読
教本を改めて開いた。
〇殺方法のオススメ度が✩マークでのってある。
オススメの意味がわからなかったが、項目を読み進めると変に納得してしまう。
1.確実性
2.痛み
3.迷惑
私は今までに漠然とした不安から消えたいと思った事はあったが、〇殺なんて事は考えた事もなかった。
死に惹かれる漫画のキャラクターの儚げな雰囲気に惹かれた事はある。
これは別にタバコを吸っているキャラクターをカッコいいと思うようなもので、実際にタバコを吸いたいという気持ちにならない類のものだ。
「あ…」
赤いページに辿り着いた。
赤い蛍光ペンで学校の教科書のようにマーキングされてある。
私は文字を認識する前に教本を閉じた。
以前の持ち主の触れてはいけない何かがソコにある気がしたから。
――ふと、自室から外を覗くと暗くなっていた。
「ナギー!ご飯できたよー!
今日はオムライスだから早く降りてきて!」
母が私を呼ぶ声だ。
「はーい!」
私は教本をベッドの下に隠し、夕飯へ向かった。
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◆
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母と妹の3人で夕食を食べた。
母はいつものように料理の映えを自慢し、妹と私は母を褒めつつ好物のオムライスを堪能した。
温かく美味しい食事はさっきまでのモヤモヤした気持ちを自然と忘れさせてくれたのか、お風呂を済ませ再び自室に戻ってくるまでは自然と楽しく過ごしていた。
ただ、自室に戻ってきた今はモヤモヤとした気持ちでSNSを開いている。
宿題は既に終わったけど『今から宿題頑張る』と書き込んでいた。
特に見たくもない情報もSNSには流れてくる。
多くの人が共感したりして閲覧数の多いものがオススメとして流れてくる。
私には解決する事ができない平不満不平等。
私には得られる事ができない抽選や成功談。
私の生活は携帯を持つまではシンプルだったはずなのにな。
[@tyouryou☓☓☓yamada☓☓☓]
[漫画〇〇のキャラクター〇〇が愛読してる本ってもしかしてこれ?http//abcdef☓☓☓]
知らない人の呟きが流れてきた。
リンクが張らていて辿ってみると私が持ってる教本だった。
私はその呟きに『そうみたいです』と何となく返信し何となく教本の写真を取って呟いてみた。
[@na☓☓☓na☓☓☓gi]
[漫画〇〇のキャラクター〇〇が愛読してる本(写真)]
すると今まで静かだった私の携帯が急に通知でうるさくなった。
SNSの呟きに返信や拡散された時に入る通知のようだ。
初めての体験に私は心臓が高鳴るのを感じた。