(4)
翌日、何事も無かったかのように入学式と、その後のオリエンテーションが行なわれた。
そして、授業なんかに使うタブレット端末を渡され……そして、まずは、学園のイントラネット上のあるページを見るように指示された。
「え……えっと……?」
学園の地図が表示される。
けど、その学園の地図を、よく見ると、色々と変だ。
1学年3クラスの3年制……にしては、異様に敷地が広過ぎる。校舎の建物も多過ぎる。
そして……。
先生は、地図をタップしてみろ、と指示。
え……えっと……。
「赤いフィルタがかかってるように見える場所は、立入禁止区域だ」
あ……立入禁止?
い……いや、どう見ても、学園の敷地の半分以上が立入禁止区域じゃないのか、これ?
「ここでは、良く『事故』が起こる。実習中なんかにな。そして、事故が起きた場所は、かなりの確率で、いわゆる一般人立入禁止レベルの『心霊スポット』と化す。『浄化』も不可能では無いが、事故が起きた場所に結界を張って、立入禁止区域にして学園の敷地を拡張していった方が、予算が少なくて済むので……まぁ、その……何だ……今みたいになった」
ああ、そう言えば、この学園が有るのは、昔の炭鉱の跡地だ。土地代も安価そうだし、学園内の建物が心霊スポットと化したら、その建物を魔法で元の状態に戻すより、学園の周囲の土地を更に買って、新しく建物を作った方が……って、こんだけ、やたらめったら、学園内に心霊スポットが有るって、その手の「事故」は、どんだけの頻度で起きてんの?
「あのぉ……」
手を挙げたのは、僕と同じ中学校の出身の……境晴香だ。
下手に魔力が強かったせいで……ここに強制入学になって、理系のエンジニアになる夢を、あっさり断たれた女の子。
「何だ?」
「授業と授業の間の休み時間は、何分ですか?」
「昼休みを除いて一〇分だが……何か?」
「通常の授業用の建物と、実習用の建物の間に、かなりの距離が有るんですが……」
「さっき言った事情で、こうなった。次々と建物を建て増しする必要が有ったので仕方ない」
「え……えっと、ですから、通常の授業用の建物と実習用の建物の間の距離を見ると、休み時間が一〇分しか無かったら、かなり移動がギリギリに……」
「走れ」
「は……っ?」
「走れ。走って移動しろ」
「あ……あの……」
「魔法使いになるには、体力も必要だ。頑張れ」
「移動に自転車なんかは……」
「あ〜、地図では判りにくいか。道が狭くなってる場所が有る。自転車と歩行者が同じ道を通るのは問題が有る。足で走れ」
いや……ちょっと待ってよ。「魔法使いになるには、体力も必要」なら、何で「魔力量」とやらだけで、ここに入学しなきゃいけないかが決ったんだ?