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22.人形師の裏は《血みどろに》

 神影翼(みかげ つばさ)が所有する施設の地下二階。その狭い通路に突如、影から放り出されたと同時。圭司(けいじ)納乃(のの)の右手には、見慣れたリボルバー式の魔法銃が握られていた。


 ――ギュギュギュギュインッ!! という耳をつんざくような音と共に、魔力の銃弾が放たれる。


 それらは、黒いスーツを纏い、その手には拳銃を構えた、こちらを取り囲む四人の男のそれぞれ胴体へと命中する。


 ……ただし、それらが身体を貫くことはなかった。それ以前に、彼らが纏っているスーツの時点で容易く止められてしまう。


「やっぱり大学の制服と同じように、この程度の攻撃じゃ通らないみたいだ」


「当たり前だろう。実戦じゃ、防護機能なしの服を着ている方が珍しいんじゃないか? 重いし、着ているだけで魔力が微量ながらも吸われていくのが嫌で着ないって奴も一定数いるらしいが。実力のある魔法師なんかは特に」


 ここへ来る前に戦ったMagiCA(マギカ)の魔法師、シェロン・ルイスとイレーネ・アルフィスが良い例だろう。


 シェロンの方は、液体金属を操る魔法によってどんな攻撃も防いでしまうのでそもそも必要がないのだろうし、イレーネだってあの魔法の発動速度を求めるのなら、自身の魔力を若干でも犠牲にした防護機能が邪魔になる。


 一方、圭司が今も身に着けているこの制服にも防護機能は付いている。が、安全第一で考えられ、大学指定の制服の着用が義務付けられているという理由があれど、そもそも銃で戦うなら防護制服一択な気もする。要は、戦い方によって使い分けろ、ということ。


 ちなみに、納乃も同じく魔法大学の制服を着ているのだが、こちらは見た目だけで防護機能は備わっていない。彼とお揃いがいい、という彼女の希望で大学に作ってもらった特注品だ。


 で、その制服を普段から着ているが故に、その弱点もしっかりと理解している。


「……狙うは手や顔、」


「とにかく肌の見えている箇所――」


 乾いた発砲音と共に、お返しにと飛んできた、魔力弾ではない本物の銃弾を二人はひらりと避けて、魔法銃の引き金を再び引く。


 ――ギュギュインッ! それらは、二人が宣言した通りの場所を貫いた。敵が二人、その場でバタリと倒れるのを見届ける。


 それと同時に、一方のシエラは。


「この程度の敵、光を使うまでもございませんね」


 剣を抜き、そのまま拳銃を持った黒スーツに向けて走っていた。相手も必死に撃ち、応戦するが、それらは当たったとしても彼女の纏う白銀の鎧を貫くことはできない。


 地下という閉鎖空間で、しかも身体能力に優れた魔法人形(ウィズドール)が、その間に広がるわずかな距離を詰めることなど容易い。そのまま彼女の剣は一撃、拳銃を握る手をぱつんと切り落とした。


「……へっ、アタシも負けてらんねえなああッ!?」


 有栖(ありす)も、そう言い放つと――影から一本の槍を取り出して、その勢いのままぶん投げる。残った一人の黒スーツ、その首元へ一直線に突き刺さった。


 仕留めているのは当然であって、わざわざ確認するまでもない。そんな調子で続けて。影から今度は()()()()()()()()()()を取り出したのだった。


 武器だのなんだのといった、物騒な知識にはあまり詳しくない圭司にも、それが一体何なのかはひと目で理解できた。


「ちょっと待て有栖、それってまさか――」


「……()()()()?」


 軽々しく言うと、『ひょいっ』みたいな間抜けな効果音が付きそうな調子で、それを後方に向けて放り投げた。


「待て待て待てちょっと待っ――」


 ――ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!


 空間を裂くかのような、激しい轟音と共に。狭い通路の一方が、瓦礫の山となって完全に塞がれてしまった。


「おいっ! やりたいことは何となく分かるけど、無茶苦茶\がすぎるだろ! 地下で俺たちまで生き埋めなんてことになったら……」


「……だったら、五百でも千でもマトモに相手にしてみるか?」


 有栖の目的は、ここよりも後ろの敵を通さない防壁を造る事。


 この場所がばれてしまった以上、すぐにでも増援がやってくる。ここまでやって来た道のりを塞ぐことで、戦力を少しでも封じようとしたのだろう。


 だが、それにしても……いきなり爆弾を取り出したかと思えば、心の準備もできていないままドカンはないだろう、流石に。


「こっちだ。急ぐぞ」


 もがき苦しみながら倒れる黒スーツの一人に有栖が近づくと、その首元に突き刺さった槍を躊躇なく引き抜く。


 当然、そこからは赤い鮮血が噴き出しているが、それさえも日常のありふれた一コマであるかのように、さっさと彼女は先へ走っていってしまう。


 大学に通い、模擬戦を行い、納乃やシエラと笑って過ごす。そんな彼が身を置いている『いつも通りの日常』に生きる人形師の、また裏の顔。


 それは、この通路を彩る赤のような血みどろに染まる、あまりにも冷酷な世界なのだと。分かっていたつもりではあるが、目を背けていた――そんな世界だった。


「……俺たちも行こう。納乃、シエラ」


 時には人を殺めてでも、目的を遂行する。それが、魔法師や人形師といった存在なのだった。

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