5 拠点を作るみたいです。
五話目です。
自分の力を確認した僕は1階の職員室にある冷蔵庫から食べられるものを拝借してきた。
僕が階段を登り切った頃には全員揃っていた。
「葉暮クン、もうみんな揃ってるよ」
「ごめんごめんじゃあ早速皆が集めたものを見せてもらってもいいかな」
「じゃあ私から言うよ」
みんなの視線が桂さんの手元に集中する。
「この懐中電灯」
パチパチと数人が拍手をする。
流石桂さんナイスチョイスだ。明かりがあれば夜の活動や、見張りなどもしやすくなるだろう。
「次は俺だな、俺はこの毛布だ」
禿げたおっさん(高宮さんだったはず)は十数枚ほどの毛布を自慢げに見せつけてくる。
「もうふだ~~~~」
「そうだ毛布だぞー」
ここへ来る途中で助けた小学生の女の子が嬉しそうに声を上げる。この女の子は両親も一緒にいる。
僕はほのぼのとした顔でそれを見守る。
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あの後ガスコンロや鍋などの調理器具、手回し発電機、そしてゴブリン対策の包丁など必要なものが多々揃った。
そして最後には、
「これ、か」
皆が唾を飲み込む音が聞こえる。
僕の手元にあるのは直方体で、長い鉄製の棒が取り付けられている表面は銀色だが二か所ほど円形の鉄製の網が取り付けられている
「ラジオ」
「葉暮クン、どうする」
「聞くしかないよね、今の状況を知るためにも、助かるためにも」
たとえこれを聞いて希望が無くなるのだとしても。
僕はラジオの電源を付けてつまみを捻って周波数を調節すると雑音の混じった声が聞こえてくる。
『九州…方、…海道地方などで緑の…物が暴れているとい…ことです、さらにこの生…はほかの地方でも確認されてい…そうです、また政府は九州地方の…民の救出は困…とのことで国民…非難も相次いで…りー』
僕はラジオのスイッチを切る。皆の顔は絶望だけが張り付いていた。
「何とかなりますよ」
「何とかってなんだよ」
咄嗟の励ましも切り捨てられて僕は黙ってしまった。
「だいたい最初から無理だったんだよ!!」
「あんな生き物が相手なのに勝てるわけがない!!」
「あんたは勝てるからいいよな」
口々に文句を述べる。雰囲気が悪くなっている。これは僕が何を言っても悪い方向に傾く。仮に『助ける』と言えば、僕に依存することになる。しかし『助けない』といえば亀裂が生じる。僕が頭を悩ませていると、
「方法はありますよ」
桂さんはどや顔で皆に言った。
「まず一つ目の条件としてここで生きることが出来れば問題ないんですよね」
「まあそりゃそうだな」
「それなら、緑の生物、ゴブリンがいても問題ないくらいに強くなればいい」
それは前から思っていたことだ。
「葉暮クン、あの光の玉を葉暮クン以外が使うことはできる?」
「やってないからわからないけどできると思う」
桂さんの振りに内心驚きながらも答える。
「なら、葉暮クンが倒したゴブリンの光の玉を皆が貰えばいいじゃないですか?そうすればゴブリンを倒せるようになるかもしれない」
簡単な話だった。そして確実な話だった。
「僕ができる限りサポートするからやってみませんか?」
「それなら俺たちにも出来そうだ」
皆は納得したみたいだ。その後自分の失態に気付きいたようで
「すまん、さっきは気が動転してた」
「自分が死ぬんじゃないかって思うと怖くて」
「もうそのことはいいんで明日に備えましょう」
僕の言葉でみんなは安心してと言って毛布を被っていく。
「今日は俺らが見張りするからみんな寝ていていいぞ」
「葉暮へのせめてもの罪滅ぼしだ」
男三人組が隣の警備室へと向かっていく。
「電気消しますよ~」
女性の声と共に部屋が闇に包まれる。
一時間ぐらいたった。
どこか遠くからフクロウの声が聞こえる。
時計の針の動く音がどうしても耳に入ってきて眠れない。
「桂さん起きてる?」
「葉暮くん起きてたの?」
「ちょっと眠れなくてね」
「そう」
少し落ち着いてきた。
「ありがと」
「ふふっ、どういたしまして、少しでも恩返しできたかな」
「うん、すごく助かった」
あの時は桂さんのフォローのおかげで助かった。
少し話したおかげで緊張が解けた。
「おやすみ、明日も頑張ろう」
「うん、あしたから忙しいからね」
今度は何も耳に入ってこない。心地よい疲れに身を任せて僕は意識を闇に落とす。
おやすみ
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