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異世界で魔法を覚えて広めよう  作者: 早秋
第1部2章
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閑話 魔法の開発

本日二話更新の一話目です。

その1 アイテムボックス


 神から魔法のための訓練場を与えられたセイヤは、次々に新しい魔法を習得していった。

 セイヤにとっては、何より人的被害を考えなくてよくなったことが、一番の収穫だった。

 そのセイヤが、ある時、とある魔法の開発をするために頭を悩ませていた。

「うーん……。新しい別空間を作るというのが、想像しづらいのですよね」

 そう呟いたセイヤは、自分が知っている常識とは違った理論を考えていた。

 

 セイヤが開発しようとしている新しい魔法というのは、転生・転移物で定番中の定番である所謂アイテムボックスの魔法だった。

 ただ、セイヤの頭では、別空間を作り出すということが、どういう理論で成り立つのか全く思い浮かばずに苦労をしているのだ。

 他の中二病的な大魔法は、転生する前の科学的な常識の範囲内で、いくらでも作り出すことができる。

 問題なのは、いまセイヤが悩んでいるように、それらの常識から外れた魔法を作ることだ。

「タンスを開けるとか、引き出しを開けるとかは、元ある空間を利用しているだけだから駄目と……」

 よくある引き出しを開けるようにとか、袋を開けるようにとかだと、単純にその場にある空間を利用しているだけで、別の空間とはいえない。

 アイテムボックスは、理屈上はその空間を拡張するか、別次元(?)の空間を利用しなければならない。

 どちらの方法を取っても、セイヤにとっては想像しづらいことなのだ。

 

 空間の拡張は、どうやれば空間が広がるかを想像しなければならないが、そんな方法はさっぱりわからない。

 別次元の空間を利用する方法は、そもそもどうすれば別次元の空間を開くための入り口を作ればいいのかが想像できない。

 どちらの方法もまったく別の空間を用意しなければならないということで行き詰まっているのだ。

「せめて、他に参考になるようなものがあればいいのですが……って、あれ? ちょっと待ってくださいよ」

 何か参考になるようなものはないかと考えていたセイヤだったが、ふと腕に付けている腕輪に視線を向けた。

「……身近すぎて、すっかり忘れていましたね」

 神から授かったあの空間は、まぎれもなく別世界だということがわかっている。

 単に、別の場所へ移動するための道具ではないことは、死ぬことのない魔物との練習モードがあることではっきりしている。

 そんな法則が同じ空間上に存在すれば、大騒動になっているだろう。

 少なくともセイヤはそんな話は、書籍や他の者たちの話からも聞いたことはなかった。

 

 神が用意してくれたあの場所が、別次元の空間なのかただ空間を広げているだけなのかはわからないが、セイヤにとっては十分参考にできる実例となる。

 新しい魔法の開発をするには、実際に目の前に例があるのとただ単にセイヤの想像だけで済ませてしまうのでは、大きな壁が存在する。

 魔法というものが無い(といわれている)世界の記憶があるセイヤにとっては、やはり自分の想像だけで新しい魔法を作るのは非常に難しいのである。

「この腕輪がどういう理屈で出来ているかはわかりませんが、少なくとも別空間へ移動することは間違いないはずですから、これを参考にすればアイテムボックスに応用できるはずですね」

 そう考えたセイヤは、早速思考を腕輪へと向けていろいろと考え始めるのであった。

 

 結局セイヤがアイテムボックスの魔法を作ることができたのは、その日から三日後のことだった。

 参考にできる物があれば、開発自体はすぐにできるという良い実例である。

 その後は魔法の改良が進んで、用途にわけて小分けにしたり、空間自体を複数用意したりと色々なことができるようになるのだが、それはまた別の話である。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

その2 転移魔法


 その日のセイヤは、また新しい魔法の開発に取り掛かっていた。

 次の開発目標にしたのは、やはり中二病的代表格の魔法である転移魔法だ。

 いわゆる瞬間移動ともよばれるこの魔法を開発できれば、移動による時間的制約を大幅に改善することができる。

 あるのとないのとでは、この世界での生活様式がまったく変わってくるのだ。

 

 というわけで、早速転移魔法の開発を始めたセイヤだったが、今回はさほど苦労するとは考えていなかった。

 というのも、すでにアイテムボックスの魔法を作る際に、別の空間を作るという山を越えることができているためだ。

 もし、その空間に移動先となる場所の出口を作ることができれば、晴れて転移が成功したということになる。

「というわけで、出口をどう作るかということなんですが……」

 アイテムボックスの魔法は、扉を開けるように別空間への入り口を作っている。

 となれば、今度は逆の方法を使えば、別の場所への出口を作れるはずだとセイヤは考えた。

 

 出口の作成は思っていたよりも早く作ることができた。

 あとは入口から出口へ物を送り込めばいいだけの状態の空間ができている。

「この状態で物を送り込めばいいのですが……何を送りましょうか?」

 そう呟いたセイヤの視界に、エーヴァが用意してくれたすでに切られているリンゴが入ってきた。

 ちなみに、この世界ではリンゴはアプレと呼ばれている。

 ただ、セイヤにとってはリンゴのほうが分かり易いので、一人の時はリンゴと呼んでいる。

 

 切られたリンゴの欠片を手に取ったセイヤは、少し離れた場所へと移動した。

 そして、先ほど開発できたばかりの魔法を起動して、その欠片をそっと別の場所へと送り込んだ。

 するとその欠片は、しっかりと離れた場所にある皿の上に乗っていた。

「よし! これで成功ですね。あとは移動距離やら時間の短縮などを考えなくてはいけませんか」

 今のままでは、とても実用的とはいえない。

 何しろわざわざ対象の物を作った入口に送り込まなければならないのだ。

 出来れば、対象の物を触った時点で別の場所へと送れるくらいにしたい。

 ついでにいえば、自分自身や他の人間を送ったりすることもできるようになりたい。

 

 さらにいえば、いまはまだ視界に入っている場所にしか出口を作ることができていない。

 距離を伸ばすためには、目に頼る方法以外のことも考えなければならないのだ。

 それらのことを考えれば、まだまだやることは山積みだ。

 それでもまずは第一歩を進むことができたということで、セイヤの心はやる気に満ちていた。

 そして、セイヤが自分自身で試して長距離の転移魔法を完成させたのは、この日からそう遠くない未来なのであった。

というわけで定番中の定番の魔法の開発でした。

本編ではセイヤの魔法の開発シーンがほとんどないので、こういうのもいいかと思いまして。

このあとも魔法の開発シーンはなく、さらりと使っていたりしますw


※次話の更新は、いつも通りの本日20時になります。

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