29.タケシ:狂い始めた歯車
タケシは、パソコンの画面を睨みつけ、首を傾げていた。
「おかしいな……」
彼の脳裏には、数ヶ月前の成功体験が蘇る。ロケット弾じいさんたちのコミュニティーでは、彼は**絶対的なアイドル**だった。彼が持ち込む新しいアイデアは、古い運動に新鮮な風を吹き込み、簡単な**ネット工作**だけで、プロパガンダは町中に、そしてネット空間にいとも容易く広がっていった。
某国からの支援も付き、タケシは今ではそれなりの収入を得るようになった。しかし、彼の成功は、彼自身の能力によるものではなかった。彼が使っていたのは、誰かが作った**スクリプト**を走らせるだけの簡単なツール。特定のワードやハッシュタグを自動的に拡散させ、意図した情報をネットの片隅に送り込むだけ。そのスクリプトは非常に強力で、これまで一度も失敗したことはなかった。
だが、ここ数日、そのスクリプトの歯車が狂い始めている。以前なら一晩でトレンド入りするような話題も、全く盛り上がらない。それどころか、彼の流した偽情報に対して、具体的な根拠を示して反論する投稿が増え始めたのだ。
タケシは、状況の変化にうまく対応できていなかった。なぜ工作がうまくいかないのか、どうすれば以前のように影響力を取り戻せるのか、彼はその答えを見つけられずにいた。彼の後ろ盾である某国からのプレッシャーも、日増しに強くなっている。タケシは、この見えない変化が、どこから来ているのかを知る由もなかった。




