言葉の表裏
僕は下を眺めている。
「君には下の世界がどう映るかね?」
誰かに話しかけられる。
「汚いね。特に中身が。」
「そうかね?私には美しく見えるのだが。」
「どんなに美しく見えてもそれは見掛けだけでしょう。」
「見掛けだけ、とは言ってもやはり美しいものは美しいですよ。」
「あの山ですか?」
「はい。美しいですね。緑から赤へ、赤から黄へ、そして消えていく。なんと果敢無く、心魅了されるものでしょうか。」
「確かに。しかし、そんなきれいな自然を壊す人間の心が汚いと言っているのですよ。」
「壊していくのも事実ですが、直そうと努めているのも事実ではないでしょうか?」
「結局は自分たち人間が助かればいいと思っているに違いありませんよ。」
「どういう意味ですか?」
「今まで散々、地球を汚し、放置しておいた人間が、なぜ今更地球をきれいにしようとするのでしょうね。」
「地球温暖化によって海面が上昇し、地上が無くなる恐れがあるからですよ。」
「あなたも分かっているじゃないですか。結局、可愛いのは自分なんですよ。守ろうとしているのは、一見地球の環境というように見えますが、実は自分たちなんですよ。」
「つまり、地球の環境がきれいになることは結果であって、目的ではない、ということですね。」
「そのとおりです。」
「それにしても自分たちを可愛いと思ってないのか、地球の環境を守ろうとする上辺のキャッチフレーズに参加しない人たちは、私には少々理解しがたいですね。」
「何を言っているのですか?参加しない人たちはただの馬鹿ですよ。」
「なぜです?」
「環境を守ろうという言葉が上辺だけ、ということを分かっていないからです。」
「なるほど。あの人たちには地球の環境を守ろうと言っている人たちが、本気で地球の環境を守ろうとしている人たちに見えるのですね。」
「中にはそういう人たちもいるでしょう。しかし、大半の人たちは「誰が特にもならないのに非営利で働くかよ。」と思っているに違いありません。」
「かわいそうな人たちですね。」
「他人事ではありませんよ。僕たちも、海面が上昇して地上がなくなってしまっては、日頃の楽しみがなくなってしまうではないですか。」
「それは嫌ですね。それでは私たちも地球の環境を守るのに協力しますか。」
「まず手始めに、あのデブが触っているPCの電源を切ってあげましょう。電力の削減です。」
「それはいい考えですね。しかし、PCだけが消えたら不自然なので、家のブレーカーを落としましょう。」
「ふふっ。あのデブ、急に腰を振るのをやめましたね。体がプルプル震えてきましたよ。」
「なんと。大声で奥方を怒鳴っているではありませんか。」
「聞こえてくる限りでは、「せっかくいいところだったのに!今度メイド喫茶連れて行ってくれないと許さない!」と言っていますね。」
「それは怒っているのでしょうか?いまいち理解不能ですね。」
「まぁなんにせよ、これで少しは地球にやさしくなったことでしょう。」
「そして、私たちの目にも優しいので一石二鳥ですよ。」
今回は渡にこの世は汚く映ってしまいましたね。
地球の環境はみんなで考えていくことが必要ですね。
また、決してこの作品はデブを馬鹿にしているわけではないのでご了承ください。