2-3村での生活(2)
ネット環境の整っていないところに行っており、更新できませんでした。その代わりというのも変ですが、その間に書きためた物があるので、次はすぐに更新できると思います。
村長とともに玄関まで出るとがっしりとした体つきの男性が毛皮に包まれた何かを持って立っていた。先程のユーリアの話を聞く限り、この人がディアスで、ダーレンが手配した村の猟師の一人なのだろう。
「遅くなってすまなんだな」
「どうってことないですよ、村長。これダーレンに頼まれた狼の肉と毛皮です。しかし、こんなのどうしたんですか?村の猟師でもそうそう取れるようなもんじゃないですよ」
「そうなんですか?」
良介が口をはさむ。ディアスは怪訝そうに良介の方を見ながら村長に訪ねた。
「なんなんですか? この小僧は」
「この者はリョースケ=アサイといって、なりたての旅人といったところかの。それを狩ったのもリョースケ殿じゃ」
「村長、担がないで下さいよ。こんなひょろひょろの青ビョータンに壮年のはぐれが狩れるなんて誰が信じると言うんですか」
良介はカチンときたが、客観的に見て自分が狼を狩れるようには思えないので、そういわれるほどの相手だったのだと考えを改める。
「冗談ではなく、リョースケ殿が狩ったのじゃ。しかも無傷で。当然とは言わんまでも、無理ではないのじゃよ。アーノルド様の弟子なのじゃから」
「魔導王と呼ばれる“あの”アーノルド様ですか!? それ先に言ってくださいよ。それなら確かに無理ではないですね」
ディアスは良介の方に向き直り、じっと見つめる。
「……。やっぱそんな風には見えねえけどな。魔法使いってのはそういうもんかねえ。ま、よろしく頼むよ」
「あ、よろしくお願いします。ところで、猟師でもそうそう狩れるものじゃないって、どういうことですか?」
「あん? まあ、普通知らねえか。狼は大体2,3才で群れを離れてそれから一匹で生きるか小さい群れを作るか。一匹で生きるやつは他の動物や魔物に襲われてその九割が5才を迎えずに命を落とす。だからそれを逃れて生き延びたはぐれ狼は狡猾で強くなる。あの狼は7,8才ぐらいだったから、場合によっちゃ訓練を受けた人間でも後れをとることがある。尤も、数が少ないのと集団を相手にしないのが最大の理由だな。じゃあ、俺はこれで」
説明を終えるとディアスは村長と、序でにといった感じで良介に挨拶して去っていく。
ディアスの説明によると、狩る機会がほとんどないのが主な原因だが、実力として高い物を持っているのは間違いない。その事実には良介も少しうれしくなる。序ででも挨拶をされたのは認められたからかもしれないと、勝手に思った。
捌かれた狼の肉は食卓に提供され、夕食のメニューが一品増えた。思ったよりずっと美味しかったが、夕食のメニューはどれもこれも美味しかったので単にユーリアの腕が良いだけなのかもしれない。
あてがわれた部屋に行ってみるとベッドと簡素なつくりの机、椅子が置いてあった。というよりそれしかなかった。しかし、窓があり、掃除も行き届いているため快適な環境で、良介には全く気にならなかった。
日は完全に地平線の下へと落ち、明かりと言えば月と星のみ。早く寝るのが習慣なのか、隣家から明かりがもれてくることもなかった。そんな暗闇の中いくらなんでも寝るには早いと、何をするでもなく良介はボケっとしていた。
何故かはわからないがふと思い立ち、《自己開示》を使ってみる。パーソナルカードはそれ自体が淡く発光しているので見る分には何も困らなかった。
浅井良介 人間 男 17歳
【魔法使いの弟子】 LV1
筋:D- 体:D 器:D+
敏:D+ 魔:C 信:D-
良介は出てきた自分のパーソナルカードを見て違和感を覚えた。が、すぐに解明される。敏がDだったのがD+になっていたのだ。違和感は解明されたが、今度は疑問が生じた。何故高くなったのかと。こちらの方は考えてみても答えは見つからなかった。
田舎の例にもれず、オールトールも早寝早起きを地で行くらしい。窓からあたりを見渡すが、光どころか音も漏れてこない。聞こえてくるのは遠くで啼くフクロウに似た鳴き声ぐらいだ。
良介はまだ知らないが、これは田舎の村に限った話ではなく一般的なことなのだ。流石に貴族の屋敷では蝋燭を使って夜を明るくすることはできるが、庶民には松明でさえもコストパフォーマンスが悪い。光魔法を利用した魔法道具も存在するが、Xファイル物件だ。だからそれらの品は日用品ではなく、贅沢品の分類だ。
窓から入った日の光によって良介は目を覚ました。一階に下りると村長夫妻は一仕事終えてきた後といった表情だった。
「ようやく起きてきたのか。リョースケ殿は朝に弱かったかの?」
「昨日着いたばかりで疲れているのよ。ゆっくりしていればいいのよ」
村長は冗談めかして嫌味を、ユーリアは擁護を口にする。
「え、あ、師匠の家は日が高くならないと明かりが入って来なかったのでいつものように明かりを頼りに起きたらこの時間ですよ。すみません」
良介はこれでも早く起きたつもりだったが、遅かったらしい。本気で早寝早起きをせねばと心の誓った。