存在です。より多くの魔力を得るためにも、瞑想は欠かさず行うようにしてください。学園に行ってもこの訓練だけはいつでもできますからね」

 周囲の視線を気にしなければ、一番簡単に修練を行えるのが瞑想だ。

 それに、魔力のためには一番重要なものでもある。

 人の魔力がどこまで増やすことが出来るのか、個人個人によって差が出てくるのか、それは未だにセイヤにもわかっていない。

 それに関しては、魔法を使える人が増えれば増えるほど、数値を集めて統計できるようになるとセイヤは考えているのであった。

魔法を広めよう第二弾です。

二回目なのでさっくりと。

このあとに同じようなことが出てきても、数行で済ませると思いますw

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