19.エージェントとの再会
救出劇から数日後、憲一はいつもの喫茶店にいた。カウンターの隅でコーヒーを飲んでいると、聞き慣れた声がした。
「全くどうしたんだい?君らしくもない」
振り返ると、そこにいたのは、幼い頃に基地のフェンス越しに遊んだあの男だった。今はスーツに身を包み、洗練された雰囲気をまとっている。かつて「たまたま」憲一の幼馴染だったエージェント、ジョンだ。
憲一は苦笑いを浮かべた。「今回の件は……色々あってな。今は調整中だ」
ジョンは憲一の向かいに座り、コーヒーを注文した。そして、静かに話し始めた。
「あの組織の件だがね、どうやらその**裏には政治家が絡んでいる**ようでね。我々が少しばかり深掘りしてみたら、蜂の巣をつついたような騒ぎになっている。おかげで、色々と面倒な調整が必要になったというわけだ」
憲一は眉をひそめた。政治家。それは、彼の「掃除屋」としての範疇をはるかに超える領域だ。彼の仕事はあくまで、兵士と市民の間のトラブルを水面下で処理することだったはずだ。それが、いつの間にか国際的な情報戦、そして国内の政治的陰謀にまで足を踏み入れていた。
「まあ、我々にとっては、**いいデータがとれたがな**」
ジョンは、昔であった頃と同じように、悪戯っぽく微笑んだ。その笑みは、かつて憲一が見ていた、ただの遊び相手の顔だった。だが、その裏には、冷徹なまでのプロフェッショナリズムが潜んでいることを、憲一は知っていた。ジョンにとって、この一連の騒動は、単なる「データ収集」の機会に過ぎなかったのだ。
憲一はコーヒーを一口飲み、窓の外に目をやった。基地のフェンスは変わらずそこにあり、その向こうには、いつもと同じようで、しかし確実に変化し続ける世界が広がっている。彼の「掃除屋」としての日常は、もはや「取るに足らない」ものだけでは済まされなくなっていた。




