1-4村へ行く前に(3)
PV200越え、ユニーク100越え、お気に入り登録ありがとうございます。
長らくチュートリアルにお付き合いさせてしまい申し訳ありません。今やっておかないと良介君が簡単に死んでしまうので。
しかし、このチュートリアル状態も後2,3話で終わります(今話含めて)。ですので良介君のこれからの活躍に期待しながら(私の文才に期待できないかもしれませんが)、今しばらくお付き合いください。
「古の盟約の下、我、他者へと自らの情報を開示する。≪自己開示≫」
良介は≪詳細サーチ≫を使ったことで消えてしまったパーソナルカードを詠唱して再表示する。先程のは失敗と見なされ(実際に失敗だったが)、詠唱なしで表示することはできなかった。
今度はあっさりと表示されたパーソナルカードに安堵し、ついでに[封札]カードをつけてみた。
――――キンッ――――
甲高い金属音とともに[封札]カードがはじかれた。突然のことで良介は何が起きたのか分からなかった。
「え?」
「良介殿、≪封札≫は【封札士】専用のスキルじゃぞ。専用スキルの指南書カードはその称号付けておらねば装備できんからの」
良介は驚いたことを恥じた。≪封札≫が専用スキルであることはさっきカードを見て知っていた。専用なのだから称号が必要ということも簡単に分かる。実際、【封札士】を装備してから改めて重ねるとあっさりと受理された。
良介は試しに≪封札≫を発動してみる。こちらも≪詳細サーチ≫と同様、詠唱不要のようだ。≪封札≫を思い浮かべると、パーソナルカードのようなものが浮かび上がる。見出しは対象選択で、リストアップされた内容の多さに、カードに書かれていた「あらゆるもの」の意味を理解した。文字通り「あらゆるもの」だったのだ。
「何これ……?」
良介は対象のあまりの多さに驚きと呆れの混じった声を上げる。何せ、そこらへんに落ちている、カードにしてもどう使えばいいかわからないような木切れから、果てはアーノルド(オーランド=ザッハーク)まで百は下らない量だったのだ。
「どうしたのじゃ?」
「あ、いえ、試しに≪封札≫も使ってみたんです。そしたらこれ……」
良介は、戸惑いながらアーノルドに対象リストを見せた。
「ほっほう、多いのう。なんと! わしまで対象になっておるのか。ほっほっほ。まさにあらゆるものじゃな」
アーノルドは驚きながらもどこか楽しそうに笑った。
「どれ、何か一つカードに変えてみてはどうじゃ?そうじゃのう……、これを変えてみい」
そう言ってアーノルドがとりだしたのは紙状の物によくわからない文字が書かれた物、いわゆるお札だ。
良介が対象リストに目をやると、全部見たわけではないが、新たに呪符(失敗作)という項目が追加されていた。
「あの、失敗作ってなんですか?」
「ああ、これはのわしが初めて作った呪符で、失敗したんで戒め代わりに持っておった物じゃよ。そこらに落ちておる木切れより価値のない物じゃ。わしにとっては実物じゃろうとカードじゃろうと関係ないからの」
良介は少し心が痛んだが、アーノルドの好意に甘えることにした。
良介は対象リストから選択して、≪封札≫を発動させる。すると呪符が光を放ちながら変化していく。体から力が抜けていく感覚とともに光が収まっていき、完全に収まると、もともと呪符があった場所にい一枚のカードが落ちていた。
[呪符(失敗作)](その他:なし)
「成功したようじゃな。ふむ、神の贈物の効果も確かめれたことじゃし、明日は村にでも行ってみるか?」
「あ、そのことなんですけど、俺今までに戦いとかしたことながないんです。だから、村に行く前に経験しておきたいんですけど、だめですか?」
「いや、構わんよ。むしろ感心じゃな。自分の弱みをさらけ出して教えを請えるのは立派な資質じゃぞ。それなら、いくつか簡単な魔法を教えておこうかの。良介殿は魔法使いタイプのようじゃし」
そう言ってアーノルドは本棚をあさり始めた。
「おっと、有った有った。これを使うとよかろう」
アーノルドが良介に差し出した物は「一番最初の魔法技能」と書かれた本だった。ぼろぼろさ加減が年季を感じさせる。
(あれ? 何でこんなのが?)
良介はおかしなことに気付いた。古代龍種であるアーノルドが初めて魔法技能を使えるようになったのはこの本が出るはるか昔のはずだ。弟子用の可能性もなくはないが、少なくとも大魔法使いに魔法師事するような者が使うようなものではない。
良介が不思議そうにしていたからなのか、アーノルドが説明を加える。
「それはの、わしが魔法研究をするときに使っておった物じゃよ。今では全て頭に入っておるから持っていっても構わぬ」
良介は本のページをめくっていく。タイトルからして分かっていたが、明らかに子供向けの書物だ。文体がちょっと鬱陶しい。
「本来なら精神統一をして、魔力を高めてからやるものじゃが、良介殿の場合はせずとも好かろう。その中の呪文をどれか唱えてみよ。どれでも簡単に使えるはずじゃ。おっと、雷系はやめておくれ。室内ではその建物に落ちるだけじゃからの。住み慣れた一軒家を燃やされてもかなわん」
良介がちょうど開いていたページの呪文を唱え始める寸前にアーノルドが制止した。偶然にも良介が開いていたページには雷系の魔法が乗っていたのだ。
別のページを開いて、改めて呪文の詠唱を開始する。
「古の盟約の下、我ここに敵を討ち果たさんとする氷点下の槍を招請する。≪アイスニードル≫」
良介には気づきようもないが、詠唱が進むにつれ周囲の魔力が良介へと集まっていく。詠唱が終わった瞬間、アーノルドが対象にと用意した蝋燭が氷の槍にさらされる……ことにはならなかった。
その結果に良介だけでなく、アーノルドも目を見開いた。
またか、と思われるでしょうが、またです。しかし、理由は別の物です。
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