4.会議は始まりを告げ《統括会室》
「さて、私たち魔法大学の魔法師、人形師は基本防衛戦にしか参加しない。研究者は国内での機材調整、その他サポートを行う。これが今回の戦争における方針となっているわ」
チーム内を取り仕切る、リーダー的役職はまだ決まっていないらしい。だが、わざわざ選ぶ必要もないのは言うまでもなく、一ノ瀬香凜が率先してこの場を仕切る。
統括会という、この大学の様々な組織をまとめ上げる中枢部とも言える組織、その頂点に君臨する彼女であるからして、至極当然だろう。
それに、一人は何だか雑そうで、一人は寡黙で、一人は厨二病を拗らせていて――明らかに他の適任者がいないのもあるだろう。
さっきまでの明るい調子とは打って変わって、重く真剣なトーンで話す彼女によって、その場にピシリと電流のような緊張感が走る。
「ただ、例外もある。それがこのチーム『X01』を含めた、Xを冠するチーム群。私たちを含めて三組あるのだけれど、その目的は全組共通よ」
息を呑むように、その場の全員が一ノ瀬の言葉へ静かに耳を傾ける中、一呼吸おいて彼女は続ける。
「……海外合宿でアメリカに渡り、帰国困難となった魔法大学の各クラスの学生、および引率する講師を保護し、日本へ連れ戻すこと」
それは、圭司が戦争というニュースを見て脳裏に浮かびはしたものの、自身の力だけでは到底、行動には移せないであろう。そんな内容だった。
彼の日常にはなくてはならない、親友の存在――一輝とリリアがそこにはいる。助けたいとは思っても、国同士の戦争ともなれば何もできない。
しかし、このチームならば。何もせずにただ指をくわえて見ているだけではなく、自身の手で助けに行くことができる。何かしらの行動を起こすことができる。
たとえ、Fランク人形師のちっぽけな力だとしても。何もせずにただ見ているだけよりはずっとマシであるはずだから。
「この作戦を便宜上、『特別作戦X』と呼ぶことする。ここまでは大丈夫かしら?」
「オペレーション、エクス……ふふっ、われが参加するのに相応しい作戦名だ……ッ」
「呼び方なんてどーでもいいから、さっさと本題に入ってくれ、一ノ瀬」
「……同感だ」
「なッ、名前は大事だろう、名前はッ!」
「はいはい、ここまではオッケーってことで。早速、作戦の概要について説明するわね。資料は後々みんなにも配られるんだけど、印刷が追いついてないみたいだからよーーーく聞くこと」
魔法大学の学生らで組まれた即席チームはきっと数百にも及ぶだろう。その中でもたった三組だけが参加する『特別作戦X』の概要は一ノ瀬の手元にある、早急に作ったにしてはやけに分厚くしっかりとした、その資料に記されている。




