プロローグ
短編で終わらせる予定です!
稚拙な文章ですが、是非読んで頂けると幸いです!
一度は夢を見た。
それなりに努力して、それなりに目標を立てて。
時には順調に進み、それなりに精進したと確信を得ていた。
だが、それは所詮一時に過ぎなかったのだ。
「……また、ブービーか」
俺ーーー櫻井尚人は眼前の順位表を一瞥して、特に意気消沈することなく、ただ口癖のように呟いた。
「えー、これから第三回大湘南CCジュニアオープンの表彰式を執り行います。選手は二階の食堂へお集まり下さい。繰り返します。これからーーー」
場内スピーカーから、女性の案内音声が流れている。
ぞろぞろと多くの人がクラブハウスへ入っていく中、俺は、逃げるように駐車場へと向かい、親が待機していた車に乗車した。
「どうだったの?」
母親は、いつものことのように、一言だけ言葉を発した。
「いつも通りだった」
俺も機械のように返答して、シートにもたれかかった。
「そう。じゃ、決まりね。帰るわよ」
「うん」
それから、お互いに会話もせず、俺は目を瞑って寝たふりをしていた。
いつも通りだ。だけど、もう終わりだ。
何の変哲もなく、俺の孔球人生は終焉を迎えたのだった。
◎◎◎
始まりは、普遍的なものだ。
古めかしいブラウン管のテレビに映し出されたワンシーンは、俺に鉄製の棒を握らせる糧となった。
父親の錆びれたクラブを練習場で振り回し、小学校を卒業する頃には自前のクラブセットを一式用意して、コーチの指導の下で、型を身につけていった。
その頃は楽しくてしょうがなかった。
振り上げたクラブを振り下ろして面にミートして、思惑を成功させた時の感覚は、ゴルフというスポーツの虜にさせるのに十分な材料だった。
やがて、練習場だけでなく、緑の広がる広大な土地で、芝生を踏みしめ、本来のゴルフをするようになり、数々の試合に出場するようになってきたのだが、徐々に頭角を現す訳でもなく、中の中程度のスコアメイキングのみに留まり、数年が経過する頃には、全く楽しめなくなってしまっていた。
別段、嫌いになったということではない。ただ、周りから仕方なくやっていると捉えられるようになるくらい、打ち込み度が低下してしまったということだ。
当然、そんな態度をしていたら、親に叱責されるのは丸分かりだろう。
これまでに何度も喧嘩をした。主に母親とだが。
度重なる口論の末、今回の試合で結果を示さなければ、金輪際ゴルフをさせないという母親の一存を承認したがゆえに、俺は磨り減ったグリッブを握り締めることを放棄した。
そして、それから三年後。俺は、中堅レベルの私立大学に入学し、一年と半年が経過しようとしていた。