7 敵は二番手みたいです。
すみません
最近忙しくなってしまい前の投稿から大分時間が開いてしまいました。
すぐ敵の接近に気付いた僕とは違い、オークはまだ気づいてないようだ。僕とは違う方向を向いているのを良いことに、素早く懐に踏み込む。そしていつもに様に傘を握る手に力を入れることで右手から光が溢れる。その光を叩きつける……がそこにはオークの姿はなく、役目を失った傘は地面にめり込む。
「フゴッ」
目に留まらない速さで背後に回ったオークは僕の背中に拳を打ち込む。拳が当たる瞬間に体を捻ることで衝撃を和らげるもコマのように空中を回転した後地面に叩き付けられる
ここまで酷いダメージを与えられてもかすり傷しかつかない身体に驚きよりも呆れを感じる。そんな無駄な思考をする余裕はなく、オークが今度は足を上げている様子を見て咄嗟に飛び退く。僕のいた地面には罅が入っていた。
「危なっ、これは出し惜しみする暇はないかな…『思考集中』」
意識が一気に深いところまで沈む。ゴブリンの光球を吸収しまくったおかげかいつもよりゆっくりに感じる。これでオークの動きも把握できる。目の前ではオークが体重を前に移し、足の筋肉を膨張させ、屈んで、
視界から消える。
「なっ!!」
驚く暇もなく目の前に現れた浅黒い拳に腕を十字に構えるが、体全体で巻き込むように繰り出されたフックに僕の腕がメリっと嫌な音を立てる。
数メートルほど吹っ飛び左手で地面を引っ掻くようにして勢いを無くす。そして右手の感覚が消えていることに気付く。
「これは危ないかも」
右手はオークのフックを受けたせいで車か何かに轢かれたのではないかというほどにずたずただ。
こんなにファンタジーのオークって速く動けたのか。もっとどっしりとして遅いイメージがあったけど。
「目じゃ捉えきれない、なら」
———————先を読むだけ
できるだけ早く動くために、血塗れた傘をオークに投げつける。そこでオークに僅かな隙が生まれる。
僕は速さでは敵わないと分かりつつも、先に攻める。そうすることで迎撃するよりも相手の動きが制限されるからだ。
僕の身体がオークまで至った頃には、オークは傘を払い除けて、二つの拳を構え正面から僕を迎え撃つべく拳を固める。
それを読んだ僕はオークと自分の間の空間を殴るようにフックを繰り出す。
オークと僕の拳が目の前で直角に交わる。その作用で僕はオークの拳を右に逸らした。さらにその反作用で回転した僕はその勢いを殺さずに足を振り上げてオークの太ももに体重の乗った蹴りを放つ。
これが本当の『作用・反作用』の法則だ。
「ブゴー!!」
自分でも驚くぐらい綺麗に決まった蹴りは、オークに小さく無いダメージを与えた。明らかに動きが遅くなっている。まだ僕よりは速いが捉えられないことは無い。
僕はオークに地道にダメージを与えていく。少しずつだが動きは鈍ってきている。しかし力は有り余ってるようで一歩間違ったらそれは死に直結する、その恐怖が僕に纏わりついてくる。
そんな状況の中よくここまで持ったと思う。しかしこの世界はやはりすべてに対して公平だった。
こちらも体力が限界近くなったがもうすぐで仕留められるというところで突然オークが激しく吠えた。
「フガフゴーー!!」
怒りの籠った叫びに思わず体が硬直する。こちらを振りむいたオークはこれまでよりも元気そうでよく見るとオーラが溢れている。
「あれってまさか」
同じだ。色はどす黒く、量も少ないが間違いなく僕の出す銀の光と同じ類のものだった。
「魔力…」
これを見れば皆同じことを思うだろう。それ以外の表し方が浮かばない、まさに魔の力だった。
そして魔力は名前に劣らぬ力を発揮した。今まで少しずつ蓄積していったダメージが無かったかのように、いやそれよりも速くなったオークの拳はいつ殴られたのかも分からないうちに僕を吹き飛ばした。
目紛るしく景色が変わる。ジェットコースターと同じぐらいに回転した後建物のガラスを破り壁に打ち付けられる。
「痛っ、くそっ」
余裕がなくなり、珍しく暴言が漏れる。あんなの勝てるわけない。僕が『思考集中』を使っても目が追い付かないほど速く僕より力が強いうえに僕と同じように魔力まで使われたら…!
「僕と同じ、魔力……」
僕は今まで魔力を切断することにしか使っていなかった。しかしそれを体に纏えば
「いける…かも」
拮抗することは出来るはず。
僕を追い詰め返したことが嬉しいのか誰でもわかるようなニヤニヤした表情を顔に張り付けてオークは一歩ずつゆっくりと迫ってくる。
僕はまず魔力を体の外に出す、これは成功した。しかし体に纏うというのが意外と難しい、いや纏うことは出来るのだが、ただ体の周りにあるだけという感じだ。
確実に迫ってくる死に怯える暇もなくもう一度魔力を練り直す。自分の魔力とオークの魔力を見比べて違いに気付く。
「染み出てる…?」
そう、僕の魔力は体の周りを渦巻いている感じだが、オークのは体から染み出ているそんな感じがする。
つまりオークは体の内側に纏っているという矛盾したことを行っているということだろう。
種が分かれば簡単だ。僕の唯一の長所である集中力を生かせば、
「出来た」
青い銀をまとった左手があった。ついでに右手にも纏ってみる。
「おお、動く動く」
オークを見て気付いたがある程度のダメージを回復するみたいだ。エグイ状態の右手が動く様子はある意味ホラーだが動かないよりましだ。
僕の元気そうな様子を見てオークは首をかしげるが体に纏われたものを見て少し目を見開く。
「そうそう、その顔が見たかったんだ」
ドSみたいな台詞と共に繰り出した拳をオークは慌てて避けるが続く打ち下ろすような蹴りに側頭部を揺らされ平衡感覚が狂う。
「ッフンゴー!」
しかしその状態から勢いよく拳を振り回す。避け損なって肩に当たったが思いの外痛みは少ない。少ないのだがそれは今までよりということであり痛みがないということでは無い。
実力が拮抗している事実に少し頬をほころばせる。が、すぐに命の駆け引きを行っていることに気付き気持を引き締める。
またオークが「フガー」か「フゴー」かよく分からない声を上げた飛び込んでくる。ここで僕は体に纏った魔力はそのままに腕の魔力を増やす。そしてオークの拳を受け止める。
少し押され気味だが受け止めた左手に痛みはない。やはり魔力の量によって強化の度合が変わるみたいだ。
思った通り魔力は自由度が高い。試しにまた左手の魔力を増やし、今度は溢れる魔力ごと集めるようにして纏う。金属のように光沢を放ちつつも、向こう側が透けて見えるそれは溜息を吐きそうなほど綺麗だった。
刃のように鋭くなったそれで、オークをすれ違いざまに切る。
数秒の静けさのあとオークの身体が血飛沫を上げながら崩れ落ちる。
「やっと、倒した」
フラフラの身体でオークから飛び出した光球を握る。ゴブリンよりも二回りほど大きな光球はいつもより長い時間をかけて僕の身体に吸い込まれて消える。
いつもより酷使した身体は限界を訴えておりコンクリートの壁を背にすると途端に眠気が襲ってきた。
「少し休もうかな」
外で寝ることの危険を分かっているためできるだけ意識を保ったまま僕は瞼を閉じた。
これからも
週一のペースで投稿しようと思っていますが少しずつ一話ごとの分量も増やしていこうと思っています




