飛行機雲の尾ビレ
掲載日:2026/03/15
ガラスの向こうの手に触れると
わたしは水なんだとわかる
隔たりの無い波に揺らいでいられる
想うことは生きていると感じられる
割れた鏡のまま
窪んだ心臓のまま
少し痛みがあるまま
あの歌の温度が
日常の根底にささやかに流れゆくから
明日の窓を開けようとする
記す手が冷たいままでもなお
あたたかな息吹だったあの胸を想い出すと
水平線から溢れたものが次々と伝ってゆく
わからないままのこの胸の痛みを
あの歌の胸に預けたみたいに
バスの停留所からの空を見上げてあなたは
「あの飛行機雲の尾鰭は短いから
明日も晴れだよ」 と言った
水族館へ行きたい
窓側の席は あなたに座ってほしい
窓からの風が揺らす髪と
春の陽と溶け合うあなたをみたい




