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19.魔女狩りの鎌《メイガスリジェクター》

 黒いローブに身を包んだ、エイネス・リリコットと名乗る銀髪の女性。『魔女狩りの鎌(メイガスリジェクター)』をただ一振りしただけで、魔法に関わる全ての者に対して例外なく、敵味方などの区別さえもなく斬撃を放つ。


 赤と漆黒の大鎌を握るその姿は、まさに魔法世界の終焉を告げる為に舞い降りた死神のようだった。


「またイカれた奴のご登場か……。『複製人形(ドッペルゲンガー)』。貴様らは負傷者を輸送機の中に運んで、非戦闘員を意地でも守り抜け。『人形喰い』は私と共にあの死神女を止めるぞ」


「「は、はいっ!!」」


 身の丈に合わない重厚なハンマーを持つ、紫髪のミニ講師が焦ることなく周りの状況を確認し、的確に指示を飛ばしていく。流石はここの防衛を行う戦闘要員をまとめ上げるチームリーダーといったところだ。


 彼女の指示に、語頭までもが息ぴったりに重なり合った二人は、不意打ちの斬撃を避けられずもろに喰らってしまった、血を流して倒れる研究者と二人の魔法師を輸送機へと背負って連れていく。


 そして、ミニ講師は黒い渦を纏ったハンマーを振り上げながら、今も鎌を構えて不敵に笑うエイネスの元へと飛び込んでいった。


 続くように、有栖も影の中を縫うように近づいていく。


「ふん、謳い文句だけは大層な鎌ごときで私を止められると? それにしても、魔法世界を終わらせる為に、自分も魔法に頼るとは滑稽だな」


「そんな薄っぺらい煽り、私には通用しませんよ? 今のMagiCA(マギカ)……ああ、私が所属している機関なのですが。そこの方針がただ私の目的と合致しているだけのこと」


「それはつまり、この戦争が貴様の言う『世界から魔法という概念を消す』ことに繋がるとでも。こんな戦争を起こせば利益になると信じてやまない馬鹿ばかりかとウンザリしていたが、マトモに結末を予測できる奴がいて安心だ」


「まあ、お偉いさんはそう考えているみたいですけどね。核兵器レベルの戦争でさえ、この現代まで爪痕が残っているというのに。……ただ勘違いして欲しくないのは、その結末を私が望んでいるということ」


 ハンマーと鎌。互いに打ちあえば、形状的に鎌の方が先にポッキリ折れてしまいそうだったが、そんな予想に反して互角の鍔迫り合いになっている。


「ところで、長々と語ってもらっておいて恐縮なのだが――」

 

 だが、それはあくまで一対一での話だ。夜の闇から突然、鎌を握る女性の背後に――金髪の少女が、槍を握って現れる。


「――後ろがガラ空きだが大丈夫かああああッ!?」


 ミニ講師の言葉へと続くように、有栖が叫びながらその槍を振り下ろす。


 ローブの上から、その身体を貫くまであと秒読みの所で。


「……そちらこそ、大人しく隠れていれば良かったものを。一人相手なら、刃を向けるまでもありませんので」


「ッ――んぐあああああああああああ!?」


 その瞬間。槍で突く彼女に向けて魔力の刃が現れ、その身体を切り裂いた。


 落ちる身体と共に、多量の鮮血が夜の闇を舞う。


 ……ただし。意識が飛びそうなほどの痛みに悶えながらも、ただ落ちるだけではなかった。


「……輝槍(きそう)・プラティウスッ!!」


 夜の闇に溶けることのない、全体が銀色の魔合金でできた槍。星の力を蓄え、白い光を振りまくその先端から、全てを消し飛ばすレーザーが放たれる。


 だが、斬撃を受けてからプラティウスを取り出し、放つまでの一連の流れが生んだ隙はあまりにも大きかった。振り向いて、白いレーザーを受け止めるための時間にしては十分すぎた。


 鎌の先に触れると、そのまま世界から抹消されていくかのようにレーザーが消えていく。


 だが、彼女のプラティウスから放たれる攻撃は、魔合金オルスエルゲンによって集められた、夜空に瞬く幾千もの星の魔力を集約したもの。ただの武器で受け止められるような破壊力ではないはずだった。


 だが、それがさも当然の結果であるように、エイネスは語る。


「忘れましたか? この魔女狩りの鎌は『魔法をこの世界から消す』ために作られた鎌です。『魔法の使用者へ罰を与える』ことが本質ですが、前提として魔法自体がこの世の異物であるという考えを応用すれば、このような芸当もできるのです」


 その言い分は、ただ聞かされただけで鵜呑みにはできない、あまりにムチャクチャな内容だった。だが、よく考えてみれば、それが事実であることを示す光景を既に目にしていた。


 普通に考えて、ハンマーを鎌なんかで受け止められる訳がないだろう。それはもちろん有栖も分かっている。だが、彼女は――ハンマーを振るう本人でさえも、鎌の方に受け止めるための何らかの力があると思っていた。


 だが、そうではない。逆だ。


 理由は単純。そもそも、あのハンマーは物理的な攻撃力ではなく、周囲に纏っていた黒い渦……つまり、魔力に依存していた。


 しかし、その魔力が鎌と触れ合う度に打ち消されていた以上、そのハンマーはもはや、本来の形状にあるべき威力さえも引き出せない。故に、鎌と打ちあっても互角だった。


 そして、本命さえも軽くいなされて。待っていたのは二度目の斬撃だった。


「――ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!??」


 一度持ち堪えたところで、さらにもう一撃。今度こそ本当に意識が刈り取られ、彼女の身体がずざっとその場に落ちた。 

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