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1-1神様の気まぐれ

(ここは、どこだ?)


 うっそうと茂る森の中。浅井良介あさいりょうすけは、気がつくとそこに立っていた。

 良介は現状を思い出そうと頭をひねる。しかし、ここがどこなのか、何故ここに立っているのか、何一つ分からない。

 思い出せる範囲で直近と思われる記憶では、学校から家への道のりを歩いていたはずだ。今の格好と見比べても、記憶が間違いでないことは確かだ。


「おお、おお。本当に来おったわい」


 良介は突然背後から掛けられた声に驚き、勢いよく振り向く。そこには長い白ひげにフードつきのローブを身にまとった、魔法使い然とした老人が立っていた。

 不審で仕方ないが、ここがどこかもわからない現状では他にどうしようもない。幸い言葉は通じそうだ。その上、相手の言葉ぶりを鑑みるに、少なくとも良介に何か思うところがあるようだ。


「あの、ここはどこなのでしょう。気が付いたらここにいたのですけど」


 良介は丁寧な口調で話しかける。もともと、初対面の相手には丁寧に話す良介だが、何も分からない現状で、何か情報を知っていそうな相手の機嫌を損ねるわけにはいかないという心理も働いた。


「ここか?ここはティルエラの森じゃ。それよりも、こう言った方が分かりやすいかのう、異世界と」

「は?」





「……と、言うわけじゃよ」


 立ち話もなんだということで、良介は近くにあった老人の小屋へと案内され、そこで話を聞くことになった。

 何とか現状を把握することができた。しかしその内容は到底理解出来るようなものではない。老人(アーノルドと名乗ったが偽名らしい)の言によると、リョーナースキーとかいう名前の神様の思いつきでこの世界に連れてこられたらしい。帰る方法はただ一つ、そのリョーナースキーに帰還を納得させることだけだとか。

 良介は、あまりの現実離れした話しに、最近ちまたではやりの小説の話かとも錯覚した。しかし、そこでふと思った。


「ここが異世界だとおっしゃられましたが、もしそうだとしたら言語体系も大きく違いますよね? 会話ができるのは不自然じゃありませんか?」

「言語理解の宝玉があるからじゃろ」


 良介の疑問は端的に答えられた。アーノルドは首からぶら下げられた透明な球体を指している。あれが言語理解の宝玉なのだろう。


「……ということは、本当に異世界?」

「さっきからそう言っておるじゃろうが。しかたあるまいか。そなたの世界は科学文明、この世界は魔法文明なのじゃから。いや、それ以前に世界を渡ったこと自体が信じられんか。信じるにせよ信じないにせよ、これから暮らすことになるのは間違いないのじゃから観念せい。多少の常識は教えよう。実際に肌で感じた方が分かりやすいとは思うがの」



 それからしばらく根底部分のレクチャーが行われた。この世界はほぼ地球と同じ形・気候をしていること、科学の発展は乏しく、魔法の発展が著しいこと、通貨は金銀銅三種類の硬貨からなり、銅貨百枚が銀貨一枚、銀貨百枚が金貨一枚に相当すること、ひと月の生活費が金貨二十枚もあれば足りることなど、さまざまなことを教えてもらった。しかし、時間の流れ方については日の出から次の日の出までが一日、三十日で一か月、十二から十三カ月で一年というくらいの精度しかわからなかった。


「ふむ、まあこの程度知っておけば事情を知らぬ人に物を訪ねても困らんじゃろうて。後は人波にもまれて慣れていくほかないのう」

「ありがとうございます。ところで、俺の最終目的になると思うのですが、どうやったら神様に帰還を納得させられるのでしょう?」

「さあのう。それはわしにもわからん。ただ、リョーナースキー様は退屈なことを嫌っておれるそうじゃ。何かしらの刺激を与えておればそのうち納得してもらえるのではないかな」

「そうですか……。では、早速近くの村、オールトールでしたっけ? にでも行ってみます。いろいろとお世話になりました」

「まあまあ、あわてるでない。村へ行くことに反対はせんが、先立つ物がなければ行きつく先など知れておるぞ。ほれ、これをやろう」


 そう言ってアーノルドが渡してきたのは金貨十枚入りの巾着と言語理解の宝玉、三枚のカード状のものだった。


「これは?」

「金貨と宝玉はわしから、カードは神様からの贈物じゃ。おっと、そういえばカードの説明がまだじゃったな。その前に、この世界はリョーナースキー様が退屈しのぎに創られたカードに魔力を与えて顕現したものという説がある。実際の所はどうなのか神のみぞ知ると言ったところじゃが、その説を信じる者はそれのようなカードを神の力の一端としてあがめておる。また、信じぬ者にとってもカードは有用で、装備するだけでスキルが使えるようになったり能力が上がったりする。中にはモンスターカードのように使い方がよくわからんもののあるがな。いずれにしても数が少なく当然貴重な物となる」

「つまり…、かなりの贈物?」

「そうなるな」


 渡されたカードに書かれているのは【封札士】(称号:≪封札≫、≪解札≫を使用可能、デッキを組めるようになる、敵撃破時カード化率上昇)、[封札](指南書:あらゆるものをカード化できる)、[詳細サーチ](指南書:対象の詳細情報を見ることができる)というものだった。


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