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本日、世界が堕ちました。  作者: 振釣いふと
世界の異変と魔力と異能
8/8

8 新たな事実が発覚したみたいです。

「あった、やっぱりこれがないと落ち着かないな」


 僕が拾い上げたのは赤黒く染まった傘。ゴブリンやオークなどの魔物が現れて以来の相棒だ。中学二年の時親に内緒で作ったものだ。超硬金属と呼ばれるタングステンを直接買い取り、町工場のおじさんに頼んで骨を作ってもらい防水加工の施された布を組み立てて作った。

 

 後で調べて分かったことだがタングステンは通常の金属と同じように溶かして加工することが出来ないほど融点が高いらしく町工場で加工できるレベルの素材ではないらしい。何者だあのおじさん。


 このころの僕は俗に言う中二病というやつだったが、「邪龍が~」とか「封印が~」などとは違うタイプだった。


 所謂「ゾンビが蔓延ったら」タイプだ。


 僕は昔から『ゾンビ』と言われるものに興味があった。

 そのため家ではよくゾンビ映画を見ていた。それを拗らせて中学二年の頃にはゾンビが出た時に備えていろいろな武器や道具を揃えるようになった。この傘もその影響でできたものだ。他には刃が出る靴や黒煙を出す時計等がある。

 一番お金をかけたのは眼鏡型の暗視カメラだ。この眼鏡はGPSを使うことで建物や遠くの景色を俯瞰することが出来る。あれを使い切るのはとても時間が掛かった

 ちなみに中二病の時期に作った全ての武器は傘を除いて弟にあげた。


 何はともあれ傘を作るために大金が全て飛んで行ったがそれだけの価値があると思う。


 傘は万能だ。棒術が使えれば立派な武器だし、フックとして山を登れるし、雨を防げる。


 初めにゴブリンと戦った時僕の身を助けたのはこの傘だ。しかも今では僕の立派な相棒だ。

 柄の部分を握りしめる。


「よし」


 軽く振って体の具合を確かめる。右手を動かすが違和感は全て無くなってる。少し前まではぐちゃぐちゃに潰れていてモザイク無しには語れない状態だったのに。

 ポケットのスマホを確認する。


「16時…か、あれから5時間くらいかな」


 学校を出たのが10時ぐらい、オークと戦ったのがそれから一時間経った11時頃、つまり5時間もの間僕は眠っていたことになる。それほど疲労していたということだろう。


 今回は本当に危なかった。『思考集中』でもとらえきれない速さだったし、攻撃は一発一発が致命傷に繋がるレベルだった。自分でもよく生き残ったなと思う。


「これのおかげだね」


 魔力を纏う、この技術はオークを真似たものだ。体を銀色の光が覆う。

 これはおそらく身体能力、治癒能力などの身体的な能力を強化することが出来る。さらに込め方を変えることで能力を重点的に上げたり、今さっきのように刃物のような性質を与えることができる。まだそのくらいしか出来ないがもっと応用できると思う。


 例えば索敵。魔力を遠くに飛ばすことで、ソナーと同じように生物の位置や形が分かるかもしれない。早速試してみよう。

 周りに何もいないことを確認してから座禅を組んで、目を軽く閉じる。自分の内側に意識を向ける。


 与える性質は波、イメージするのは音。


 体から薄く放出する。すると頭の中に立体的なイメージが流れ込んでくる。周りの壁や土飛んでいく鳥までもが鮮明に見える。なにより360度死角がないので不意打ちを事前に防げる。


 魔力をどんどん伸ばしてく。30メートルまでは余裕があったが50メートルを過ぎたところで胸のあたりから痛みが起こった。おそらく魔力が枯渇してきたのだろう。


「これはすごい」


 魔力を切って目を開けると感じ取ったイメージと寸分違わぬものが見える。というかむしろ魔力で感じ取ったイメージの方がより鮮明だ。10メートル程度なら数時間は広げていられるだろう。


 これらはおそらくこれから何度も使うだろう。流石に『魔力を広げる』、『魔力を纏う』だと長いからそれぞれ『魔探査またんさ』『魔鎧まがい』と名付けておくことにしよう。


 一通り確認を終えたので僕は近くの林へと走り出す。先ほどの魔探査に三つの反応が引っ掛かっていたのだ。反応の10メートルほど手前の木から気配を消して覗くと案の定ゴブリンが3匹火を囲んで肉に食らいついていた。近くに足の無い鹿の死体が転がっていることから人が食べられているわけではないことを察する。


 しかしこれは拙い。今までゴブリンとは基本単体でしか遭遇しなかったので複数相手にするのは初めてだ。またそれぞれのゴブリンが錆びてはいるが鉄製の斧や剣を持っている。


 「グギャギャガガガ」


 「グギャ」


 何を言っているかは解らないが、言語を話すほどの知能はあるのだろう。


 僕はそっと近くにあった拳ほどの石を拾う。右手に僅かに魔鎧を掛けた後、こちらの方向を向いて肉にかぶりついているゴブリンに投げる。石は目に突き刺さり周囲に血をまき散らす。腕だけの力で投げたにもかかわらずゴブリンはしばらく痙攣すると動かなくなった。


 それを確認する前に飛び出した僕は、未だに驚いているゴブリンの内剣を持ったゴブリンに切りかかる。


「グギャ」


 当たる寸前で気づいたゴブリンは素早く剣を抜いて、僕の傘を防ぐ。既に傘には弱めの魔鎧を掛けている。しかし流石に少しの魔力では鉄は切れないみたいだ。奇襲が失敗した僕はバックステップでゴブリンの間合いから遠ざかる。


 正面から見て気付いたが、革の鎧も装備していた。しかし首や腕などは守られておらず比較的軽装備のようだ。


 今度は剣ゴブリンの方から攻めてきた。間合いに踏み込むと同時に剣を横に振るう。僕は高跳びの要領で刃を飛んで躱すと同時にその勢いで傘をゴブリンの脳天に振り下ろす。足首まで地面に埋まったゴブリンは

そのまま後ろに倒れる。


 傘を振って血を落とすともう一匹のゴブリンに向ける。


「ググググググゥ」


 もう一匹のゴブリンは右手に斧、左手には光る玉を持って僕に向かって不敵な笑いを浮かべた。


「まさかっ」


 全力でゴブリンへと向かうが光球はゴブリンの身体に吸い込まれて光を発する。僕は眩しさで足を止める。数秒で光は収まりそこには大きめのゴブリンが立っていた。


「ゴフゥ」


 ゴブリンよりも若干低い声、少し引き締まった体、身長は僕くらい。つまり平均的な高校生ぐらい。色は相変わらず緑だが。


「ヤバいかも」


 危険を感じた僕は足に魔鎧を掛ける。


 最短距離を真っ直ぐに進む。三歩で大きめのゴブリン…ボブゴブリンの目の前まで来ると下から全力で傘を振り上げる。


「ゴギャア」


 思いの外小さい手ごたえと共にボブゴブリンが空中に放り出される。5,6メートル程飛んだ後僕の前に落ちてきたそれはもう瀕死だった。


「あれ、もう終わり?」


 呆気なかった。少し本気を出しただけでワンパンとは。


「これは、もうね、あれだね、チートだね」


 少しおかしな口調になってしまったが、そう思うのもおかしくはないと思う。それこそあの化け物のようなオークさんの光球を吸収したのだから。


 しかし魔物が光球を吸収できるのは、とても拙い。


 つまりそれは魔物も強くなるということだ。したがってすぐに他の皆の強化も進めないといけない。


 これからすることは魔力の操作の上達、他の皆の強化、そして僕の強化だ。ポケットから取り出したスマホにメモしておく。


 スマホをポケットに戻した後林から出て探索を再開する。


 しかし本当に人が居ない。所々に大量に血だけが残っている。おそらく死体はゴブリンによって食べられたのだろう。


「あ、」


 目の前には30階程のマンションがあった。そういえば去年近所にマンションが建った、みたいな話を聞いた気がする。早速中に入ろうとするが、もちろんドアは開かない。


 一度外に出た後、二階に向かってジャンプする。


「不法侵入完了」


 柵に足をかけ中へと降りる。


 そして建物の中心、15階へと進む。このマンション去年出来ただけあって未だ綺麗だ。確かこのマンションが出来たせいでこの町に住む人が増えて羽是高校への入学希望者は増え、そのせいで僕の勉強量が増えた。マンション許すまじ。


 などと無駄なことを考えてたら大体中心と思われる場所に着いた。


 そこで魔探査を大きく広げる。探査するのは短時間で良いので、魔力の消費は少なくて済む。瞬a時に100メートルほど広げすぐに魔探査を解除する。どうやら探査に使った魔力は体に戻して回復とはいかないようだ。体の外に出た時点で別の物になってるようだ。


 反応の方だが、マンションの中に5つあった。一つだけ反応がゴブリンとは違うようなので人だろう。


 反応は4階からだ僕はすぐに反応の場所に向かう。途中のゴブリンにはマンションから強制ひもなしバンジーをしてもらったドアの前まで来ると、初めての生存者に少しの喜びを覚えながらもドアを開ける。


 空いたドアの隙間から刃が飛び出す。超近距離で放たれたが脳へとその情報が送られる頃には『思考集中』を発動していた。視界はモノクロに、音はスローに切り替わる。その中で鼻先まで迫った包丁を掴み取る。それと同時に視界と音は元に戻る。それと同時に僕は小さな襲撃者に目を向ける。


「ひぃい」


 怯えた子供がそこにいた。微妙に色の抜けた短い髪と綺麗な黒目が潤んでいる。年は7,8才ぐらいだろうか。


「お父さんかお母さんは?」


 できるだけ怯えないように優しく問いかける。


「お父さんは生まれた時から居ない」


「お母さんはどうし…」


「お母さんはゴブリンと一緒に飛び降りた」


 おそらくこの子を守るために道連れにしていったのだろう。子を守る母は偉大だ。


「そっか、じゃあこれからは僕が守ってあげるからね」


「やだ、どうせみんな鬼に殺されるんだ!!」


 まあそうなるだろう。人が目の前で死んだという事実は幼い子供には大きい、そう簡単には信用できないだろう。


「ならここでその鬼に見つかって殺されるのを待てばいい、僕は死にたがりを救うほど余裕はない」


 実際無理やりに連れて行っても得は何もない。もう今までのように人権が保障された世界ではないのだから。あとそもそも…。


 そこで後ろからの反応を察知して振り向くとゴブリンがいた。さっきの声で近くにいたものが集まってきたようだ。


「一応言っておくけど、僕は鬼より強い」


 その言葉と同時に傘の持ち手をゴブリンの首に引っ掛けて壁へと叩きつける。脊椎が折れゴブリンは動きを止める。壁には小さなクレーターが出来た。


「ねっ、言った通り」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 僕は今夕日に向かって歩いている。背中には先ほどの少年を背負っている。結局あのマンションにいたゴブリンは全て殺した。それを見た少年は僕についていくことを決めいろいろ話した後意識を失うように眠った。今は高校へと運んでいるところだ。


 やはりこの子は結構強烈な体験をしていたようだ。


 あのマンションでゴブリンに襲われそうなところで母親が横からゴブリンにタックルしてそのまま、というやつだ。道路のシミになった母親を見て何を思ったのだろうか。僕には計り知れない。


 帰る途中で拠点で必要な道具の入手を頼まれていたのを思い出し、ホームセンターに寄ってから羽是高校へと帰った。



 


 


 

お読みいただきありがとうございます。

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