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異世界で魔法を覚えて広めよう  作者: 早秋
第1部1章
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(10)爆弾発言と今後の予定

本日二話更新の二話目です。

ご注意ください。

 セイヤが魔法の研究に時間を費やしたお陰で、すぐに夕飯の時間が来た。

 セルマイヤー家では、王都にいるリゼ親子以外の家族は、全員集まって食事をすることになっている。

 特にマグスは王都と領地をいったり来たりしているので、家族との時間を大切にしているのだ。

 そんなわけで、セルマイヤー家の食堂には、いま領地にいる一家が勢ぞろいしていた。

 マグスの両親は、すでにふたりとも亡くなっているので、マグスが家長席に座って、あとは嫁と子供たちが席に着いていた。

 マグスから見て左側に、第一夫人であるシェリルとその子供たち四人が、右側にはアネッサとセイヤとなっている。

 この日はセイヤが儀式を行ったということで、話題はそのことから始まっていた。

 といっても、神様云々の話はしないことになっているので、行われている会話は、セイヤの成長を喜ぶ当たり障りのないものだけだった。

 

 いつものように会話が進行していくなかで、アネッサが爆弾を投下してきた。

「そういえば、マグス、シェリル。どうやら当たったようだ」

 唐突すぎる言葉だったが、声を掛けられたマグスとシェリルには、なんのことかすぐに理解できた。

 勿論、隣に座っていたセイヤもすぐに意味がわかった。

 マグスとシェリルは、一瞬驚きの顔になったが、すぐに笑顔になる。

「アネッサ、本当か!?」

「まあ! アネッサ、おめでとう!」

「うむ。本当のことだな。……なんだ、セイヤ。お前は喜んでくれないのか?」

 未だに驚いたままの顔になっているセイヤに、アネッサはわざとらしく悲しそうな顔を浮かべた。

 

 アネッサの言葉に、ハッと気を取り直したセイヤは、首を左右に振って、

「いえ。嬉しいです。……嬉しいのですが、むしろ驚きのほうが強くて……」

「そうなのか? お前のことだから素直に喜んでくれると思っていたのだが?」

 前世の記憶のことを知っているアネッサは、不思議そうな顔でそう聞いてきた。

 特別な理由が無い限りは、一人っ子であることが珍しいこの世界では、そう考えることは当たり前のことなのだ。

「私にとっては、初めての(・・・・)兄弟ですからね」

「そうだったか」

 セイヤの言葉に、一瞬虚を衝かれたような顔になったアネッサは、すぐに納得した顔になって頷いた。

 

 セイヤとアネッサの会話で、ようやく話の流れが分かったのか、シェリルにとっての長男であるアーロンが、嬉しそうな顔になった。

「本当ですか!? アネッサ母上に子供が?」

「「「えっ!?」」」

 兄の言葉で、それまでわかっていなかった長女のローラと次男のレオ、それに次女のサラが驚きの顔になった。

「ああ。明日にでも医者に診てもらうつもりだが、恐らく間違いなだろうな」

「「「「おめでとうございます! アネッサ母上(お母様)(母様)」」」」

 一斉にお祝いの言葉を言ってきたシェリルの子供たちに、アネッサは笑顔になって頷いた。

 

 その頃になって、ようやく実感がわいてきたセイヤが、アネッサを見た。

「母上」

「なんだ?」

「とても嬉しいです。それから、ありがとうございます」

 子供ができたことに対して「ありがとうございます」はおかしいとは思ったが、それでもそれは今のセイヤにとっての素直な気持ちだった。

 そのセイヤの気持ちを汲み取ったのか、アネッサは隣に座るセイヤの頭をなでながら目を細めた。

「お前にとっては初めての兄弟だからな。大事にするんだぞ?」

「当たり前じゃないですか」

 きっぱりとそう言い切ったセイヤに、アネッサは「そうか」とだけ答えた。

 そして、そのやり取りを見ていたマグスとシェリルは、顔を見合わせて同時に笑みを浮かべるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 食事を終えたセイヤは、再びマグスに呼び出された。

 今度は、シェリルにセイヤの話をしなければならない。

 ただし、事前の話し合いの結果、シェリルには前世に関する話はしないことにしてある。

 別に話をしなくとも特に必要が無いと、マグスが判断したためだ。

 

 セイヤとマグスから話を聞き終えたシェリルは、深くため息をついた。

「……儀式から戻って、なにをやっているかと思えば、そういうことでしたか。神と……」

 シェリルが驚いていたのは、魔法のことよりも神様と対面したという下りのようだった。

 どちらかといえば、シェリルは学生時代に神についての伝承を調べたり、信心深いところがあるのだ。

「はい。ただ、神といっても、恐らくこの国の守神ではないかと思います」

「そうなのですか?」

「あくまでも私の会ったときの感覚ですが」

 セイヤの説明に、シェリルは首を左右に振った。

「いえ。実際に対面した者の感覚はとても大事だと思います。確か、王都にある図書館の書物の中に、守神よりも上の位にある神の話があったはずです」

「そうなのですか?」

 そんな話を見たことが無かったセイヤは、驚いてシェリルを見た。

「ええ。ほかにない記述だったので、よく覚えています」

「そうですか。それは興味深いですね。でしたら――――」


 シェリルの話に興味を覚えたセイヤがさらに話を続けようとしたところで、マグスが割って入ってきた。

「待て待て。神様談義はあとでゆっくりしてくれ。いまはそれよりも重要な話があるだろう?」

「あら。そうですね。失礼いたしました」

 マグスの制止に、シェリルは貴婦人らしく頭を下げながら更に言葉を続けた。

「折角ですから、貴方が王都の赴いたときは、写本を頼もうかしら?」

 せっかくのお楽しみに時間を取られた代わりに、自分の望むものを要求する手腕は、さすが(?)というべきだろう。

 ちなみに、セルマイヤー家の書斎にある本の一部は、シェリルが持参してきたものもかなりある。

「うっ。……わかった。それで手を打とう」

 そして、シェリルにはめっぽう弱いマグスは、その要求をあっさりと呑むのであった。

 

 

 マグスの答えに満足げに頷いたシェリルは、改めてセイヤを見た。

「それで、セイヤ。魔法は、どの程度使えるようになるのですか?」

「正直なところ、私にもわかりません。そもそも、私自身まだまだ使いこなせていないので、他人に教えるどころではないというのが正直なところです」

 五歳児らしからぬ答えだが、すでにシェリルはそのことは気にしていないようだった。

 彼女の中では、神に遭ったという時点で異常事態なので、それくらいはあり得るだろうと受け入れているのである。

「そうですか」

「はい。ですので、期待している父上には悪いのですが、しばらくは自分自身を高めることに集中しようと思います。その中で、他の人に教えられることや教え方も学べるかと考えています」

「なるほど。確かにそうですね」

 セイヤの言葉にシェリルは納得して頷いたが、マグスはあからさまに残念そうな顔になった。

「むっ。やはりそうなるか」

「父上にはすでに魔力について教えてあります。まずはそこから感じ取れないとどうしようもありませんから」

 そもそもの根本が問題なので、こればかりはセイヤにもどうしようもない。

 いくらマグスが望んだとしても、これ以上はセイヤにも教えることが無いのだ。

 

 魔法についての研究が進めば、他にもとっかかりができるかもしれないが、いまは他に思いつくことが無い。

 そもそも成長した大人が使えるようになるのか、子供が使えるようになるにはどうすればいいのか、考えることは山ほどある。

 特に子供の場合は、行き当たりばったりで教えて危険が無いとは言い切れないので、慎重になりたいというのがセイヤの本音だ。

 結局、そのセイヤの要望に従い、今後の予定がこの場の話し合いで決まって行くのであった。

妹ができました!

生まれたあとセイヤは、この妹を溺愛していくことになります。

(といっても、普通の兄妹愛です)


次回の更新は明日の20時です。

次話からは、一日一話更新になります。

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