35.狂気の刃、そして悲鳴
ロケット弾の失敗で安堵したのもつかの間、茂みから飛び出したタケシの姿を見て、憲一の心臓は凍りついた。彼の右手には、鈍く光るサバイバルナイフが握られている。その凶刃は、無防備なグルリンの背中へと一直線に向かっていた。
「グルリン、逃げろ!」
憲一は叫びながら、全力でグルリンに向けて走り出した。だが、タケシの狂気に満ちた姿を見て、さすがのグルリンも足がすくみ、動くことができない。
間に合わない。憲一は、そう悟った。タケシとグルリンの距離は、わずか数メートル。このままでは、グルリンが斬られる。
その瞬間、憲一は滑り込みざま、タケシの体に渾身の力でタックルをした。タケシの体は宙に浮き、激しい勢いで地面に叩きつけられる。しかし、その時、タケシが振り回したナイフが、憲一の腹部に一閃の軌跡を描いていた。
憲一とタケシは、もつれるように地面を転がった。その衝撃で、タケシの手からナイフが離れ、草むらに飛び散る。その隙を逃さず、グルリンのフォロワー数名がタケシに飛びかかり、彼を取り押さえた。
「憲一さん!」
グルリンは、血の気が引いた顔で憲一のもとへ駆け寄った。横たわる憲一の腹部からは、鮮血がにじみ出ている。彼女は、震える手でその傷口を抑えながら、悲痛な叫び声を上げた。




